FEATURE

2013年に世界文化遺産となった富士山周辺を巡る
静岡の旅で、創造の源泉にふれてみたい

古来より、日本人にとって、信仰の対象であり、文化・芸術の源泉であり、
人々にインスピレーションを与え続けてきた富士山をのぞみながら巡る

アートコラム

「富士山 - 信仰の対象と芸術の源泉」を後世に守り伝えていくための拠点施設 富士山世界遺産センター
「富士山 - 信仰の対象と芸術の源泉」を後世に守り伝えていくための拠点施設 富士山世界遺産センター

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新緑が美しいこれからの季節、温かな日差しに誘われて旅に出るなら、世界文化遺産の富士山を堪能する旅はいかがだろうか。

真っ白な雪を頂いた雄大な富士山の姿は、古来より人々にインスピレーションを与え続け、日本最古の歌集『万葉集』や『竹取物語』などの古典から、松尾芭蕉らの俳句、太宰治や夏目漱石などの文学作品でも取り上げられてきた。

《秋景富士三保清見寺図》 狩野常信 元禄12(1699)年頃
《秋景富士三保清見寺図》 狩野常信 元禄12(1699)年頃

もちろん富士山は絵画においても、葛飾北斎の『冨嶽三十六景』や歌川広重の『東海道五拾三次』といった浮世絵作品で繰り返し描かれてきたモチーフで、その影響はモネやゴッホといった海外の芸術家へも及ぶ。

富士山を描いた現存最古の絵は、平安時代のものといわれている。古来より、数多の芸術家の創造力を刺激する源泉となってきた富士山を眺めながら、その周辺を旅して、富士山にまつわる芸術が生まれてきた過程に思いを馳せたり、富士山を見つめた人々の足取りを想像してみたりするのもおもしろい。

富士山をのぞみながら巡った、「富士山世界遺産センター」「クレマチスの丘」「三保松原」「三保松原文化創造センター みほしるべ」「久能山東照宮」「久能山東照宮博物館」についてご紹介する。

※富士山を描いた現存する最古の絵は、秦致貞(はたのちてい)による、《聖徳太子絵伝 第三面 (平安時代後期)》(東京国立博物館所蔵)といわれている。

「逆さ富士」を富士ヒノキの木格子で逆円錐形に組み上げた静岡県富士山世界遺産センター。世界的に著名な建築家 坂茂が手掛けた「富士山」を知るための拠点施設

静岡県富士山世界遺産センター 坂茂(ばんしげる)による建築設計
静岡県富士山世界遺産センター 坂茂(ばんしげる)による建築設計

富士山をさまざまなアプローチで知ることができる「静岡県富士山世界遺産センター」は、2016年にユネスコの世界文化遺産に登録された、「富士山 - 信仰の対象と芸術の源泉」を後世に守り伝えていくための拠点施設だ。

静岡県富士山世界遺産センターの設計は、フランスの美術館ポンピドゥー・センター・メスや大分県立美術館などの建築、紙管と布を用いた災害時の避難所用簡易間仕切りの設営などで知られ、2014年には建築界のノーベル賞とも称されるプリツカー賞を受賞した、建築家の坂茂(ばんしげる)によるものである。

富士ヒノキの木格子を組み上げた逆円錐形の展示棟は「逆さ富士」がモチーフ。晴れた日には、センター前に湧水を引き込んでつくった水盤に映る「富士山」の姿がくっきりと見え、隣に建つ赤い鳥居とともに鮮烈な印象を与える。

※文化庁によると「富士山」について、「一国の文化の基層を成す『名山』として世界的に著名であり、日本の最高峰を誇る秀麗な成層火山であるのみならず、信仰の対象と芸術の源泉として、また、文学の諸活動に関連する文化的景観として世界的な意義を持つことから、顕著な普遍的価値を持つと評価されました。」と、世界文化遺産に認定された理由を説明している。

ハイビジョンスクリーンで、四季の富士登山を疑似体験できる展示ゾーン
ハイビジョンスクリーンで、四季の富士登山を疑似体験できる展示ゾーン

展示棟はらせん状のスロープになっており、6つの展示ゾーンを上に向かって歩く構造で、富士山信仰、芸術作品における富士山、高山帯から駿河湾までの生態系などの解説を聞くことができる。

