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展覧会レポート

世界中から勢ぞろいの愛おしい面々が、あなたの心をわしづかみ!仮面や神像たちは迫力を秘めつつ、どこかユーモラス。1970年大阪万博開催時、岡本太郎が日本の人類学者たちに依頼して集めた世界の民族資料が再び集合。

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1970年に大阪万博が開催されて以来、48年ぶりに内部が公開された「太陽の塔」が話題になっている。

しかし、「太陽の塔」の内部だけでなく、この時に岡本太郎のプロデュースの元に開催されたテーマ展示のために、世界中から収集された仮面や神像、生活用具が展示されている「太陽の塔からみんぱくへ―70年万博収集資料」も見逃せない。

「太陽の塔」の立つ万博記念公園内にある国立民族学博物館にて、現在開催中である(2018年5月29日まで)。

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開館40周年記念特別展「太陽の塔からみんぱくへ―70年万博収集資料」
開催美術館:国立民族学博物館
開催期間: 2018年3月8日(木)~2018年5月29日(火)

1970年に大阪万博が開催された前年までの1968年から69年にかけて、世界の諸民族の仮面、神像、生活用具や資料の収集が実施された。万博資料として収集されたそれらは、「仮面」「神像」「その他」の3つのカテゴリーに分類され、太陽の塔の下に設けられた展示スペースにて、「根源の世界」というテーマで展示公開されたのである。

岡本太郎は、当時の日本の人類学者たちに世界の民族資料、特に「仮面」と「神像」を集めて欲しいと依頼した。その際に結成された「日本万国博覧会世界民族資料調査収集団」の団員に選ばれたのは、若手の教員、大学院生、海外渡行を経験したことのあるジャーナリストや技術者で、47の国や地域から2500点あまりの民族資料が収集された。

さて、いったいどんな仮面や神像なのだろうか。

太陽の塔からみんぱくへ―70年万博収集資料 国立民族学博物館
画像左から、ケニアの木彫りの像、 マレーシアの「神像」、ニューギニア(現パプアニューギニア)の「祖先像」

こちらは、左から、ケニアの木彫りの像、マレーシアの「神像」、ニューギニア(現パプアニューギニア)の「祖先像」である。

歯をむき出しにしながら、こちらを見ている。ケニアの木彫りの像は、口や鼻、目や耳の位置や形がデフォルメされていて奇怪な姿だ。いずれも台座に乗っていたり、男根を思わせるような造形、インパクトの強い表情など共通した型のようなものがありながら、それぞれ全く異なる表現である。

太陽の塔からみんぱくへ―70年万博収集資料 国立民族学博物館
世界各地の仮面 約200点が集合(写真左上から時計回りに、インドとネパール、韓国、アフリカ、日本の仮面)

世界各地の仮面約200点が勢ぞろいした特別展示館2階の仮面コーナーは特に見応えがある。上の画像は、左上から時計回りにインドとネパール、韓国、アフリカ、そして日本の仮面である。仮面は、古来から、自然発生的に諸地域で誕生したようである。儀式や神事、祭礼、演劇などの芸能、舞踏などに用いられるものとして、人や動物、神や霊的なもの、鬼や悪魔などが表され、「仮面」という文化を通じて、千差万別の多様な色や形を見せている。

太陽の塔からみんぱくへ―70年万博収集資料 国立民族学博物館
<画像左> 韓国の獅子舞(右)と怪獣ヨンノのかぶりもの(左) <画像右> 僧の仮面

左の画像は、韓国の獅子舞(右)と怪獣ヨンノのかぶりもの(左)である。右側の赤い顔に突起物がたくさんある仮面の画像は、僧を表した仮面のようである。朝鮮半島には、仮面劇に用いられた仮面が各地にみられた。韓国では、仮面に神が宿ると考えられて、つけた者は別人格として芸能に興じることになる。時にわざわいのもとにもなることから、劇が終わり本来の目的を果たしたら、仮面は焼却されるのが原則とされていたという。

太陽の塔からみんぱくへ―70年万博収集資料 国立民族学博物館
台湾(パイワン族) 頭飾り

こちらは、台湾のパイワン族の頭飾りである。動物の歯が用いられているようだが、花冠のような色形の綺麗さである。

太陽の塔からみんぱくへ―70年万博収集資料 国立民族学博物館
コートジボワール(セヌフォ族) 頭上飾

こちらは、西アフリカのコートジボワール、セヌフォ族の頭上飾。頭の上に載せるらしい!重そうだが美しい。「ボロ結社の最高の階級にすすんだものは、超人間的な存在からの教えを受け、その教えを象徴的に表したこの飾りをつける。」といった解説が添えられていた。

