FEATURE

ミラノサローネから読み解く
世界のデザイン首都ミラノ

第62回ミラノサローネ国際家具見本市にみる、ミラノが世界のデザインの中心地である理由

アートコラム

トリエンナーレ・ミラノで開催された「サローネサテリテの世界(Universo Satellite. 25 anni di SaloneSatellite)」展の展示風景。サローネサテリテから羽ばたいたデザイナーによるスケッチやプロトタイプ、製品は、25年に渡るデザインの歴史を物語る。
© Saverio Lombardi Vallauri / Salone del Mobile.Milano
トリエンナーレ・ミラノで開催された「サローネサテリテの世界(Universo Satellite. 25 anni di SaloneSatellite)」展の展示風景。
サローネサテリテから羽ばたいたデザイナーによるスケッチやプロトタイプ、製品は、25年に渡るデザインの歴史を物語る。
© Saverio Lombardi Vallauri / Salone del Mobile.Milano

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構成・文 藤野淑恵

世界のデザイン・インテリア関係者を惹きつける、ミラノサローネ国際家具見本市(正式名:Salone del Mobile.Milano 、以下:ミラノサローネ)。ミラノがデザインの中心地として知られるきっかけとなった世界最大級のデザイン見本市はミラノの魅力を高めるだけでなく、イタリアの国家プロジェクトとしてのデザインの重要性を物語っている。

新進デザイナー登竜門、サローネサテリテの25年周年 トリエンナーレ・ミラノでは展覧会も開催

この記事を読んでくださっているあなたが、現在の「世界のアートの中心地・発信地」として思い起こす都市はどこだろう。

アートアジェンダの読者であれば、印象派も誕生した芸術の都、パリ? 著名美術館やメガギャラリーが林立し、注目のオークションが開催されるニューヨークやロンドン? それとも2年に一度の世界最高峰のアートの祭典が今まさに開催中のヴェネチア? 或いは世界のトップコレクターがアートフェアに集うバーゼル?―――世界のアートの中心地・発信地として想起される都市は様々かもしれないが、ことデザインにおいて「世界の中心地・発信地」はどこかと問われれば、ミラノをあげる人が多数を占めるのではないだろうか。

第62回ミラノサローネで開催された6つの見本市のひとつ、「サローネ国際インテリア小物見本市」に出展されたメンフィス・ミラノの展示作品〈ベル・エア、ピーター・シャイア〉1982年。1980年代のミラノで、エットレ・ソットサスを中心に活動を展開したメンフィス・グループの鮮やかな色彩や遊び心のある芸術的で自由なデザインが注目された。©Ramona Balaban / Living Inside Courtesy Salone del Mobile.Milano
第62回ミラノサローネで開催された6つの見本市のひとつ、「サローネ国際インテリア小物見本市」に出展されたメンフィス・ミラノの展示作品〈ベル・エア、ピーター・シャイア〉1982年。1980年代のミラノで、エットレ・ソットサスを中心に活動を展開したメンフィス・グループの鮮やかな色彩や遊び心のある芸術的で自由なデザインが注目された。
©Ramona Balaban / Living Inside Courtesy Salone del Mobile.Milano

ミラノサローネとは? ミラノデザインウィーク とは?

ミラノと聞いたアート愛好家がまず思い描くのは、世界遺産にも登録されたレオナルド・ダ・ヴィンチの《最後の晩餐》だろうか。パリ、ニューヨーク、ロンドンと並ぶ世界の4大ファッションコレクションが開催され、プラダ、アルマーニなどのラグジュアリー・ブランドを擁するファッションの拠点でもあるが、ファッション同様に、或いはそれ以上にミラノが世界をリードしているといえるのが、建築、プロダクトデザイン、インテリアデザインだ。ミラノを訪れた旅行者は街のシンボルであるドゥオーモやガレリアの歴史的な建築の美しさに感嘆する一方で、コンテンンポラリーな高層タワーやサステナビリティに配慮した建物が続々と誕生していることに驚く。そして、ミラノが世界のデザイン首都であることを何よりも印象付けるのは、毎年春に開催されるミラノサローネ、そして市街地で開催される様々な展示と合わせて総称されるミラノ・デザインウィークの存在だ。