壁面に投影された富士山の映像を見ながら全長193メートルのスロープを上ると、静岡県の特色である海からの富士登山を疑似体験できる。

静岡県富士山世界遺産センター 最上階の展望ホール
静岡県富士山世界遺産センター 最上階の展望ホール

そして、最上階の展望ホールでは、本物の富士山とご対面。視界を遮るものがない状態で、その雄姿を心ゆくまで楽しめる。

尚、本センターでは、4月27日(土)から5月26日(日)まで、「春季特別展 徳川将軍と富士山」と題した展示が開催される。

春季特別展 徳川将軍と富士山
春季特別展 徳川将軍と富士山 開催期間:4月27日(土)~5月26日(日)

「徳川の平和」のもと江戸文化は成熟を極め、富士山は徳川将軍の象徴となって、江戸文化の中核に位置付けられていった。

そんななか、富士山は絵画のジャンルとして確立され、江戸時代後期には、葛飾北斎や谷文晁、酒井抱一らによって、富士山絵画の傑作群が生み出されていく。

富士山中真景全図 谷文晁
《富士山中真景全図》 谷文晁(たにぶんちょう 1763-1841)

本展では、未曾有の平和と繁栄をもたらした歴代徳川将軍の事績をたどりながら、徳川将軍と富士山の関係をひもといていく。富士山を身近に感じながらの鑑賞は、想像力をかきたてられるにちがいない。

参考URL:
静岡県富士山世界遺産センター
「春季特別展 徳川将軍と富士山」4月27日(土)~5月26日(日)



四季折々の表情を見せる美しい庭園と美術館や文学館などのある「クレマチスの丘」。富士山麓、三島市に近い長泉町の豊かな自然のなかでアートと触れ合う時間を心地よく過ごせる、とっておきの場所をご紹介。

クレマチスの丘
クレマチスの丘 伊豆の山並み、駿河湾を望む見晴らしのよい庭園

クレマチスの丘は、ヴァンジ彫刻庭園美術館ベルナール・ビュフェ美術館IZU PHOTO MUSEUM(改修工事のため一時休館中)の3つの美術館と井上靖文学館、レストランやカフェ、庭園などからなるアート・スポット。

クレマチスの丘
クレマチスの丘(クレマチスガーデン)

アートだけでなく、手入れの行き届いた庭園には、約250種2000株ものクレマチスが植栽され、季節ごとに訪れる人々の目を楽しませてくれる。太陽の光と風を感じながら、美しい庭園でアートをじっくりと堪能できる。

クレマチスの丘は、大きく2つのエリアに分かれており、「ベルナール・ビュフェ美術館」を中心としたビュフェ・エリアと、庭園・美術館・レストラン・ショップが複合するクレマチスガーデン・エリアから成る。イタリアンや和食のレストランほか、カフェやお洒落なミュージアムショップなどさまざまな施設があり小さな街のようである。近隣には、自然公園、吊り橋もあって、自然を楽しみながら、アートに触れられるクレマチスの丘は、休日をゆったりと満喫できるお薦めの場所である。

ヴァンジ彫刻庭園美術館 ジュリアーノ・ヴァンジ 《壁をよじ登る男》
ヴァンジ彫刻庭園美術館 ジュリアーノ・ヴァンジ 《壁をよじ登る男》

ヴァンジ彫刻庭園美術館は、イタリアの現代具象彫刻家 ジュリアーノ・ヴァンジ(1931年 トスカーナ州フィレンツェ近郊生まれ)の世界で唯一の個人美術館として2002年4月に開館。1960年代から最近までのヴァンジの彫刻を常設コレクションとし、それらが展示棟と庭園にゆったりと配置されている。それぞれの作品をどこに置くかは、ヴァンジ自身が決めたという。

ヴァンジ彫刻庭園美術館 展示室
ヴァンジ彫刻庭園美術館 展示室

ブロンズや大理石でできた人物像は、人間の多面性を表すように、見る角度によってさまざまに表情を変える。

ヴァンジは語る。
「石は何億年という月日をかけて石となります。私はそういう石の力強さが好きなのです。ミケランジェロは石の中にモーゼがいると言いました。石の中に眠っている何かをはやく自由にしてあげたい気持で私は石を彫ります。石の仕事には時間がかかります。どこまでも勇気を持って作品に取り組まなくてはなりません」(ヴァンジ彫刻庭園美術館発行『いろいろな人と出会える美術館』、2002年)

