「命の限りに生きてやる」
安藤忠雄の“挑戦”、これまでの軌跡と未来への展望。
「安藤忠雄展 ―挑戦―」が国立新美術館にて、2017年9月27日(水)より開催
トピックス
1941年に大阪で生まれた安藤忠雄は、元プロボクサー、独学で建築を学んだ異色の経歴で知られる。既成概念を打ち破るような斬新な建築作品を次々と世に送り出すと、活躍の舞台を世界に広げ、アジア・ヨーロッパ・アメリカなど各国で意欲的な作品を実現させた。
その一方で、建築という枠組みを超えた、環境再生や震災復興といった社会活動にも果敢に撮り組み、今後においても更なる活動を計画している。
こちらは、安藤忠雄が手掛けた最初期の作品であり代表作ともなっている、大阪市住吉区にある「住吉の長屋」(1976年)である。狭い路地に面した三軒長屋の真ん中に位置する、間口2間、奥行き7間の14坪ほどの一軒のみを切り取り、コンクリートの家に建て替えた。狭小住宅でありながら、建物の中心3分の1を中庭とし、部屋を移動する際には、一度室外に出て、2階の寝室から手すりの無い階段を降りて、リビングや洗面所のある部屋に移動する。そのため雨の日には傘が必要、という日常生活を送ることとなる住宅であり、当時の建築業界に多くの議論を巻き起こした。
安藤忠雄は「住吉の長屋」で、自然の光や風を肌で感じながら暮らせる日常を建築設計したのである。安藤忠雄氏自身、幼少期から45歳まで暮らした祖父母の家が、「住吉の長屋」とほぼ同じ間取りであった。「夏も冬も腹立たしい家であった」と自伝で語っている。自らの幼少期からの暮らしの中で、肌身で感じてきた体験や思いが「住まい」に対する思想となって建築設計に表れた小宇宙が、「住吉の長屋」だったのかもしれない。
安藤忠雄にとって、人間の「住まう」という最も根源的な営みを受け止める住宅こそが、建築の“原点”であるという。2017年9月27日より開催される展覧会の一つ目のセクションでは、「原点/住まい」と題して、初期の代表作から近年の圧倒的スケールの海外作品まで100を超える住宅作品のハイライトが一挙に公開される。
- 美術館・展覧会情報サイト アートアジェンダ 展覧会情報
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国立新美術館開館10周年 安藤忠雄展 ―挑戦―
開催美術館:国立新美術館
開催期間:2017年9月27日(水)~2017年12月18日(月)
2017年4月12日、国立新美術館で、今秋から始まる安藤忠雄氏の大規模な個展「安藤忠雄展 ―挑戦―」の開催に先立ち、記者会見が開催された。
登壇した安藤忠雄氏の口から飛び出したのは、「自由と勇気」「絶望から始まった」「命の限り生きてやる」「建築は生命力があるものだ」「日本の政府には、文化の力を愛を持ってサポートしてほしい」・・・ そんなエネルギッシュで含蓄のある言葉の数々。
自らのこれまでの人生を語りながら、展覧会のタイトル「挑戦」に込められた想いや、安藤忠雄氏が建築のテーマとする、周辺環境と一体化させ、その場所の個性を際立たせるような建築としての「直島プロジェクト」、建築という枠組みを超えた社会活動への取り組みなどが紹介された。
9月27日からの展覧会では、そんな希代の建築家がいかに生きて、いかに創り、今またどこに向かおうとしているのか―その壮大な挑戦の軌跡と未来への展望が、「原点/住まい」「光」「余白の空間」「場所を読む」「あるものを生かしてないものをつくる」「育てる」という6つのセクションに分けて紹介される。
模型やスケッチ、ドローイングなど、総計200点余りの設計資料が展示される空間デザインは、安藤忠雄自身の手によるものである。建築家が歩んできた道程を追体験することのできる空間で、建築という文化の豊かさと、その無限の可能性に触れたい。
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国立新美術館開館10周年 安藤忠雄展 ―挑戦―
開催美術館:国立新美術館
開催期間:2017年9月27日(水)~2017年12月18日(月)