特別展「東福寺」
東京国立博物館|東京都
開催期間: ~
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ギュッと集めた寺宝【東福寺展】Q:いつ行く?A:今・・ともう1回?
3月から開会した東福寺展。桜満開、春爛漫を体現するお散歩日和に朝イチで訪問しました。
鑑賞した皆様から絶賛レポートも散見しますので、私からは感想ちょこちょこと、
【いつ行くべきか?】
のアドバイスを。というのも仏教美術好きでもそうでなくても鑑賞大推奨なのですが、展示数多くて前期・中期・後期の大体3段階に展示替えがあり、気を付けないとお目当てを見逃すからです。
まあ、3回行けば何の問題もないんですが現実世界では懐事情も大切ですし。頑張って後期も行くぞ!とは思ってますが、旅人は賢く見所を抑えるもの。
東福寺は京都を代表する有名観光地。JR東海のCMで2017年にお茶の間でも紹介されましたが、紅葉の絶景を見ることができる通天橋が有名です。
禅宗美術を語るうえでは外せない名品を所有しています。京都五山のひとつとしても知られている禅宗の大寺院です。
後に「伽藍面(がらんづら)」と称されるほどの巨大な伽藍を誇っていました。広くてなんにもない空間のことを『がらんどう』と言いますけど、この語源が伽藍がらんです。
それだけ東福寺が大きくて立派な建物だという証左。何回か京都のお寺と敷地を訪問していますが本当に広いんですよねここ。。。。
JR・京阪の東福寺駅から降りてすぐお寺の敷地北側入口があり、ひたすら歩いて南側出口に着くと京阪の鳥羽街道駅が目の前!1駅まるっと敷地。本当に歩き甲斐のある広さで、大好きなお隣の稲荷大社までそのまま歩いちゃうので行った日の夜は休息時間のシート足裏貼り付けて、マッサージクッション手放せなくなります。
しかも東福寺敷地内の隣接する塔頭寺院は25もあって(隆盛の頃は3倍数)、その寺宝が常時全部公開しているなんてことは無く、公開している時期でも片手の数くらいしか入れず見られません。
【京都●の旅 特別拝観】とかの公開期間でちょこちょこと寺宝公開している時にようやく拝観してますが、都度納めてる拝観料も地味に塵積なんですよね。
そう考えると分散している寺宝が東博平成館という建物の中で全て堪能できるんです!関東~関西の交通+宿泊費かからないし、すごいお得感(笑)
そのお得な展示の中でも特に推奨したい推し作品の公開展示期間をいくつかご紹介。今後の訪問の参考になれば幸いです。
①五百羅漢図:重要文化財
吉山明兆きっさんみんちょう(1352~1431年)筆
第1~15号: 東京:3/7-3/27 京都:10/7-10/22
第16~30号: 〃:3/28-4/16 〃:10/24-11/5
第31~45号: 〃:4/18-5/7 〃:11/21-12/3
※48-49号は東京の根津美術館所蔵。
本展覧会の目玉。「画聖」と称された室町時代の絵仏師・吉山明兆きっさんみんちょう(1352~1431年)が3年以上かけて完成させた全50幅の修理後初公開。
展示スペースの都合上、3期に別れての展示です。700年近く前の作品とは思えない色鮮やかさは今回2008年から14年間続けた修復の成果ですね、綺麗です。
修復期間長いな・・・とは思いますが、作品数も多い上に全作品がほぼ下地の絹や絵の具が損傷していたそうで、なかなか厳しく困難な修復ミッション。
通常、文化財の修理というのはひとつの工房が手掛けますが、今回は4工房による合同修理体制を試みました。
お仕事の分担は大事ですよね。
どんな仕事もですけど、技術の継承とか知識伝達、報連相は現代社会必須です。修復知識・経験は今後に役立ちそうですし。
統一感のある仕上げとなるよう共通の材料を用い、工房の“個性”が出ないよう情報共有を図るなど、継続可能な文化財保護運動が窺い知れます。。。