ジュリアーノ・ヴァンジ
ジュリアーノ・ヴァンジ

この言葉から、そして作品から、ヨーロッパならではの歴史の堆積への敬意と、自然と対峙する強い意志といったものを感じずにはいられない。ヴァンジが石の中の「何を」自由にしたかったのかを考えながらそれぞれの作品に向き合うと、おもしろい発見がありそうだ。

ベルナール・ビュフェ美術館
ベルナール・ビュフェ美術館

クレマチスの丘では、4月20日(土)から9月29日(日)まで、ミッフィーで知られるディック・ブルーナの2つの展覧会「美術館に行こう! ディック・ブルーナに学ぶモダン・アートの楽しみ方」(ベルナール・ビュフェ美術館)「ミッフィーのたのしいお花畑 ディック・ブルーナが描くお花と絵本の世界展」(ヴァンジ彫刻庭園美術館)が開催される。

ミッフィーのファンはもちろん、子供と大人が一緒に参加できるイベントも多数開催される予定なので、家族で参加してアートの楽しみ方や身近な自然を味わう方法を学んでみたい。

美術館・展覧会情報サイト アートアジェンダ 展覧会情報
「美術館に行こう!ディック・ブルーナに学ぶモダン・アートの楽しみ方」
開催美術館:ベルナール・ビュフェ美術館
開催期間:2019年4月20日(土)〜2019年9月29日(日)
美術館・展覧会情報サイト アートアジェンダ 展覧会情報
「ミッフィーのたのしいお花畑 ディック・ブルーナが描くお花と絵本の世界展」
開催美術館:ヴァンジ彫刻庭園美術館
開催期間:2019年4月20日(土)~2019年9月29日(日)
参考URL:クレマチスの丘


日本人になじみ深い富士山のイメージの原点「三保松原」。約7キロの海岸線に3万本余の松並木が連なる名勝地であり、2016年には「富士山世界文化遺産構成資産」として登録された。

2016年に富士山世界文化遺産構成資産に登録された「三保松原」
2016年に富士山世界文化遺産構成資産に登録された「三保松原」 静岡市提供

三保松原(みほのまつばら)は、富士山頂から南西に約45キロの駿河湾をのぞむ、静岡市清水区に位置する。

約7キロの海岸線沿いに3万本余もの松並木が連なり、さらに海岸から松林の背景に富士山を仰ぎ見ることのできる景観は、唯一無二の名勝である。2016年に「富士山-信仰の対象と芸術の源泉」の構成資産として世界文化遺産に登録された。

松林の中央付近にある「羽衣の松」は、天女と地元の漁師の出会いを描いた「羽衣伝説」の舞台として知られ、現在の松は3代目。樹齢は200年ほどになるという。

天女と地元の漁師の出会いを描いた「羽衣伝説」の舞台である「羽衣の松」。現在の松は3代目。樹齢200年ほど
天女と地元の漁師の出会いを描いた「羽衣伝説」の舞台である「羽衣の松」。現在の松は3代目。樹齢200年ほど

15~16世紀以降、三保松原を手前に配した構図が富士山画の典型となり、日本人にとってなじみ深い富士山のイメージとして定着した。松林の緑、打ち寄せる白波、海の青さと真っ白な雪を頂いた富士山が織りなす風光明媚な景色は、数々の絵画や和歌に表現されてきた。

歌川広重《駿河三保之松原》(冨士三十六景)、狩野山雪 《富士三保松原図屏風》、伝雪舟筆《富士三保清見寺図》、伝能阿弥《三保松原図》(重要文化財)、狩野永岳《富士三保松原図》、近代では、木村武山《羽衣》、横山華山《天橋立富士三保松原図》など、錚々たる画家らが、三保松原や羽衣伝説を主題に選び、多くの重要な作品を今に残している。

松林の中を歩いてみると、松の形には一つとして同じものはなく、そのくねくねと四方八方に枝を伸ばす姿には強い生命力が感じられ、見飽きることがない。

三保松原の松は江戸時代には歴代の徳川将軍によって庇護を受けていたものの、その後、売却を目的に伐採されるなどして危機に瀕した時期もあったという。松林が美しい姿を今に残しているのは、幼松を植えるなどして地元の人々が続けてきた努力の賜物なのだ。

