FEATURE

2022年下半期に開催スタートの注目の
展覧会を一挙ご紹介!(第1弾は関東版)

「国宝 東京国立博物館のすべて」「国立新美術館開館15周年記念 李禹煥」「ボストン美術館展 芸術×力」
「日本美術をひも解く―皇室、美の玉手箱」「東北へのまなざし 1930-1945」「展覧会 岡本太郎」ほか

トピックス

(上左)増山雪斎 《孔雀図》江戸時代、享和元年(1801)Museum of Fine Arts, Boston, Fenollosa-Weld Collection  Photograph © Museum of Fine Arts, Boston、(上右)芹沢銈介《日本民藝地図(現在之日本民藝)》部分、1941年、日本民藝館、(中央)国宝 《曜変天目(稲葉天目)》南宋時代(12-13世紀) 静嘉堂文庫美術館蔵、(中段右)国宝 松林図屛風(上:右隻、下:左隻)長谷川等伯筆 安土桃山時代・16世紀 東京国立博物館蔵、(下段左)岡本太郎《愛撫》1964年 川崎市岡本太郎美術館蔵 ©岡本太郎記念現代芸術振興財団、(下中央)ナムジュン・パイク「輪廻」1987年 ワタリウム美術館蔵、(下右)《関係項―棲処(B)》 2017年 石 作家蔵 展示風景:「ル・コルビュジエの中の李禹煥 記憶の彼方に」展、ラ・トゥーレット修道院、エヴー、フランス、2017年 ©Foundation Le Corbusier, photo: Jean-Philippe Simard
(上左)増山雪斎 《孔雀図》江戸時代、享和元年(1801)Museum of Fine Arts, Boston, Fenollosa-Weld Collection Photograph © Museum of Fine Arts, Boston、(上右)芹沢銈介《日本民藝地図(現在之日本民藝)》部分、1941年、日本民藝館、(中央)国宝 《曜変天目(稲葉天目)》南宋時代(12-13世紀) 静嘉堂文庫美術館蔵、(中段右)国宝 松林図屛風(上:右隻、下:左隻)長谷川等伯筆 安土桃山時代・16世紀 東京国立博物館蔵、(下段左)岡本太郎《愛撫》1964年 川崎市岡本太郎美術館蔵 ©岡本太郎記念現代芸術振興財団、(下中央)ナムジュン・パイク「輪廻」1987年 ワタリウム美術館蔵、(下右)《関係項―棲処(B)》 2017年 石 作家蔵 展示風景:「ル・コルビュジエの中の李禹煥 記憶の彼方に」展、ラ・トゥーレット修道院、エヴー、フランス、2017年 ©Foundation Le Corbusier, photo: Jean-Philippe Simard

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観測史上、最も短い梅雨が明け、連日の猛暑の中、7月を迎えました。今年も下半期のはじめに、アートアジェンダがお薦めする、2022年下半期(7~12月)に始まる10の注目の展覧会をご紹介します。

厳しい暑さが続きますが、美術館の展示室はいつも快適な涼しさです。ぜひ芸術鑑賞を堪能して心に栄養を補給しながら、暑い夏を乗り切りませんか?

第1弾は、東京他で開催される関東エリアの展覧会のご紹介です。第2弾 関西&全国版も近々お届けいたします。そのほかにも、沢山のおすすめ展覧会が開催予定です。ぜひ、展覧会情報一覧 をご参考にしていただいて、今年の後半もたくさんの展覧会をお楽しみください。

150年の歴史上はじめて、東京国立博物館所蔵の国宝89件のすべてが展示される奇跡的な展覧会「国宝 東京国立博物館のすべて」が10月18日より開催

国宝 松林図屛風(上:右隻)(下:左隻)長谷川等伯筆 安土桃山時代・16世紀 東京国立博物館蔵 10月18日~10月30日
国宝 松林図屛風(上:右隻)(下:左隻)長谷川等伯筆 安土桃山時代・16世紀 東京国立博物館蔵 10月18日~10月30日

