日本ワイン発祥の地、山梨に点在する類稀なる
アートスポット。美術館とワインを巡る、
山梨・アート×美食旅への誘いアート好きの心を満たす旅 【ステイ&ダイニング 特別編】/ ワイン × 美食(山梨県北杜市)
アート&旅

「ワインスイートメゾネット」限定で、提携ワイナリー「ドメーヌ ミエ・イケノ」のハーフボトルが味わえる(右上)
リゾート内の「八ヶ岳ワインハウス」では山梨、長野の厳選したワインをテイスティングできる(左下)
八ヶ岳、南アルプスに囲まれた清々しいロケーション(右下)

文・藤野淑恵
日本が誇るワイン産地、山梨と長野の県境に位置する小淵沢。リゾナーレ八ヶ岳で、土地の食材とワインのペアリングを味わいつくす
アート好きの心を満たす旅 【特別編】/ ワイン × 美食(山梨県北杜市)1日目【ステイ&ダイニング】:リゾナーレ八ヶ岳
甲府駅から車で北杜市の清春芸術村、そしてドメーヌ ミエ・イケノの醸造所を巡った 山梨・アート好きの心を満たす旅の1日目 の終盤。同じ北杜市にある星野リゾート リゾナーレ八ヶ岳に向かう。JR小淵沢駅からは車でわずか5分の好立地にありながら、八ヶ岳、南アルプス、富士山の景観がパノラミックに広がるこのリゾートは、夏は避暑地として、冬はウィンタースポーツの拠点として人気が高い。

ゲストを迎える広々としたラウンジは、このホテルを設計した世界的なイタリア人建築家 マリオ・ベリーニのデザインによるカッシーナの名作チェア「412CAB」が贅沢に配された優美な空間。

マリオ・ベリーニにオマージュを捧げたスイートルーム「ベリーニスイート」では、建築デザインに調和するイタリアのカッシーナ、B&B ITALIAといった洗練されたスタイリッシュなインテリアで設えられており、とっておきの客室となっている。

日本を代表するワイン産地である山梨と長野に隣接した立地を活かし、土地のワインを堪能するワインリゾートとして定評を得ているリゾナーレ八ヶ岳だが、この構想は、前編で紹介した「ドメーヌ ミエ・イケノ」との提携により2006年にスタートしたものだという。
メインダイニングの「OTTO SETTE(オットセッテ)」にあるワインセラーにはドメーヌ ミエ・イケノのワインはもちろん、山梨ワイン・長野ワインを中心に、ソムリエによって選び抜かれたワイン2000本が貯蔵されている。

山梨県はブドウ、ワインの生産量、ワイナリーの数、すべてに日本一を誇る。近年は日本ワインが注目を集めているが、ワイン・プロフェッショナルからも世界の銘醸地のひとつとして一目置かれる土地だ。日本のワイン文化を牽引してきた山梨のワイン、そして、日照時間が長く昼夜の寒暖差による気候特性から良質なワインを生産するお隣の長野のワインの魅力を知る近道が、リゾナーレ八ヶ岳のワインショップ「八ヶ岳ワインハウス」だ。
山梨・長野より厳選したワイン24種を、温度管理されたサーバーからセルフ形式でテイスティングできる(25ml 150円~)。

気に入ったワインをボトルで購入し、リゾナーレ八ヶ岳の施設内にある9つのレストランやカフェにBYO(Bring Your Ownレストランに無料でお酒を持ち込めるサービス)することも可能だ。今回の旅で訪れたドメーヌ ミエ・イケノの「シャルドネ2017年」、「ピノ・ノワール2017年」といった、一般にはなかなかお目にかかることのできない希少なワインを、25ml、50ml、150mlといった好みの量で味わえるのも嬉しい。

写真は小牧ヴィンヤード。
ワインが生まれた土地の風や土の匂いを感じながらアペロタイムを葡萄畑で過ごせる「葡萄畑アペロ」(4月~11月開催)、リゾート内の八ヶ岳ワインハウスで毎夕開催されている「ワインの学校」で山梨県・長野県で造られているワインについて学び、好みのワインをみつけるチャート体験など、初心者からワイン通までを対象にしたイベント(共に宿泊ゲスト限定)も興味深い。

「ワインスイートメゾネット」。写真は2階のリビングスペース。
ワインリゾートの気分が盛り上がるのはゲストルームにおいても然り。2019年春に誕生した「ワインスイートメゾネット」は、1階は寝室、2階は広大な八ヶ岳の自然を切り取ったピクチャーウィンドウから四季折々の景観を眺めることができるリビング。1泊ではなく連泊して過ごしたくなる、居心地のよい空間だ。

最大のお楽しみはディナータイムだ。メインダイニングのイタリア料理レストラン「OTTO SETTE(オットセッテ)」の「OTTO」はイタリア語で数字の「8」=八ヶ岳を、「SETTE」は「7」=土地の食材を提供する7人の達人を指すという。総料理長の政井茂シェフ自らが生産者のもとに足を運んで吟味した素材から生まれる、独創性豊かな八ヶ岳イタリアンと、風土を同じくするワインのマリアージュから生まれる八ヶ岳ガストロノミーは、フーディーズやワインラバーの間でも高い評価を得ている。

アンティパストやプリモピアットといった名称ではなく「集い」、「自然」、「畑」、「香り」、「旬」・・・と名づけられた「OTTO SETTE(オットセッテ)」のメニュー。「山梨〜長野 晩秋の八ヶ岳」と題した今宵のメニューの最初の一皿「集い」は生姜の風味が効いた、しいたけと7種の野菜のミネストローネ、「玉葱 じゃがいも セロリ 金時」。ペアリングされた「キザンスパークリング トラディショナルブリュット」は甲州100%のブドウをシャンパーニュ方式で醸造したスパークリングワインで、クリーンな柑橘系の香りとともにクリーミーな香ばしさも感じる味わいが好相性だった。八ヶ岳の野菜畑をイメージした30種の野菜の彩りも豊かな「畑」の「野菜」プレートにペアリングされた「リュードヴァン ソーヴィニョン・ブラン2019」、ドライトマト、ルッコラを添えたグリルした秋刀魚のパスタに合わせた「ボー・ペイサージュ ツガネ ラ・モンターニュ2018」の滋味深い味わいも印象に残る。山梨の誇る甲州ブドウ100%の甘口のワイン「シャトー・メルシャン エサンス・ド・甲州」など、普段なかなか味わう機会のないワインとの邂逅も、ワインリゾート、リゾナーレ八ヶ岳のメインダイニングだから可能な経験といえる。

前編 で紹介した清春芸術村のみならず、中村キースへリング美術館、平山郁夫シルクロード美術館など、魅力的なアートスポットが点在するこのエリアを旅するアートラバー、ワインラバーにとって、土地のワインと食事を満喫し、四季折々の自然と季節感溢れるイベントを体感できる上質なリゾートは、繰り返し訪れたくなる定宿となるだろう。
アート好きの心を満たす旅 Vol.04 / アート×ワイン(山梨県甲府市・甲州市)【後編・山梨県立美術館 / 山梨県立文学館 / グレイスワイン】に続く。