ミラノの新たなランドマークであるガエ アウレンティ広場にはミラノサローネの2024年のテーマである「Where Design Evolves(デザインが進化する場所)」のボディコピーが大きく掲げられていた。再開発の進むポルタ・ヌオーヴァ地区にはイタリアでは最も高い建物であるユニクレジットタワーや、木々が建物のファサードに植えられた「垂直の森」(写真左手奥)などのビルが林立する。
Courtesy Salone del Mobile.Milano
ミラノの新たなランドマークであるガエ アウレンティ広場にはミラノサローネの2024年のテーマである「Where Design Evolves(デザインが進化する場所)」のボディコピーが大きく掲げられていた。再開発の進むポルタ・ヌオーヴァ地区にはイタリアでは最も高い建物であるユニクレジットタワーや、木々が建物のファサードに植えられた「垂直の森」(写真左手奥)などのビルが林立する。
Courtesy Salone del Mobile.Milano

ミラノサローネとは、毎年4月中旬に開催されるミラノサローネ国際家具見本市(正式名:Salone del Mobile Milano)の通称。1961年、イタリア家具工業連盟の主催によりイタリアの家具産業の振興を目的に国内の家具メーカーが集結して見本市を開催したことからスタートした。67年からは海外の出展社も招き入れ、74年にはサローネ国際キッチン見本市「エウロクチーナ」が、76年にはサローネ国際照明見本市「エウロルーチェ」がスタート。90年代に入ると、世界的なインテリアデザインの最前線を示す場としての地位を確立した。98年には35歳以下のデザイナーを対象としたプロトタイプ展示「サローネサテリテ 」をスタート。2000年代、国際的な規模をさらに拡大し続けて動員数の更新を続けていたが、2020年の世界的なパンデミックでは一時中止を余儀なくされる。2021年に規模を縮小した特別展「スーパーサローネ(Supersalone)」を開催し、オンライン展示と物理的な展示を融合させて成功に導いた立役者が現在の代表であるマリア・ポッロ。パンデミック終息後は、サステナビリティやウェルビーイングがより重要なテーマとなり、ホームオフィス家具の需要や空間の健康志向への関心も上昇している。

ミラノサローネの期間中にミラノ市街で開催されるフォーリサローネでは、インテリアだけではなくファッション、アート、フードなど幅広い分野のデザインイベントが開催され、祝祭ムードに包まれる。写真は開催地区のひとつであるブレラ地区。(筆者撮影)
ミラノサローネの期間中にミラノ市街で開催されるフォーリサローネでは、インテリアだけではなくファッション、アート、フードなど幅広い分野のデザインイベントが開催され、祝祭ムードに包まれる。写真は開催地区のひとつであるブレラ地区。(筆者撮影)

サローネと同時期にミラノ市街地で開催される、500に及ぶデザイン展(「サローネの外の」という意味でフォーリサローネと呼ばれる)を総称して、近年はミラノ・デザイン・ウィークと呼ばれている。フォーリサローネはインテリアにとどまらず、ファッション、時計、宝飾などのラグジュアリーブランドから、自動車、家電など多岐にわたるジャンルの展示会がおよそ1週間にわたって開催される。アルマーニ、エルメス、サンローラン、ロエベなどのハイエンドブランドやSONYやレクサスといった日本ブランドも数多く出展し、この期間、ミラノ市内は国内や欧州はもとより世界各国から集まったデザイン関係者や愛好家でホテルも満室、道路も大渋滞だ。入場者が関係者に限られたクローズドなファッション・ウィークと異なり、旅行者を含む一般の市民に大きく門戸が開かれているデザインウィークは、街をあげてクリエイティブで華やかな祝祭気分に包まれる。

ボルゴヌオーヴォにある歴史ある本社パラッツォ・オルシーニで発表されたアルマーニ / カーザの新作コレクション。
ボルゴヌオーヴォにある歴史ある本社パラッツォ・オルシーニで発表されたアルマーニ / カーザの新作コレクション。"ECHOES FROM THE WORLD (世界からの響き)” をテーマに、家具やインテリア小物に加えジョルジオ アルマーニ プリヴェ コレクションの象徴的なスタイリングも合わせて展示された。(筆者撮影)
ジオ・ポンティ アーカイブスおよびアナラ&アルマンド・プランチャート財団と共に「ジオ・ポンティ:プランチャート邸」展を開催したのはサンローラン リヴ・ドロワ。会場はベルゴニョーネのフレスコ画「聖母マリアの戴冠」で有名なミラノで2番目に古い教会、サン・シンプリチャーノ教会。(筆者撮影)
ジオ・ポンティ アーカイブスおよびアナラ&アルマンド・プランチャート財団と共に「ジオ・ポンティ:プランチャート邸」展を開催したのはサンローラン リヴ・ドロワ。会場はベルゴニョーネのフレスコ画「聖母マリアの戴冠」で有名なミラノで2番目に古い教会、サン・シンプリチャーノ教会。(筆者撮影)