2022年上半期 アートアジェンダがおすすめする注目の展覧会情報( 1 )
東京国立博物館創立150年記念 特別展「国宝 東京国立博物館のすべて」
開催美術館:東京国立博物館
開催期間:2022年10月18日(火)〜2022年12月11日(日)

2022年に創立150年を迎えた、東博(トーハク)こと、東京国立博物館。明治5年(1872)の発足以来、日本でもっとも長い歴史をもつ博物館として、文化財の保存と公開という命題を両立させてきました。

この大きな節目を記念して、150年の間に積み重ねられた約12万件という膨大な所蔵品の中から、国宝89件すべてを含む名品と、明治から令和にいたる150年の歩みを物語る関連資料を通して、東京国立博物館の全貌を紹介する、2部構成の特別展です。

150年の歴史上はじめて、東京国立博物館が所蔵する国宝89件すべてを展示するという、奇跡的な展覧会が実現します。また、150年前の湯島聖堂博覧会や帝室博物館時代の展示品による再現展示や、国宝刀剣(国宝の刀剣全19件)が集結する、「国宝刀剣の間」なども見どころです。

「もの派」を代表する李禹煥の大規模回顧展が、8月10日より開催。李の創造の軌跡をたどる過去の作品と新たな境地を示す新作が展示予定

李禹煥、鎌倉にて、2022年 Photo© Lee Ufan, photo: Shu Nakagawa
李禹煥、鎌倉にて、2022年 Photo© Lee Ufan, photo: Shu Nakagawa

「もの派」を代表する美術家、李禹煥(リ・ウファン、1936年生)の東京では初めてとなる大規模な回顧展が開催。

李の作品は、芸術をイメージや主題、意味の世界から解放し、ものともの、ものと人との関係を問いかけます。それは、世界のすべてが共時的に存在し、相互に関連しあっていることの証なのです。奇しくも私たちは、新型コロナウィルスの脅威に晒され、人間中心主義の世界観に変更を迫られています。李の思想と実践は、未曾有の危機を脱するための啓示に満ちた導きでもあります。

本展では、「もの派」にいたる前の視覚の問題を問う初期作品から、彫刻の概念を変えた<関係項>シリーズ、そして、静謐なリズムを奏でる精神性の高い絵画など、代表作が一堂に会します。また、李の創造の軌跡をたどる過去の作品とともに、新たな境地を示す新作も出品される予定です。

2022年上半期 アートアジェンダがおすすめする注目の展覧会情報( 2 )
「国立新美術館開館15周年記念 李禹煥」
開催美術館:国立新美術館
開催期間:2022年8月10日(水)〜2022年11月7日(月)

2年越しで開催が実現する「ボストン美術館展 芸術×力」。ボストン美術館から古今東西の傑作が大集結!注目は、海を渡った二大絵巻の里帰り

増山雪斎 《孔雀図》江戸時代、享和元年(1801)
Museum of Fine Arts, Boston, Fenollosa-Weld Collection
Photograph © Museum of Fine Arts, Boston
増山雪斎 《孔雀図》江戸時代、享和元年(1801)
Museum of Fine Arts, Boston, Fenollosa-Weld Collection
Photograph © Museum of Fine Arts, Boston

古今東西の権力者たちは、その力を示し、維持するために芸術の力を利用してきました。威厳に満ちた肖像画は権力を強め、精緻に描写された物語はその力の正統性を示します。また、美しい工芸品は彼らの宮廷を彩り、ときに外交の場で活用されてきました。時の一流の画家や職人につくらせた芸術品は、今も見る人々を圧倒する荘厳な輝きを放っています。

また、力をもつ人々は、自らも芸術をたしなんだほか、パトロンとして優れた芸術家を支援しました。その惜しみない支援によって、数多くのすばらしい芸術作品が生み出されたのです。さらに、多くの権力者たちは、貴重な作品を収集し手元におきました。彼らが築いたコレクションは、今日の美術館の礎ともなっています。

