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2023年下半期に開催スタートの注目の
展覧会を一挙ご紹介!(第1弾は関東版)

「テート美術館展」「モネ 連作の情景」「デイヴィッド・ホックニー展」「キュビスム展」
「イヴ・サンローラン展」「特別展 和食」「生誕120年 棟方志功展」ほか

トピックス

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2023年の下半期(7~12月)に開催の注目の展覧会をご紹介します。 第1弾は、東京他で開催される関東エリアの展覧会の紹介です。第2弾 関西&全国版のおすすめ展覧会は近日ご紹介予定です。

2023年下半期の関東版では、日本での印象派の根強い人気を感じさせる2つの展覧会「テート美術館展 光 — ターナー、印象派から現代へ」、「モネ 連作の情景」のほか、1960年代にアメリカの西海岸で描いた初期の代表作から新作まで100点以上紹介する画家 デイヴィッド・ホックニーの大規模個展「デイヴィッド・ホックニー展」、パリのポンピドゥーセンターの所蔵品から、キュビスムの歴史を語る上で欠くことのできない貴重な作品が多数来日する「キュビスム展―美の革命 ピカソ、ブラックからドローネー、シャガールへ」、大きな注目を浴びつつ、開幕直前に新型コロナウイルスの影響で中止となった特別展「和食」の待望の開催など、注目の展覧会の数々を紹介しています。

ぜひ、アートアジェンダ展覧会情報 をご参考にしていただいて、今年もたくさんの美術館・展覧会をお楽しみください。

英国を代表する国立美術館テートから「光」をテーマにした名品約120点が一堂に介する「テート美術館展 光 — ターナー、印象派から現代へ」

ジョン・ブレット《ドーセット州の崖から見えるイギリス海峡》1871年 Photo: Tate
ジョン・ブレット《ドーセット州の崖から見えるイギリス海峡》1871年 Photo: Tate

「光の画家」と呼ばれるジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナーや風景画の名手ジョン・コンスタブルといった英国近代美術史を彩る重要な画家たちの創作、クロード・モネをはじめとする印象派の画家たちによる光の描写の追求、モホイ=ナジ・ラースローの映像作品やバウハウスの写真家たちによる光を使った実験の成果、さらにブリジット・ライリー、ジェームズ・タレル、オラファー・エリアソン等の現代アーティストによってもたらされる視覚体験にまで目を向けます。

絵画、写真、彫刻、素描、キネティック・アート、インスタレーション、さらに映像等の多様な作品を通じ、様々なアーティストたちがどのように光の特性とその輝きに魅了されたのかを検証します。

2023年下半期 アートアジェンダがおすすめする注目の展覧会情報・関東版(1)
「テート美術館展 光 — ターナー、印象派から現代へ」
開催美術館:国立新美術館
開催期間:2023年7月12日(水)~10月2日(月)

世界各地のモネコレクションから、印象派の巨匠クロード・モネの作品が一挙集結!「モネ 連作の情景」

クロード・モネ(1840–1926)は自然との対話を求め、季節や天候、時刻などによって自在に変化する風景の「瞬間性」をとらえようと探求を続けました。1891年に発表した「積みわら」のシリーズ以降、モネは連作の画家として国際的に名声を博します。水辺の景色、建物や草原などが刻々と変化する情景を描き、連作という発想によって絵画の新しいあり方を提示しました。ジヴェルニーの庭園では「睡蓮」のシリーズに取り組み、後世の芸術家に大きな影響を与えています。

1874年にパリで第1回印象派展が開催されてから2024年で150年を迎えます。この記念すべき機会を祝して、東京・大阪の2会場で展覧会が開催されます。

2023年下半期 アートアジェンダがおすすめする注目の展覧会情報・関東版(2)
「モネ 連作の情景」
開催美術館:上野の森美術館
開催期間:2023年10月20日(金)~2024年1月28日(日)

近年の代表作〈春の到来〉シリーズ、日本初公開!日本では27年ぶりとなる待望の大型個展「デイヴィッド・ホックニー展」

デイヴィッド・ホックニー《クラーク夫妻とパーシー》
1970-71年 テート © David Hockney Photo: Richard Schmidt
デイヴィッド・ホックニー《クラーク夫妻とパーシー》
1970-71年 テート © David Hockney Photo: Richard Schmidt