展示面積も来場者数も世界のトップレベル。 2024年は37万人が来場

2024年4月16日から21日までの6日間に渡って開催された第62回 ミラノサローネ国際家具見本市の来場者数は37万824人(うち国外からの来場者は53.9%)。ミラノ郊外のロー市にある会場「フィエラ・ミラノ」の約17万5千㎡という展示面積は東京ドーム3つ分よりも広い。パリのルーブル美術館の展示面積の6万1千㎡、ニューヨークのメトロポリタン美術館の総面積の13万㎡を例にあげれば、どれほどミラノサローネの展示会場が広大なものか理解できるだろう。そこにインテリア企業を中心に世界35カ国から1,950(サローネサテリテの個人出展、新規と復帰ブランド185を含む)が出展。毎年のテーマに沿って趣向を凝らしたカルチャー・プログラムも同時開催されている。

第62回 ミラノサローネ国際家具見本市のエントランス風景。会場はミラノ郊外のロー市にあるフィエラ・ミラノ。
Courtesy Salone del Mobile.Milano
第62回 ミラノサローネ国際家具見本市のエントランス風景。会場はミラノ郊外のロー市にあるフィエラ・ミラノ。
Courtesy Salone del Mobile.Milano
近年、充実したカルチャープログラムを用意しているミラノサローネ。2024年最も話題となった「デヴィッド・リンチのインテリア : A Thinking Room (考える部屋)」の会場風景。ミラノ・ピッコロ劇場の舞台美術家たちとの共同プロジェクトの設計デザインはロンバルディーニ 22 が出掛けた。@Lombardini22 Courtesy Salone del Mobile.Milano
近年、充実したカルチャープログラムを用意しているミラノサローネ。2024年最も話題となった「デヴィッド・リンチのインテリア : A Thinking Room (考える部屋)」の会場風景。ミラノ・ピッコロ劇場の舞台美術家たちとの共同プロジェクトの設計デザインはロンバルディーニ 22 が出掛けた。@Lombardini22 Courtesy Salone del Mobile.Milano

毎年6月にスイスのバーゼルで開催される世界のアート界にとって最も重要なアートフェアと言われるアートバーゼルの、2024年の会期中約1週間の来場者数は9万1千人。世界40の国と地域から285のギャラリーによるプレゼンテーションが開催され、注目に値する販売で終了した。アートバーゼルとは異なり、ミラノサローネの会場での出展作品は販売されない。あくまで出展企業と世界中の販売代理店や卸売業者が商談を行うことが目的の見本市で、もちろんサローネの評価は一年のビジネスの成功に繋がる重要な要素。VIPプレビューデイ以外はチケットさえ購入すれば誰でも入場できるアートフェアと異なり、開幕から数日は関係者やプロフェッショナル、ジャーナリスト(2024年は約5552人が来場)などに入場が限られているミラノサローネだが、週末にはインテリアやデザイン愛好家、学生などに広く一般開放されている(2024年の来場者は約3万6千人)。

隔年開催されるキッチンの見本市「エウロクチーナ」より、デンマークのブランドVippの新作キッチン「V3」。Vippはブランド名を冠したふた付ペダル式ゴミ箱で知られるが、デザイン性と機能性を兼ね備えたキッチンは、部品の製造から塗装、組立てに至るまで熟練した職人による全工程が手作業で行われている。製造はすべてデンマーク。
©Monica Spezia / Living Inside Courtesy Salone del Mobile.Milano
隔年開催されるキッチンの見本市「エウロクチーナ」より、デンマークのブランドVippの新作キッチン「V3」。Vippはブランド名を冠したふた付ペダル式ゴミ箱で知られるが、デザイン性と機能性を兼ね備えたキッチンは、部品の製造から塗装、組立てに至るまで熟練した職人による全工程が手作業で行われている。製造はすべてデンマーク。
©Monica Spezia / Living Inside Courtesy Salone del Mobile.Milano

ミラノサローネで存在感の高い見本市のひとつが、今年が隔年開催年であった「エウロクチーナ」だ。「作る」「食べる」のみでなく「楽しむ」「くつろぐ」「分かち合う」というようにキッチンの居住空間における重要性の高まりを反映して、2024年も各社からデザインによるさまざまなソリューションが提案された。巨大なブースで最新のテクノロジーを駆使した世界的なキッチンメーカーがオーディエンスの注目を集める一方で、有機的なフォルムや自然素材を取り入れたミニマルで静けさにフォーカスしたデザイン傾向や手作業を駆使した工芸的なプロダクツも多く見られた。特設会場では、アーティスト、デザイナーやシェフとともに、自然が与えてくれる食材の現在と未来をテーマにしたプレゼンテーションやパフォーマンス、味覚体験などをテーマにしたプロジェクトが開催され、来場者に新たな視点が提示された。