見どころは、海を渡った二大絵巻、《吉備大臣入唐絵巻》と《平治物語絵巻 三条殿夜討巻》の里帰りです。奈良時代に活躍した学者・政治家である吉備真備の活躍を描いた《吉備大臣入唐絵巻》と、平安時代末期の上皇派と天皇派の対立を背景に起こった平治の乱をテーマに緊迫する戦いの様子を描き、合戦絵巻の最高傑作のひとつに数えられる《平治物語絵巻 三条殿夜討巻》は、いずれも日本に残されていれば国宝に指定されたと考えられており、「幻の国宝」とも呼ばれています。

本展では、エジプト、ヨーロッパ、インド、中国、日本などさまざまな地域で生み出されたおよそ60点の作品を紹介します。私たちが鑑賞する芸術作品が本来担っていた役割に焦点を当て、力とともにあった芸術の歴史を振り返ります。

2022年上半期 アートアジェンダがおすすめする注目の展覧会情報( 3 )
「ボストン美術館展 芸術×力」
開催美術館:東京都美術館
開催期間:2022年7月23日(土)〜2023年10月2日(月)

皇室に伝えられた品々を収蔵する宮内庁三の丸尚蔵館の名品、優品約90件で日本美術をわかりやすく紹介する特別展が、8月6日より開催

日本の美術史を最初に体系的にまとめたのが、1890年の東京美術学校(現 東京藝術大学)における岡倉天心が行った日本美術史の講義とされています。

本展は、美術の理解を深めるという原点に立ち返り、鑑賞者が最初に見る、作品の形やモチーフに焦点をあて、代々日本の文化の中心に位置して美術を保護、奨励してきた皇室に伝えられた品々を収蔵する宮内庁三の丸尚蔵館の名品、優品約90件で日本美術をわかりやすく紹介します。

昨年宮内庁三の丸尚蔵館の収蔵品として、初めて国宝に指定された5件の作品―平安時代三跡の一人・小野道風の「屏風土代」、鎌倉時代の名品・やまと絵の集大成として名高い絵巻「春日権現験記絵」と元寇の様子を描いた絵巻「蒙古襲来絵詞」、安土桃山時代を代表する狩野永徳筆「唐獅子図屏風」、江戸時代の絵師・伊藤若冲の代表作「動植綵絵」を、揃って公開する初の機会となります。

「動植綵絵」は10幅(芍薬群蝶図、梅花小禽図、向日葵雄鶏図、紫陽花双鶏図、老松白鶏図、芦鵞図、蓮池遊魚図、桃花小禽図、池辺群虫図、芦雁図)をまとめて鑑賞できる大変貴重な機会となります。

2022年上半期 アートアジェンダがおすすめする注目の展覧会情報( 4 )
特別展「日本美術をひも解く―皇室、美の玉手箱」
開催美術館:東京藝術大学大学美術館
開催期間:2022年8月6日(土)〜2022年9月25日(日)

「タウト、柳宗悦、ぺリアン、今和次郎らは何を見ようとしたのか ――」東北に向けられた複層的なまなざしを追う展覧会が、7月23日より開催

芹沢銈介《日本民藝地図(現在之日本民藝)》部分、1941年、日本民藝館
芹沢銈介《日本民藝地図(現在之日本民藝)》部分、1941年、日本民藝館

1930年代以降の日本は、太平洋戦争へと傾斜を深める一方で、写真などのグラフィカルな視覚文化が到来し、建築や生活文化が変貌するなど、モダンとクラシック、都会と地方の両極で揺れ動いた時期でもありました。

そしてこの頃、先端的な意識をもった人々が相次いで東北地方を訪れ、この地の建築や生活用品に注目しました。ナチス政権発足の1933年に来日した建築家ブルーノ・タウト、1926年に日本民藝美術館設立趣意書を掲げて民藝運動を展開した柳宗悦、1940年、商工省に招聘されたシャルロット・ペリアンなどがその一例です。