松林を抜けて浜に向かい、波打ちぎわまで歩いていくと、左手に富士山が現れる。海岸線に沿ってどこまでも続く松林、打ち寄せる白波、松林の背景に雄大にそびえ立つ富士山、まるで描かれることを待っているような、奇跡的ともいえる絶景である。

潮風に吹かれながら、この景色を眺めていると、何百年も前にやはりこの地に立って同じ風景に心奪われたであろう絵師たちの感慨が伝わってくるようだ。

静岡市三保松原文化創造センター 展示室
静岡市三保松原文化創造センター 展示室

三保松原と芸術作品や日本人の美意識・感性の関わりについて知りたいなら、静岡市三保松原文化創造センターに立ち寄っておきたい。

本センターは名勝および世界文化遺産構成資産としての三保松原の価値や魅力、松原保全の大切さを伝え、後世に継承することを目的に2019年3月30日に開館したばかり。

三保松原と富士山信仰、羽衣伝説、絵画や手工芸品・日用品に描かれた三保松原といったテーマについて、ビジュアルを多用したわかりやすい展示で学ぶことができる。

尚、本センターでは、3月30日(土)から5月6日(月)まで「澤田祐一展〜松にふれて〜」が開催される。澤田祐一は静岡県出身の版画家で、20代半ばに三保松原と出会って以来30年以上、松をテーマにした版画シリーズ「松にふれて」を制作してきた。今回、センターの開館に合わせ、同シリーズの中から国内外のコンクールで受賞した初期から最新作までの代表作15点が館内に特別展示される。

参考URL:
三保松原文化創造センター「みほしるべ」
「澤田祐一展〜松にふれて〜」3月30日(土)~5月6日(月)


全国の東照宮の原型となった「久能山東照宮」。精緻で優美な細工が随所に施された極彩色の御社殿に、当時の職人の熱意と技、そして家康の威光の大きさを感じずにはいられない。

久能山東照宮
久能山東照宮

眼下に駿河湾をのぞむ、216メートルの高台に造営された久能山東照宮。久能山はかつて観音信仰の聖地であったという。

御社殿は、権現造(ごんげんづくり)と呼ばれる複合社殿
御社殿は、権現造(ごんげんづくり)と呼ばれる複合社殿

久能山東照宮は徳川家康を祀る霊廟として、二代将軍の秀忠によって1617年に創建された。御社殿の建築様式は、家康を祀る本殿と参拝をするための拝殿を床の低い「石の間」でつないだ「権現造(ごんげんづくり)」と呼ばれる複合社殿で、その後、全国に数多く創建されることになる家康を祀る東照宮の原型となった。

大工棟梁は、二条城、伏見城、江戸城、駿府城の城郭や、知恩院、増上寺などを手がけ、家康にその手腕を高く評価されていた、中井正清(なかいまさきよ)。

わずか1年7か月という短期間で造営された権現造、総漆塗、極彩色の御社殿は日光東照宮より19年も前に造られたという。彫刻、模様、組物などに桃山時代の技法も導入した江戸初期の代表的な建造物として、2010年に静岡県唯一の国宝に指定されている。

黒と朱色をベースに、青、緑、金などで鮮やかに彩色された久能山東照宮の御社殿
黒と朱色をベースに、青、緑、金などで鮮やかに彩色された久能山東照宮の御社殿
(※こちらの御社殿は、正式拝観を申込んだ方のみ上がることができます。)

御社殿は、黒と朱色をベースに、青、緑、金などで鮮やかに彩色されており、要所に彫刻を施し、錺金具(かざりかなぐ)などを用いた精緻で優美な細工には目を奪われる。華やさと同時に厳粛な装飾の配分が絶妙で、このように豪奢な建造物が2年もかけずに完成されたことに、当時の職人の熱意と技、そして家康の威光の大きさを感じずにはいられない。

興味深いのは、御社殿内部に、徳川家康、豊臣秀吉、織田信長が一緒に祀られていること。東照宮は全国に数多く存在するが、この3人を一緒に祀っているのは、ここ久能山東照宮だけという。