「6つのパフォーマンスでフードデザインの全てを知る(All You Have Ever Wanted to Know About Food Design in Six Performances )」より。ザ・キッチンのパビリオンを会場に、6つのフードマガジンと世界中のアーティスト、デザイナー、シェフの協働による、食材の現在と未来についての独創的なビジョンが提示された。
Courtesy Salone del Mobile.Milano
「6つのパフォーマンスでフードデザインの全てを知る(All You Have Ever Wanted to Know About Food Design in Six Performances )」より。ザ・キッチンのパビリオンを会場に、6つのフードマガジンと世界中のアーティスト、デザイナー、シェフの協働による、食材の現在と未来についての独創的なビジョンが提示された。
Courtesy Salone del Mobile.Milano

ニューヨーク、香港、上海 。ミラノサローネの創造力を世界に発信する

2024年は四半世紀にわたってデザインの世界の新たな才能を発掘しインキュベーション装置の役割を果たしてきた「サローネサテリテ」の祝賀ムードに沸いた。創設者でキュレーターのマルヴァ・グリフィン・ウィルシャーはその功績により6月に世界で最も有名な芸術・デザイン機関のひとつであるロードアイランド・スクール・オブ・デザインより名誉博士号を授与された。35歳以下の才能あるデザイナーが集結するサローネサテリテでこれまでに選出されたデザイナーは14,000人にものぼり、創設時から現在にいたるまで各国のデザインスクールや大学を招いている。佐藤オオキや田村奈穂など世界の第一線で活躍する日本人デザイナーも数多く輩出してきた。

13 回目を迎えるサローネサテリテ・アワード2024 の受賞者、審査員たち。中央のグリーンのジャケットの女性がサローネサテリテの創設者・キュレーターのマルヴァ・グリフィン・ウィルシャー
13 回目を迎えるサローネサテリテ・アワード2024 の受賞者、審査員たち。中央のグリーンのジャケットの女性がサローネサテリテの創設者・キュレーターのマルヴァ・グリフィン・ウィルシャー

MoMAの建築・デザイン部門のシニアキュレーター、パオラ・アントネッリや建築家のミケーレ・デ・ルッキら11名の審査により選ばれた2024年のサローネサテリテ最優秀賞は、ジェン・ビアン率いる中国のスタジオOLOLOOによる照明「Deformation Under Pressure(圧力による変形)」。職人技とともに、空圧で膨張したポリ塩化ビニールと張力のあるアルミニウム構造を組み合わせたランプのアイデアという実験的なアプローチが評価された。ちなみに、昨年2023年は日本のデザインコレクティブ「HONOKA」のいぐさを再利用したプロダクト「TATAMI ReFAB PROJECT」が最優秀賞を受賞している。

サローネサテリテの会場。25周年を迎えた2024年の参加数600 人。厳正な審査を経て選出された若手デザイナーと国際的なデザイン学校の新卒者が出展した。
Courtesy Salone del Mobile.Milano
サローネサテリテの会場。25周年を迎えた2024年の参加数600 人。厳正な審査を経て選出された若手デザイナーと国際的なデザイン学校の新卒者が出展した。
Courtesy Salone del Mobile.Milano

デザインにおけるミラノサローネの推進力と創造性を伝えるイベントは、近年はミラノの街にとどまらず世界各地で開催されている。今後、上海、香港へと続く国際的な3つのイベントの第一弾として、2024年9月にはニューヨークで、23のイタリアブランドによるインスタレーション「イタリアのデザイン:クラシックからコンテンポラリーまで」を開催。代表のマリア・ポッロはニューヨークを「ミラノサローネがイタリアのデザイン企業を含むすべての出展者の高いクオリティ、豊かな伝統、明確なビジョン、デザインへの情熱を高めるイベントであることを紹介するために、世界中を巡る新たな旅の最初の停留所」と語る。高い品質を誇るイタリア製品とデザインの世界的なシンボルであるミラノサローネ、そしてミラノデザインの存在感は、今後寄港地を増やすたびに高まるだろう。