【修復過程】
①作品の写真撮影→②個々の損傷状態、箇所確認→③にかわ液で絵の具の剥落防止→④軸装を解体して古い裏打ち紙除去
⑤下地絹のが欠けた部分に絹(ものすごく細かい大きさ)を補填→⑥新たな裏打ち
こんな緻密で地道な作業がコツコツ積み重ねられています。修復で蘇った鮮やかな色彩と、明瞭で迷いのない墨の線が素晴らしいです。絵画は1幅につき大体10人の羅漢がいて、いかに仏教が素晴らしいかを様々なエピソードで伝えています。
絵の隣にはいくつか解りやすい解説漫画もついていて、これがけっこう・・・ww吹きました。
第1幅を例にすると、道教の経典はメラメラ燃えちゃうのに、隣の仏教経典はサーチライト並みに後光が光り輝いていて、なんだか小学校の学習漫画とか手塚治虫漫画【ブッダ】が浮かびます。
この後の2期の解説漫画も愉しいと思います。可能であればぜひコンプリートを。
②白衣観音図:重要文化財
吉山明兆筆
東京:4/11-5/7
京都:10/7-11/5
作品高さが圧巻の326.1cm(大体NBAバスケットボールゴールポストの一番上部分くらい)。
今回の展示絵画の中で【圧倒的なスケール】という言葉が一番似合って、かつ見栄えのする大作です。
もとは法堂の壁面に飾られていました。作者の明兆は東福寺を拠点にしていた、いわばお寺お抱えの絵師。江戸時代までは雪舟と人気を二分していましたが、仏教絵画への視線が冷え込んだ為に近年は少々埋没してしまった画人です。
仏殿の荘厳(お堂や仏像を飾るお仕事)を行う殿司(でんす)という職も務めていたので、東福寺をいかに美しく壮麗に見せるか常に考えていたんでしょうね。
これが薄暗がりの中、蠟燭のみに照らされていたら、、なんとも幽玄な空間だったでしょう。
③達磨・蝦蟇鉄拐図:重要文化財
吉山明兆筆
東京:3/7-4/9
京都:11/7-12/3
こちらも明兆画を代表する優品。中央の赤い衣を纏う達磨を中心に線対称にも思えるすっきりした構成です。
衣服の襞や背景が装飾的にも見えますが、陰影描写や粛然とした表情はとても細かい。
ちなみに左の蝦蟇仙人(中国発祥ですが日本の方が人気)の肩に乗っかる蝦蟇ガエルが妙に可愛い。
カエルらしくないというか、色の白さとか身体つきとか、ありがたい霊獣に見えます。右の鉄拐仙人とは2人セットで描かれる事が多いようです。
ちなみに鉄拐仙人の目印は杖。自分が動かないので他人に乗り移って活動する少々ホラーな能力の仙人様です。
絵では伸び放題の髪や髭、ややくたびれた格好で岩に休憩のご様子。
自分の吐いた吐息の先に小さく人の姿があるので、乗り移った別人の身体かもしれません。。。ちょっと怖い。
④二天王立像と旧本尊の【手】:立像は重要文化財
13世紀・鎌倉時代 東京・京都会場どちらも通期展示
最終室の仏像・仏具コーナーはどれも素晴らしくて、甲乙をつけるのも失礼な感じがしましたがこの彫刻の存在感はひときわでした!
またもやバスケゴールポストの高さ3mを軽く越えた高さの威容ですが、像は悪鬼を踏みつけたお決まりのポーズで、武神の荒々しさというより厳かな印象。
とにかく顔、身体の全体のバランスと造形が美しいです!他のもう二天王もお揃いで見たかったな~と思います。
【手】は、文字通り火災で焼失した本尊の遺った手の部分。しかし手だけで2m。本尊の大きさは推して知るべし。
記録では身の丈五丈(約15m)の釈迦座像だったそうです。ふくよかで巨大な手のひらは撮影可能です。
圧巻の仏教美術に満腹の東福寺展。これだけ見れたなら今春の京都は行かなくてもよいかもと思わせる展覧会です。
でもやっぱり東寺の桜と伏見のお稲荷、月桂冠、黄桜の酒蔵街は行きたいかもしれない。。。
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