久能山東照宮に奉納された宝物を中心に2000点以上を収蔵する「久能山東照宮博物館」。家康が愛用した品々や、徳川歴代将軍の刀剣・刀装、甲冑などの武具が充実

徳川家康所用「金溜塗具足(きんためぬりぐそく)」(室町時代16世紀)
徳川家康所用「金溜塗具足(きんためぬりぐそく)」(室町時代16世紀) ※注1

最後に久能山東照宮博物館を訪れる。こちらは久能山東照宮に奉納された宝物を中心に2000点以上を収蔵しており、中でも家康が晩年愛用していた品々や、徳川歴代将軍の刀剣・刀装、甲冑を中心とした武具などが充実している。

2階の第2展示室では、甲冑を中心とした歴代将軍の武具、書画が展示されている。こちらの甲冑は、徳川家康所用の「金溜塗具足(きんためぬりぐそく)」(室町時代16世紀)で、重要文化財に指定されている。当時実際に家康が身に付け、合戦に使われていた可能性が高いそうである。

家康の三男、秀忠所用の「茶絲威具足(ちゃいとおどしぐそく)」、秀忠の次男、家光など、歴代将軍所用の武器武具などが展示
家康の三男、秀忠所用の「茶絲威具足」、秀忠の次男、家光など、歴代将軍所用の武器武具などが展示 ※注2

また、家康の三男、秀忠所要の「茶絲威具足(ちゃいとおどしぐそく)」、秀忠の次男、家光など、歴代将軍所用の武器武具などの貴重な展示が見られる。

1階の第1展示室には、徳川家康が晩年愛用していた品々の他、歴代将軍が遷宮や将軍就任の際に久能山東照宮へ奉納した刀剣・刀装が展示されている。

徳川家康の愛用品、歴代将軍が遷宮や将軍就任の際に久能山東照宮へ奉納した刀剣・刀装が展示
徳川家康の愛用品、歴代将軍が遷宮や将軍就任の際に久能山東照宮へ奉納した刀剣・刀装が展示 ※注3

その中でもひときわ印象的なのは、1611年に海難救助の謝礼としてスペイン国王フェリペ3世より家康に贈られたという洋時計(重要文化財)だ。

現存するゼンマイ式の時打付時計としては日本で最古のものだそうである。技術の粋を集めて作られた洋時計を、家康は気に入って部屋に飾っていたが、実は当時のスペインと日本は暦法が異なっていたため、時計としては使用されなかったという。

1611年に海難救助の謝礼としてスペイン国王フェリペ3世より家康に贈られたという洋時計(重要文化財)
1611年に海難救助の謝礼としてスペイン国王フェリペ3世より家康に贈られたという洋時計(重要文化財) ※注4

透かし彫りが施されたドーム状の屋根が美しい金色のこの小さな時計は、400年も前に遠く異国の地、スペインとのあたたかな交流があったことを今に伝える。家康はこの時計を日々どんな気持ちで眺めていたであろうか?

現在、この洋時計の前に設置されたボタンを押すと、時を打つ音色を聴くことができる。家康も聴いたであろう美しき音色に耳を傾けて、家康の生きた時代に思いを馳せてみたい。

※注1~注4(撮影について)
通常、博物館内では撮影禁止です。今回の取材のため、特別に撮影許可を得て撮影しております。


参考URL:
久能山東照宮
久能山東照宮博物館 「刀剣特別展示」4月1日(月)~4月30日(火)


「富士山」の魅力とは?心の原風景を辿る旅に出かけてみませんか?

富士山
富士山

雄大な富士山を眺めながら、富士山の南側、駿河湾沿いに静岡市から三島市方面を周った今回の旅、あらためて、富士山がいかに人々に深く愛されてきたかを感じる旅となった。

古来より富士の山は、日本人にとって信仰の対象であり、文化・芸術の源泉であり続けた。和歌や俳句などの歌に詠まれ、浮世絵や日本画などに描かれ、能や演劇などの物語の舞台となってきた富士山。

現在、海外からも多くの観光客が訪れるようになった富士山の魅力を再発見しに、この春、富士山にゆかりのある場所をめぐる旅に出かけてみてはいかがだろうか。

※参照情報:
静岡デスティネーションキャンペーン


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