絢爛豪華な屏風に、名だたる絵師たち―
相国寺承天閣美術館に伝わる屏風が集結
企画展「屏風 黄金の調度」が、相国寺承天閣美術館にて、2026年3月8日(日)まで開催中

屏風は日本の住居において、部屋の仕切りや風よけなどに用いられると同時に、空間を飾り、あるいはそこに描かれた世界に、見る人を誘う巨大なメディアでもあった。多くの絵師たちは、蛇腹折りという独特な形態の屛風に、時に迫真的に、時に装飾的に、多彩な世界を表してきた。
相国寺承天閣美術館の企画展「屏風 黄金の調度」は、そんな屏風という独自なメディアに注目し、第Ⅰ期(会期終了)、第Ⅱ期(2026年1月11日~3月8日)に分けて、相国寺、慈照寺、鹿苑寺に伝わる屏風から、選りすぐりの作品を展示する。
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- 企画展「屏風 黄金の調度」
開催美術館:相国寺承天閣美術館
開催期間:2025年10月19日(日)〜2026年3月8日(日)
初公開の作品も展示―相国寺を荘厳した屏風


右隻の中国・唐時代の名将、郭子儀(かくしぎ)を中心に、彼の孫たちが遊ぶ様子が六曲一双の屏風いっぱいに描かれている。長寿富貴、子孫繁栄を願う吉祥的な画題として好まれた。
本展は3章立てで、第1章「相国寺を荘厳する屏風」では、相国寺の所蔵品を記した什物帳『常住什具統記』(明治41年)に記録されている屏風などが紹介されている。

柳の周囲で遊ぶ手長猿、蓮花に白鷺、水辺の雁と、様々な組み合わせで動植物の姿が描かれている。
季節の変化も緩やかに感じさせながら、画面全体で1つの景色となるような調和を見せる。
美術館ができる前は、これらの屏風は各寺院の玄関に収められており、法要などの際には実際に間仕切りとして用いられていた。それらの屏風を見ると、金地に鮮やかな色彩で描かれた屏風の華やかさ、格調高さは、さぞ空間を荘厳なものにしたであろうと想像される。一方の水墨画では、枯れた風情がしみじみとした趣を醸し出し、心を鎮め、悠久の時を感じさせる。

また本展では、初公開となる作品が(Ⅰ期、Ⅱ期合わせて)8件展示される。江戸時代、東山天皇は、生後間もなくして亡くなった娘(光明定院)の菩提を弔うため御殿を慈照院に寄進した。その時の床の間脇の袋棚を飾っていたと伝えられているのが、この写真の小襖で、今回初公開となる。御殿自体は天明の大火(1788年)によって焼失したため、東山天皇ゆかりの遺構を偲ばせる貴重な作品だ。
鑑戒画、文学世界、人々の営み―屏風の多彩な画題
続く第2章「人々の営みを描く屏風」では、文学世界、中国・日本の故事、風俗などを描いた作品を紹介し、屏風の多彩な世界を展観する。

たとえば、《花下遊楽図屏風》は、桃山期から近世初期にかけてさかんに制作された遊楽図の1つで、市井の人々が花見に興じる様子が画面いっぱいに表されている。宴に興じる者、往来を歩く者など、約120人の人々の姿が生き生きと描き出されており、その喧騒が聞こえてきそうな臨場感に溢れている。

一方で、『伊勢物語』や『源氏物語』など文学作品の有名な場面を題材とした作品では、金地の背景に王朝文化の典雅な世界が広がり、中国の皇帝の故事から為政者の戒めとして描かれた《帝鑑図屏風》では、画面に厳粛な雰囲気が満ちている。
雪村、応挙、若冲ら人気絵師の作品が集結
最後の第3章「自然を描く屏風」では、山水画や花鳥画など、自然を描いた作品を紹介する。この章では特に中世・近世を代表する絵師たちの作品が集結しており、絵師たちの競演も見どころだ。相国寺に縁の深い絵師・伊藤若冲の《群鶏蔬菜図押絵貼屏風》では若冲の代名詞といえる鶏たちが、水墨の自由闊達な筆で描かれており、長閑な光景とリズミカルな描写が相まって見ているだけで心が弾む。

一方、「写生画」を大成した巨匠・円山応挙の山水画は、まるで現前にあるかのように、ダイナミックな景色が広がる。こうした山水画では、大画面で、ジグザグで立体感が出るという屏風の特性を活かし、近景と遠景のバランス、モチーフの配置など様々な工夫が施されており、江戸時代のバーチャルリアリティーといえるだろう。


美術館を代表する若冲の障壁画の中にも…
さて、相国寺承天閣美術館では常設展示として、伊藤若冲が手掛けた鹿苑寺大書院障壁画のうち、一之間の《葡萄小禽図》、三之間の《月夜芭蕉図》が展示されている。鹿苑寺障壁画は、一之間から四之間までの全50面を若冲が一手に引き受けているだが、実はその中で、一之間と四之間の袋棚小襖は、若冲とは別の絵師が手掛けている。

向かって左側の違い棚の上の4面の小襖が、住吉如慶による。各面に1図(樵夫吹笛図、竹雀図、双雀図、旅僧図)が描かれている。
小襖を手掛けたのは住吉如慶、若冲より約1世紀前に活躍した絵師だ。小さな画面の中に、犬や花、鳥などの花鳥画のほか、人物画もある。相国寺と言えば若冲のイメージも強いため、一之間の展示はつい若冲の《葡萄小禽図》にばかりに目が行きがちだが、この小襖にもお見逃しなく。

障壁画の常設展示の隣の展示空間には、鹿苑寺大書院の四之間の小襖も展示されている。《四之間小襖》は初公開。
2026年1月から第Ⅱ期の展示がスタート
本展は、2026年1月11日より第Ⅱ期がスタートした(~3月8日)。展示作品も大幅に変わるため、Ⅰ期をご覧になった人も、ぜひもう一度足を運んでいただきたい。

Ⅱ期では、初公開となる狩野義信《扇面貼交屏風》(林光院蔵)をはじめ、桃山期に活躍した絵師・長谷川等伯、狩野永徳の弟である狩野宗秀、江戸時代中期に活躍し「四条派」の祖となった呉春などの作品が展示される。Ⅰ期からまたガラリと雰囲気が変わり、屏風の表現の多様さを感じられるだろう。

空間の中で圧倒的な存在感を放ち、ひとたび開けば観る人の心を一気に絵画世界へと誘う屏風。これまで相国寺を飾ってきた数々の屏風は、時に華麗に、時にしみじみとした情趣を湛え、寺を訪れた人の心を潤したことだろう。新年を迎え、清々しい気持ちとなるこの時期に、ぜひ相国寺に伝わる多彩な屏風の世界を感じてほしい。

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- 相国寺承天閣美術館|The Jotenkaku Museum
602-0898 京都府京都市上京区今出川通烏丸東入
開館時間:10:00〜17:00(最終入館時間 16:30)
休館日:会期中無休