ミラノ・デザインウィーク中にトリエンナーレ・ミラノで開幕した展覧会、「わたしはドラゴン アレッサンドロ・メンディーニの実話」は、2019年に逝去したイタリアデザイン界の巨匠、アレッサンドロ メンディーニの大規模な回顧展。カルティエ現代美術財団と共同制作により400点を超える作品が展示されている。2024年10月13日まで(筆者撮影)
ミラノ・デザインウィーク中にトリエンナーレ・ミラノで開幕した展覧会、「わたしはドラゴン アレッサンドロ・メンディーニの実話」は、2019年に逝去したイタリアデザイン界の巨匠、アレッサンドロ メンディーニの大規模な回顧展。カルティエ現代美術財団と共同制作により400点を超える作品が展示されている。2024年10月13日まで(筆者撮影)
2024年4月12日〜14日まで、ミラノ市内の展示会場アリアンツ・ミコで開催されたアートフェア、ミアートMIART 2024。近現代アートを扱う国際的なギャラリーが参加するが、デザインギャラリーも多数参加し、アーティスティックな視点からデザインされた照明や家具、「コレクタブル・デザイン」と呼ばれる限定生産のデザイン作品も出品されている。(筆者撮影)
2024年4月12日〜14日まで、ミラノ市内の展示会場アリアンツ・ミコで開催されたアートフェア、ミアートMIART 2024。近現代アートを扱う国際的なギャラリーが参加するが、デザインギャラリーも多数参加し、アーティスティックな視点からデザインされた照明や家具、「コレクタブル・デザイン」と呼ばれる限定生産のデザイン作品も出品されている。(筆者撮影)

イタリア経済の主要な推進力としての ミラノサローネとイタリアデザイン

ミラノデザインウィークの前週にはイタリアを代表する近現代アートフェアのひとつであるミアート(MIART)を中心に市内の美術館や文化施設での特別プレビューや豊富なプログラムが用意されたミラノ・アートウィークが開催され、アートフェアからデザインフェアへの連携も図られている。28カ国から181のギャラリーが出展した2024年のミアートは近現代の美術作品とともに限定版のデザイン作品が出展されることも大きな特徴で、ミラノの主要デザインギャラリーも出展している。ミラノで開催されるアートフェアらしく、出展作品だけでなく各ブースに配された椅子やテーブルなどのコーディネートも個性的で目を楽しませてくれる。

ミラノスカラ座で開催されたミラノサローネの開幕イベントにて。写真左から ジョルジオ・アルマーニ、ミラノサローネ代表のマリア・ポッロ、ミラノ市長ジュゼッペ・サラ
© Ruggiero Scardigno Courtesy Salone del Mobile.Milano
ミラノスカラ座で開催されたミラノサローネの開幕イベントにて。写真左から 
ジョルジオ・アルマーニ、ミラノサローネ代表のマリア・ポッロ、ミラノ市長ジュゼッペ・サラ
© Ruggiero Scardigno Courtesy Salone del Mobile.Milano
中央にレオナルド・ダ・ヴィンチの銅像がそびえるスカラ座広場は、向かいにミラノスカラ座、背後にヴィットリオ・エマヌエーレ2世のギャレリアの入口につながるミラノのランドマーク。毎年ミラノサローネの開催期間に設置される「Salone del Mobile」の文字をデザインしたサイトスペシフィックな展示風景。(筆者撮影)
中央にレオナルド・ダ・ヴィンチの銅像がそびえるスカラ座広場は、向かいにミラノスカラ座、背後にヴィットリオ・エマヌエーレ2世のギャレリアの入口につながるミラノのランドマーク。毎年ミラノサローネの開催期間に設置される「Salone del Mobile」の文字をデザインしたサイトスペシフィックな展示風景。(筆者撮影)

メローニ首相をはじめとする政府・機関関係者がミラノサローネの開会式に来場することも、イタリア経済の主要な推進力のひとつに位置付けられるサローネの存在価値の高さと国家プロジェクトとしてのデザインの重要性を物語る。ミラノの守護神・聖アンブロシウスの日である12月7日に開幕するミラノの芸術・文化のアイデンティティの象徴であるミラノ・スカラ座では近年、ミラノサローネの開幕を祝う記念公演が開催されている。〈最後の晩餐〉を擁する世界遺産、サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会など街のランドマークでも関連イベントが催されるミラノサローネの存在感と創造性、そして祝祭的な様相を帯びるデザインウィークの街の熱狂は、ミラノという都市をあげて、さらにはイタリアという国をあげて、ミラノが世界のデザイン首都であることを高らかに宣言しているかのようだ。(敬称略)

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