特別展「東福寺」
東京国立博物館|東京都
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禅宗の底力
2023年3月の上京時に狙ってたアートアジェンダのチケットプレゼントは東博の東福寺展だったが、見事ハズレた(笑)
しゃあない、秋の京都展で見るかと思ってたところ、予定してた用件が急遽中止となり時間ができた。
その日3月18日は、17時から西洋美のブルターニュ展を予約済。その前に2時間ぐらいあるので東博へと足を運んだ。
朝から止まぬ雨の中、やって来ました平成館。昨秋の国宝展以来4か月ぶりだ。天候のせいもあってか、客の入りはさほど多くなく当日券でも楽勝で入館でき、余裕で見て回れた。
いやはやたいしたお宝持ってはりまんなあ、東福寺はん(笑)
ご本尊以外は全部持ってきたんじゃないかと思うぐらいの一大エキジビジョンだ。
いやこれ、ほんと正直な感想。この時期東福寺行かれたかた、がっかりされなきゃいいんだけど。
前半は東福寺の開祖円爾(えんに)とその師無準師範にSPOTを当てた肖像画や書跡を中心の展示から始まり、円爾の弟子たちが興した宗派関連文物へと続いていく。
達筆な古文書を解説と併せて鑑賞していく中、一つだけ見た瞬間に「なんじゃこのヘタクソ字は」ってのがあった。
それこそが、円爾の《遺偈》だ。臨終の床で最期の力を振り絞って書いたとある。
そしてその内容が禅宗の教えそのものなのが心に響く。「禅の真理は仏も祖師も伝えず自ら体得するもの」と。
※この私が見た《遺偈》は、あとで展示リストをよく見てみると、訪問日に出ていたのは円爾のそれではなく、癡兀大慧(ちこつだいえ)のものでした。お詫びして訂正します。癡兀大慧は肖像画が出てましたが、怖そうなご尊顔が印象的でした。
展示中盤は、当展最大の目玉、「伝説の絵仏師 吉山明兆(きっさんみんちょう)」の大特集だ。
明兆とは初めて知る絵師だが、圧巻は全50幅に及ぶ《五百羅漢図》だ。
さすがに全作一挙公開とはいかず、三会期に分けての展示。訪問日は第1号~15号の展示だった。
釈迦の仏弟子のうち高位の500人が1幅10人✕50幅に描かれており、各幅にはショートストーリーがあるのが面白い。
いわばスーパースターとその超能力、それにひれ伏す一般人みたいな構図。
修復後の初公開だそうで、とにかく色がきれいなのが素晴らしい。解説読みながらじっくり鑑賞されたし。
この羅漢図で大満腹になって、最後の部屋に来ると、ダメ押しで仏像が押し寄せる。
巨大な一対の金剛力士像がド迫力で、さぞかし運搬に苦労があったことと察する。小型、中型の仏像も保存状態が良い名品揃いで、展示のラストにこれらを持ってくる構成にも拍手だ。
仏像室に入る前の通路には、東福寺名物「通天橋からの紅葉観覧」の写真パネルがあって模擬体験できるようになってる。
私も一度だけ秋の紅葉シーズンに東福寺に行き、通天橋も通ったのだが人が多くてまともに見れなかった。パネルの真っ赤なモミジ見たら、なるほどこれじゃ人が押し寄せるのは無理もないと思った。
その東福寺、入山料以外に、お堂、山門、塔頭等々、行くとこ行くとこで追加料金取られるので、訪問時には今回のような所蔵品は何も見なかった。
それからすると、2100円でこれだけのものが見れたのは、良かったんじゃなかろうか。「京の仇を江戸で討った」ってとこですな。
思うに、仏教美術に関しては、禅宗をはじめとする「自力」系の宗派に数も質も名品を有する寺院が多いのではなかろうか。
うちの宗旨は浄土真宗だが、「他力本願」系は庶民派なので、このようなお宝がわんさかあるってとこは少ないような気がする。
折しも、京博では「親鸞展」が始まってるので、比較して鑑賞されるのも面白いかもしれません。