また、素朴なこけしや郷土玩具への関心は昭和に入って飛躍的に高まり、民藝運動に呼応するように、郷土玩具を収集する動きが広まりました。さらには、考現学の祖として知られる今和次郎や、『青森県画譜』を描いた弟の今純三、東北生活美術研究会を主導した吉井忠ら東北出身者たちも、故郷の人々と暮らしを見つめ直し、戦中期の貴重な記録を残しています。

本展は、こうした東北に向けられた複層的な「眼」を通して、当時、後進的な周縁とみなされてきた東北地方が、じつは豊かな文化の揺籃であり、そこに生きる人々の営為が、現在と地続きであることを改めて検証するものです。

2022年上半期 アートアジェンダがおすすめする注目の展覧会情報( 5 )
「東北へのまなざし 1930-1945」
開催美術館:東京ステーションギャラリー
開催期間:2022年7月23日(土)〜2022年9月25日(日)

2022年10月、静嘉堂文庫美術館の展示ギャラリーが東京丸の内の明治生命館1階に移転し、再オープン。曜変天目など国宝7つを開館記念展で大公開

国宝 《曜変天目(稲葉天目)》南宋時代(12-13世紀) 静嘉堂文庫美術館蔵
国宝 《曜変天目(稲葉天目)》南宋時代(12-13世紀) 静嘉堂文庫美術館蔵

長期休館を経て、2022年10月に東京丸の内の明治生命館1階に移転し、再オープンする静嘉堂文庫美術館の開館記念展が開催します。

静嘉堂創設130周年・新美術館開館記念展I「響きあう名宝―曜変・琳派のかがやき-」では、岩﨑家父子蒐集コレクションを4つの章(Galley 1~4)で展示します。

国宝《曜変天目(稲葉天目)》、国宝・俵屋宗達筆《源氏物語関屋澪標図屏風》をはじめ、所蔵する7件の国宝すべてを、前・後期に分けて公開します。新展示室は、昭和の建築で初めて重要文化財の指定を受けた明治生命館の1階に、当初の建築部分を生かしてつくられています。室内全体が壮麗な大理石造りで、高い天井からはガラス越しに自然光が差し込んでおり、日々で異なる表情を見せる空間となります。

2022年上半期 アートアジェンダがおすすめする注目の展覧会情報( 6 )
静嘉堂創設130周年・新美術館開館記念展I 響きあう名宝―曜変・琳派のかがやき―
開催美術館:静嘉堂文庫美術館
開催期間:2022年10月1日(土)〜2022年12月18日(日)

幅広い世代の人々を魅了する芸術家・岡本太郎の芸術人生を振り返り、太郎の思想・生き様が込められた作品を体感する大回顧展が10月18日より開催

岡本太郎《愛撫》1964年 川崎市岡本太郎美術館蔵
©岡本太郎記念現代芸術振興財団
岡本太郎《愛撫》1964年 川崎市岡本太郎美術館蔵
©岡本太郎記念現代芸術振興財団

1970年に開催された日本万国博覧会(大阪万博)のテーマ館《太陽の塔》で知られ、今日でも幅広い世代の人々を魅了する芸術家・岡本太郎(1911-1996)。その芸術人生を振り返る、大回顧展を開催します。

1929年に渡仏した岡本太郎は、抽象表現に影響を受けながら画家としてのアイデンティティを確立していきます。帰国後、自らの芸術理念の核となる「対極主義」を提唱し、制作のみならず『今日の芸術』、『日本の伝統』などの著作において文化・芸術論を展開しました。《太陽の塔》を頂点とするパブリックな空間に展開される巨大な彫刻や壁画など、生活の中で生きる作品群は、「芸術は大衆のものである」という岡本太郎の信念そのものを象徴し、それ故に没後もなお、多くの人々を惹き付けています。

太郎の思想・生き様が込められた作品を体感することは、不安定な状況が続く現在の社会を力強く生き抜いていくためのヒントを見つける機会となるかもしれません。 代表作はもちろん、これまであまり注目されてこなかった晩年の作品なども紹介しながらその生涯をたどる本展では、《太陽の塔》だけではない、岡本太郎の全貌をお楽しみください。