現代で最も革新的な画家のひとりデイヴィッド・ホックニー(1937- )の日本では27年ぶりとなる大規模な個展。イギリスで生まれたホックニーは60年以上にわたり、絵画、ドローイング、版画、写真、舞台芸術といった分野で多彩な作品を発表し、近年はiPadを用いて身近な主題を描き続けています。

本展は 1960年代にアメリカの西海岸で描いた初期の代表作から、近年の集大成というべき故郷ヨークシャー東部の自然を描いた大型絵画のシリーズ、新型コロナウイルスによるロックダウン中にフランス北部のノルマンディーで描いた全長90メートルにも及ぶ新作まで、ホックニーの作品を100点以上紹介する、日本におけるこれまでで最も充実した展覧会となります。

2023年下半期 アートアジェンダがおすすめする注目の展覧会情報・関東版(3)
「デイヴィッド・ホックニー展」
開催美術館:東京都現代美術館
開催期間:2023年7月15日(土)~11月5日(日)

キュビスムの歴史を語る上で欠かせない貴重な作品が多数来日「キュビスム展―美の革命 ピカソ、ブラックからドローネー、シャガールへ」

ロベール・ドローネー《パリ市》 1910-1912年/ポンピドゥーセンター(1936年国家購入) Centre Pompidou, Paris, Musée national d’art moderne - Centre de création industrielle © Centre Pompidou, MNAM-CCI/Georges Meguerditchian/Dist. RMN-GP
ロベール・ドローネー《パリ市》 1910-1912年/ポンピドゥーセンター(1936年国家購入) Centre Pompidou, Paris, Musée national d’art moderne - Centre de création industrielle © Centre Pompidou, MNAM-CCI/Georges Meguerditchian/Dist. RMN-GP

20世紀初頭、パブロ・ピカソとジョルジュ・ブラックという2人の芸術家によって生み出されたキュビスムは、西洋美術の歴史にかつてないほど大きな変革をもたらしました。その名称は、1908年にブラックの風景画が「キューブ(立方体)」と評されたことに由来します。西洋絵画の伝統的な技法であった遠近法や陰影法による三次元的な空間表現から脱却し、幾何学的に平面化された形によって画面を構成する試みは、絵画を現実の再現とみなすルネサンス以来の常識から画家たちを解放しました。

また絵画や彫刻の表現を根本から変えることによって、抽象芸術やダダ、シュルレアリスムへといたる道も開きます。慣習的な美に果敢に挑み、視覚表現に新たな可能性を開いたキュビスムは、パリに集う若い芸術家たちに大きな衝撃を与え、装飾・デザインや建築、舞台美術を含む様々な分野で瞬く間に世界中に広まり、それ以後の芸術の多様な展開に決定的な影響を及ぼしています。

本展では、世界屈指の近現代美術コレクションを誇るパリのポンピドゥーセンターの所蔵品から、主要作家約40人による絵画を中心に、彫刻、素描、版画、映像、資料など約140点を通して紹介します。

2023年下半期 アートアジェンダがおすすめする注目の展覧会情報・関東版(4)
「パリ ポンピドゥーセンター キュビスム展―美の革命
ピカソ、ブラックからドローネー、シャガールへ」
開催美術館:国立西洋美術館
開催期間:2023年10月3日(火)~2024年1月28日(日)

日本列島の自然が育んだ多様な食材、人々の知恵や工夫が生み出した技術や歴史など、和食の魅力に迫る特別展「和食 ~日本の自然、人々の知恵~」

「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録されて10年。世界中でますます注目の高まる和食を、バラエティ豊かな標本や資料とともに、科学や歴史などの多角的な視点から紹介します。日本列島の自然が育んだ多様な食材や、人々の知恵や工夫が生み出した技術、歴史的変遷、そして未来まで、身近なようで意外と知らない和食の魅力に迫ります。

2020年に話題を呼びつつも、新型コロナウイルスの影響で直前で中止。改めて開催される待望の展覧会です。

2023年下半期 アートアジェンダがおすすめする注目の展覧会情報・関東版(5)
特別展「和食 ~日本の自然、人々の知恵~」
開催美術館:国立科学博物館
開催期間:2023年10月28日(土)~2024年2月25日(日)

「日本美術の教科書」と呼ぶに相応しい豪華な作品の数々により、やまと絵の壮大で華麗な歴史を総覧、特別展「やまと絵 ‐受け継がれる王朝の美‐」

国宝 平治物語絵巻 六波羅行幸巻(部分)鎌倉時代・13世紀 東京国立博物館蔵
展示期間:10月11日(水)~11月5日(日)
国宝 平治物語絵巻 六波羅行幸巻(部分)鎌倉時代・13世紀 東京国立博物館蔵
展示期間:10月11日(水)~11月5日(日)

