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五百羅漢図と通天橋の眺望が楽しい展覧会
東福寺には二度行ったことがあり、庭の美しさと通天橋からの眺望の素晴らしさは鮮明に覚えていますが、仏像や絵画の記憶はほとんどありません。単に観光スポットとして訪れただけなので、寺に関する深い知識はなく、国宝7点重要文化財98点を有していることを知りませんでした。
第1章「東福寺の創建と円爾」と第2章「聖一派の形成と展開」では、多数の書画により開祖円爾とその後継者について詳しく知ることができました。
第3章では伝説の絵仏師・明兆が描いた重要文化財「五百羅漢図」全幅が14年に及ぶ修理後初めて公開されました。期間中に入れ替えがあり、実際には1/3程度しか見ることができませんが、ユーモラスなせりふ入りの解説パネルが付いており、楽しく鑑賞できました。同じく重要文化財である狩野孝信による「五百羅漢図」も1幅展示されていました。五百羅漢図といえば芝の増上寺の宝物展示室に狩野一信によるものが常設展示されており、これも見事なものですが、重要文化財に指定されていません。絵の出来映えにかかわらず幕末に描かれた新しい物なので指定されないのでしょう。
第4章の「禅宗文化と海外交流」から第5章の「巨大伽藍と仏教彫刻」に移る通路にあの通天橋が再現されており、写真パネルで見事な紅葉が眺望できました。この展覧会で一番感動したのはこのコーナーかもしれません。
第5章のコーナーにも国宝や重要文化財の文書・仏像が飾られてしましたが、2019年に同じく東京国立博物館で開催された「東寺 空海と仏像曼荼羅」の印象が強烈で、その後の仏像展ではあまり感動しないので、感想は省略します。
本展覧会は東福寺の来歴を詳しく知ることができ、現地で見られなかった貴重な文化財をまとめて見られる有意義な展覧会でした。