2022年上半期 アートアジェンダがおすすめする注目の展覧会情報( 7 )
「展覧会 岡本太郎」
開催美術館:東京都美術館
開催期間:2022年10月18日(火)〜2022年12月28日(水)
「展覧会 岡本太郎」巡回情報
大阪中之島美術館 2022年7月23日(土)〜2022年10月2日(日)
愛知県美術館 2023年1月14日(土)〜2023年3月14日(火)

鈴木大拙からはじまる表現の系譜、その未知なる可能性をさらに未来へと切り拓いていくための試み「鈴木大拙展 Life=Zen=Art」が7月12日より開催

ナムジュン・パイク「輪廻」1987年 ワタリウム美術館蔵
ナムジュン・パイク「輪廻」1987年 ワタリウム美術館蔵

禅の教えを世界に広めた導師であり、精神と物質の差異を無化してしまう「霊性」という理念を提起して近代日本思想を刷新した鈴木大拙(1870-1966)。晩年、アメリカで講義を行う大拙のもとに、この後、現代音楽に革命をもたすジョン・ケージ、現代文学に革命をもたらす J・D・サリンジャーなどが集った。大拙の教えは、正真正銘、現代芸術の一つの源泉でもあった。それは決して偶然ではなかった。

大拙の生涯の伴侶となったビアトリスは、東洋思想に淵源する近代の総合宗教、神智学を信奉していた。神智学もまた、精神と物質の差異を無化してしまう「心」から、さまざまな感覚にしてイメージ、色彩にして形態が発生してくる様を具体的に説き、絵画の主題として「抽象」を選んだ表現者たちに甚大なインスピレーションを与えていた。「抽象」と東洋思想が何重にも交錯するなか、ヨーゼフ・ボイスの作品群が、ナムジュン・パイクの作品群が、続々と生み落とされていく。

それだけではない。高等中学校以来の盟友である西田幾多郎の哲学、互いに無名であった頃に書簡を交わした南方熊楠の生物学、自らの後継者と考えていた柳宗悦の民藝など、大拙からの影響は、グローバルとローカルという区別を超えて、あらゆる表現ジャンルの区別を超えて、きわめて巨大である。本展は、鈴木大拙からはじまる表現の系譜、その未知なる可能性を、さらに未来へと切り拓いていくための試みである。

テキスト:安藤礼二

◆ 鈴木大拙(すずき だいせつ)
仏教学者。本名、貞太郎。石川県金沢市生まれ。東京帝国大学在学中、鎌倉円覚寺に参禅し、居士号「大拙」を受ける。1897年渡米、出版社に勤務。1909年帰国後、学習院、東京帝国大学講師、翌年、学習院教授となる。11年にビアトリス・アールスキン・レーンと結婚。21年大谷大学教授に就任。36年ロンドンでの世界信仰会議に出席。49年-58年、アメリカの大学やヨーロッパに赴き、大乗仏教思想とくに禅思想を講じる。英名D.T.Suzukiとして知られる。

2022年上半期 アートアジェンダがおすすめする注目の展覧会情報( 8 )
「鈴木大拙展 Life=Zen=Art」
開催美術館:ワタリウム美術館
開催期間:2022年7月12日(火)〜2022年10月30日(日)

見る人の思考や創造力を刺激する作品で、国際的な注目を集めるライアン・ガンダー(1976年イギリス生)の東京初の大規模個展が、7月16日より開催

2000年来のコラボレーション(予言者)公益財団法人石川文化振興財団蔵
Courtesy the artist and TARO NASU
2000年来のコラボレーション(予言者)公益財団法人石川文化振興財団蔵
Courtesy the artist and TARO NASU