平安時代前期に成立したやまと絵は、以後さまざまな変化を遂げながら連綿と描き継がれてきました。優美、繊細といったイメージで語られることの多いやまと絵ですが、それぞれの時代の最先端のモードを貪欲に取り込み、人びとを驚かせ続けてきた、極めて開明的で野心的な主題でもありました。伝統の継承、そして革新。常に新たな創造を志向する美的な営みこそが、やまと絵の本質と言うことができるでしょう。

本展は千年を超す歳月のなか、王朝美の精華を受け継ぎながらも、常に革新的であり続けてきたやまと絵を、特に平安時代から室町時代の優品を精選し、紹介するものです。

2023年下半期 アートアジェンダがおすすめする注目の展覧会情報・関東版(6)
特別展「やまと絵 ‐受け継がれる王朝の美‐」
開催美術館:東京国立博物館
開催期間:2023年10月11日(水)~12月3日(日)

「世界のムナカタ」が社会現象になるまでの道程を辿る大回顧展「生誕120年 棟方志功展 メイキング・オブ・ムナカタ」

棟方志功《飛神の柵》1968年 棟方志功記念館
棟方志功《飛神の柵》1968年 棟方志功記念館

ヴェネチア・ビエンナーレでの受賞をはじめ、「世界のムナカタ」として国際的な評価を得た版画家・棟方志功(1903-1975)。一心不乱に版木に向かう棟方の姿は多くの人々の記憶に刻み込まれています。棟方が居住し、あるいは創作の拠点とした青森、東京、富山の三つの地域は、棟方の芸術の形成に大きな影響を与えました。

棟方の生誕120年を記念し、棟方と富山、青森、東京の各地域の関わりを軸に、板画(はんが・自作木版画の呼称)、倭画(やまとが・自作肉筆画の呼称)、油画(あぶらが)といった様々な領域を横断しながら、本の装幀や挿絵、包装紙などの商業デザイン、映画・テレビ・ラジオ出演にいたるまで、時代特有の「メディア」を縦横無尽に駆け抜けた棟方の多岐にわたる活動を紹介し、棟方志功とはいかなる芸術家であったのかを再考します。

2023年上半期 アートアジェンダがおすすめする注目の展覧会情報・関東版(7)
「生誕120年 棟方志功展 メイキング・オブ・ムナカタ」
開催美術館:東京国立近代美術館
開催期間:2023年10月6日(金)~12月3日(日)

モードの帝王、没後日本で初の大回顧展。唯一無二でありながら、豪華絢爛な美の世界を間近で堪能、「イヴ・サンローラン展 時を超えるスタイル」

カクテル・ドレス―ピート・モンドリアンへのオマージュ 1965年秋冬オートクチュールコレクション 
© Yves Saint Laurent © Alexandre Guirkinger
カクテル・ドレス―ピート・モンドリアンへのオマージュ 1965年秋冬オートクチュールコレクション 
© Yves Saint Laurent © Alexandre Guirkinger

イヴ・サンローランはクリスチャン・ディオールの急死をうけ、1958年にディオールのデザイナーとして鮮烈なデビューを飾ります。1962年からは自身のブランド「イヴ・サンローラン」を発表。それ以来、2002年の引退まで約半世紀にわたって世界のファッションシーンをリードし、サファリ・ルックやパンツスーツ、ピーコート、トレンチコートといったアイテムを定着させるなど、女性たちのワードローブに変革をもたらしました。

オフィスでのイヴ・サンローラン、パリのマルソー通り5番地のスタジオにて、1986年 
© Droits réservés
オフィスでのイヴ・サンローラン、パリのマルソー通り5番地のスタジオにて、1986年 
© Droits réservés

本展はイヴ・サンローラン美術館パリの全面協力を得て、没後日本で初めて開催される大回顧展です。わずか21歳で衝撃的なデビューを果たしてから、自身のブランドとして初のコレクションを成功させ、美術作品や舞台芸術、そして日本にも影響を受けながら独自のスタイルを確立するまでの40年にわたる歴史を、ルック110体のほか、アクセサリー、ドローイング、写真を含む約300点によって、12章構成で余すところなく紹介します。