太陽の塔からみんぱくへ―70年万博収集資料 国立民族学博物館
コートジボワール(民族 グリ) 仮面

こちらも、コートジボワールから、グリという民族のユーモラスな仮面。左の仮面の右耳の上あたりに位置には、トカゲが貼りついている。右の仮面は、動物らしき耳がある。不思議な造形だが、まん丸の目がいずれも愛らしい。

太陽の塔からみんぱくへ―70年万博収集資料 国立民族学博物館

こちらは中部アフリカ、コンゴの仮面。恋人同士か夫婦だろうか。四角く飛び出した分厚い唇やピンクの頬、少し目を伏せた恥じらいの表情にも見える、ペアの仮面にきゅんとしてしまう。

太陽の塔からみんぱくへ―70年万博収集資料 国立民族学博物館
タンザニア南部からモザンビーク北部、バントゥー系の農耕民族 マコンデの木彫

アフリカ南東部、モザンビークの北部からタンザニア南部にかけてひろがる高原に住むバントゥー系の農耕民マコンデによる彫刻品である。大胆でユニークなデフォルメと精巧な掘りで知られ、今日では、アフリカを代表する民族芸術として世界的に知られている。

「彫刻のモチーフや様式は、植民地宗主国、キリスト教の布教活動、植民地からの解放戦線、観光客等、時代の変遷のなかで様々な“他者のまなざし”との邂逅を経て変化していった。」(展示の解説より)

太陽の塔からみんぱくへ―70年万博収集資料 国立民族学博物館

これらは、中米メキシコのセリという民族の木彫である。右にも画像のある木彫は、女性像である。画像手前は、ウミガメ。木目も模様や表面の色艶も美しい、芸術性を感じられる彫刻である。

太陽の塔からみんぱくへ―70年万博収集資料 国立民族学博物館
ホピ族(アメリカ・インディアン)のカチーナ神像や木彫人形

これらは、アメリカ南西部文化圏のホピ族(アメリカ・インディアン)の、カチーナ神像や木彫人形である。「カチーナ」は、ホピ族が信仰する精霊である。幾何学的な文様や彩色が独特な造形で、日本のサブカルチャーの魅力にも通じるような個性的な世界観が感じられる。

太陽の塔からみんぱくへ―70年万博収集資料 国立民族学博物館
ニューギニア(現在のパプアニューギニア)の祖先像や仮面

これらは、ニューギニア(現在のパプアニューギニア)のセピックアートと呼ばれる、セピック河流域の村落部で作られている祖先像(右3体。一番左は仮面)である。

太陽の塔からみんぱくへ―70年万博収集資料 国立民族学博物館
約120点の彫像が集合したコーナー 写真はアフリカコーナー(画像中央 エチオピア、画像右中央 ケニア)

よくぞ、大集合してくれた!大変楽しい展覧会である。

世界中から集合した仮面や神像は、想像を超えた多様さにあふれていた。一体どんな人たちが、どんな時代や暮らしの中でこれらを生み出したのだろうか、と鑑賞者は思いを馳せるに違いない。

気候や風土、言葉や宗教も異なる諸地域において、それぞれに生きてきた人々や集団・社会が作り出してきた「仮面」や「神像」が一堂に集められ、比較しながら見る機会を得て、その多様さの中に、通底するものがあるように思えた。

あらゆる時代も人類は、よりよく生きようと知恵を絞り、ときに様々な苦難と戦い、乗り越えたり、挫折も味わいながら、それぞれの生や暮らしを謳歌しつつ、人生を全うしようとしてきたであろう。

その中で、自然への畏怖や恵みへの感謝の念、祖先を敬う気持ちや神への祈りなどを込めながら、各地の民族の美意識により、迫力ある表情やユーモラスな造形を持つ仮面や神像が生まれ、祈りの歌、演劇や舞踊などの芸能が生まれた。

例え、わたしたちが現代の都市に生きて、科学や技術がどれほど進歩しても、わたしたちに恵みをもたらしてくれる自然と人間との距離は、古来より何も変わってはいないのではないか。自然がもたらす脅威との距離も同様であるように。仮面や神像を作り出した人間の「心」は、過ぎ去った過去にあるものではなく、人類の営みが始まってから、そのまま今につながっているのである。

世界の諸地域での生活の中で創造された「仮面」や「神像」には、そこに込められた思い、祈り、願いが宿っている。そのひとつひとつに思いを馳せようとすれば、時空を超えて、それらを手掛けた人々の心に触れられ、そこにあるぬくもりを感じられるような気がしてくる。

人類の歩みの証のような、「仮面」や「神像」などの造形物が一堂に介したこの貴重な機会に、ぜひとも足を運んでみていただきたい。

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開館40周年記念特別展「太陽の塔からみんぱくへ―70年万博収集資料」
開催美術館:国立民族学博物館
開催期間: 2018年3月8日(木)~2018年5月29日(火)

参考:国立民族学博物館 WEBサイト

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