国際的な注目を集めるライアン・ガンダー(1976年 イギリス生)の東京で初めての大規模個展。

ガンダーの作品は、日常生活で気に留めることすら忘れているあたりまえの物事への着目を出発点として、オブジェ、インスタレーション、絵画、写真、映像などそのジャンルは多岐にわたります。制作の背景には、「見る」ということについての考察や日常経験の鋭い分析など、知的な好奇心が満ちあふれていて、その作品は見る人の思考や創造力を刺激して、私たちにさまざまな問いを抱かせます。意外なもの同士を結びつけ、情報を部分的に隠蔽し、ユーモアをまじえて「そもそも」を考えるきっかけをつくるのは、ガンダーの作品の真骨頂です。作品を前にすれば、思わずクスっとしたあとに、はっとするような発見が待っていることでしょう。新作を含めて空間全体をひとつの作品として創り上げることを目指す今回の個展を、ガンダー自身も楽しみにしています。

本展は当初2021年に開催を予定していましたが、コロナ禍により延期を余儀なくされました。しかし本人の申し出により「ライアン・ガンダーが選ぶ収蔵品展」を代わりに開催し、絶妙な手法で、東京オペラシティ アートギャラリーの寺田コレクションに新しい光を当てました。困難な状況でも発想の転換でよいものを。これは「創造する力」を信じるガンダーを象徴するできごとでもありました。今回、満を持しての個展に加え、上階では再び「ライアン・ガンダーが選ぶ収蔵品展」を開催します。

2022年上半期 アートアジェンダがおすすめする注目の展覧会情報( 9 )
「ライアン・ガンダー われらの時代のサイン」
開催美術館:東京オペラシティ アートギャラリー
開催期間:2022年7月16日(土)〜2022年9月19日(月・祝)

文字や紙、本を素材・テーマに作品を制作してきたアーティスト、立花文穂の四半世紀にわたる創作を紹介する美術館での初個展が、7月23日より開催

球体9『機会 OPPORTUNITIES』2021年
球体9『機会 OPPORTUNITIES』2021年

製本業を営む家に生まれた立花は、幼少期より身近に存在した紙や印刷物、文字などから着想を得て、「よせ集める」「つなぎ合わせる」という行為を通じ新たなかたちをつくりだしました。2000年に入り活版による印刷物や大判カメラで撮影した写真、さらにブロンズによる彫刻など「文字」を基軸にした作品を制作し表現を探ってきました。同時に、葉がきからポスターまで多種多様な印刷物や本などのグラフィックデザインで高い評価を得るなど分野を横断して活動してきました。2007年から責任編集とデザインを自らが担当し発信する媒体として刊行する『球体』もその一つです。

立花の表現の原点には、紙に触れること、文字を書くこと、があります。それらは、実父が営んできた製本所の存在、子どもの頃から親しんだ「書」、そして彼の生まれ故郷である広島の歴史と記憶へとつながっていきます。近年、立花は、筆を持ち「書」のような作品へと回帰しています。

本展は、「印象」(英語では「IMPRINT/IMPRESS」)というタイトルのもと、印刷/印字と象形(かたどる/かたちづくる)という立花の創作の思想・思考に深く触れられる機会となるでしょう。美術館における初の個展として、本展に合わせて制作される新作とともに、彼の四半世紀にわたる創作を総体的に紹介します。

2022年上半期 アートアジェンダがおすすめする注目の展覧会情報(10)
「立花文穂展 印象 IT'S ONLY A PAPER MOON」
開催美術館:水戸芸術館 現代美術ギャラリー
開催期間:2022年7月23日(土)〜2022年10月10日(月・祝)

2022年下半期おすすめ展覧会(東京&関東版)では、10の展覧会を取り上げてみました。その他にも当サイトでは、全国のたくさんの展覧会をご紹介しています。展覧会情報一覧 ページより、お住まいの地域やお出かけ先の地域を設定して、ご興味ある展覧会を見つけてみてください。(第2弾 関西&全国版は近日中に公開予定です。)
今年の下半期もぜひ、美術館・博物館で心豊かな時間をお過ごしください。

アートアジェンダ編集部

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