2023年下半期 アートアジェンダがおすすめする注目の展覧会情報・関東版(8)
「イヴ・サンローラン展 時を超えるスタイル
Yves Saint Laurent, Across the style」
開催美術館:国立新美術館
開催期間:2023年9月20日(水)~12月11日(月)

「近代」、「日本的コード」、「日本の本来性」とは何かを問う。ジャム・セッション 山口晃「ここへきて やむに止まれぬ サンサシオン」

山口晃《日本橋南詰盛況乃圖》(部分図)2021-2023 年、作家蔵 ©YAMAGUCHI Akira, Courtesy of Mizuma Art Gallery
山口晃《日本橋南詰盛況乃圖》(部分図)2021-2023 年、作家蔵 ©YAMAGUCHI Akira, Courtesy of Mizuma Art Gallery

日本は近代を接続し損なっている、いわんや近代絵画をや。
写実絵画やアカデミズム絵画に対する反動としての、あるいはその本来性を取り戻すためのものが西欧の〈近代絵画〉であろう。が、写実絵画やアカデミズム絵画の歴史を持たぬ本邦に移入された近代絵画とはなんであろう。


西欧の近代絵画と日本の近代絵画を蔵する石橋財団コレクションを前にして、改めて、山口晃(1969-)はそう述べます。今回のジャム・セッションでは、「近代」、「日本的コード」、「日本の本来性」とは何かを問い、歴史や美術といった個人を圧する制度のただ中にあっても、それらに先立つ欲動を貫かんとする山口晃を紹介します。

2023年上半期 アートアジェンダがおすすめする注目の展覧会情報・関東版( 9 )
ジャム・セッション 石橋財団コレクション×山口晃
「ここへきて やむに止まれぬ サンサシオン」
開催美術館:アーティゾン美術館
開催期間:2023年9月9日(土)~11月19日(日)

現在の「日本画」とこれからの日本の絵画を追究する多様な作家たちの実践の数々にあらためて注目、「シン・ジャパニーズ・ペインティング」

横山大観 《山に因む十題のうち 霊峰四趣 秋》1940年 紙本彩色/額装 74.6×110.4cm ポーラ美術館
シン・ジャパニーズ・ペインティング 革新の日本画―横山大観、杉山寧から現代の作家まで ポーラ美術館
横山大観 《山に因む十題のうち 霊峰四趣 秋》1940年 紙本彩色/額装 74.6×110.4cm ポーラ美術館
シン・ジャパニーズ・ペインティング 革新の日本画―横山大観、杉山寧から現代の作家まで ポーラ美術館

明治政府のお雇い外国人として来日していたアーネスト・フェノロサ(1853-1908)は、当時、日本国内で目にした絵画を総じて “Japanese Painting”と呼び、この英語を日本人通訳が「日本画」と翻訳したことから、明治以後に「日本画」という概念が社会的に定着していったと言われています。

「日本画」は日本の伝統的な絵画と西洋画の接触により、新しい表現形式として確立されましたが、日本という近代国家の形成期における文化的混沌の中で画家たちは、近代とは、西洋とは、国家とは何かという不断の問いと向き合うことを余儀なくされました。第二次世界大戦後は、画壇において日本画滅亡論が唱えられましたが、近代日本画を超克し「新しい日本絵画の創造」を目指した現代日本画の担い手たちの活躍によって、「日本画」は新たな段階へと進みました。

グローバリズムが加速し、西洋と東洋という二分化がもはや意味をなさず、主題や形式、画材などが多様化する21世紀のアートシーンにおいて、現在の「日本画」にはいかなる可能性が秘められているのでしょうか。本展覧会は、近代の「日本画」を牽引した明治、大正、昭和前期の画家たちや、杉山寧をはじめとする戦後の日本画家たちの表現方法、そして現在の「日本画」とこれからの日本の絵画を追究する多様な作家たちの実践の数々にあらためて注目し、その真髄に迫るものです。

2023年上半期 アートアジェンダがおすすめする注目の展覧会情報・関東版( 10 )
「シン・ジャパニーズ・ペインティング 革新の日本画―横山大観、杉山寧から現代の作家まで」
開催美術館:ポーラ美術館
開催期間:2023年7月15日(土)~12月3日(日)

2023年下半期の関東版では、注目の10の展覧会をご紹介しました。第2弾 関西&全国版のおすすめ展覧会も近日ご紹介予定です。どうぞお楽しみに。

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