4.0
人物としての織田有楽斎の再評価
織田有楽斎は戦国時代でも武人ではなく、文化人、外交官、一種のネゴシエーターの役割を果たしていたのかなと思います。
毀誉褒貶の分かれる中でも、本能寺の変の混乱の最中に織田信忠を見捨てて逃げ出したことに否定的な意見が多いですが、今回の展覧会では多角的、立体的に織田有楽斎の功績や人間性を評価しようというものでした。書簡や書状が多く展示されていて、有楽斎の交流関係や人柄が見えてくるようでもありました。
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有楽斎こと織田長益は天文16年(1547)に織田信秀の子、織田信長の弟として生まれました。武将として活躍し、晩年には京都・建仁寺の塔頭「正伝院」を再興、隠棲します。
正伝院内に有楽斎が建てた茶室「如庵」は国宝に指定され、現在は愛知県犬山市の有楽苑内にあり、各地に如庵の写しが造られています。正伝院は明治時代に「正伝永源院」と寺名を改め、いまに至るまで有楽斎ゆかりの貴重な文化財を伝えています。
しかし茶人・有楽斎として名高い一方、武士・長益には悲観的なイメージも伴います。天正10年(1582)に起きた本能寺の変では、二条御所に籠る長益の主君・信忠(信長の長男)が自害したにもかかわらず、長益は御所を脱出したことから、京の人々には「逃げた(男)」と揶揄されました。
さらにその後、信雄(信長の次男)に仕え、徳川家康と豊臣秀吉の講和を調整するなど存在感を示したものの、信雄が改易されると今度は秀吉の御伽衆に加わります。関ヶ原の戦いでは東軍として参戦し、戦後も豊臣家に仕えましたが、大坂夏の陣の前には家康の許可を得て主君から離れました。信長、秀吉、家康の三天下人に仕えて時流を乗り切り、晩年を京で過ごした織田有楽斎の心中には、どのような思いがあったのでしょうか。
本展覧会は、2021年に400年遠忌を迎えた織田有楽斎という人物を、いま一度総合的に捉えなおそうと構成したものです。
※会期中展示替えあり
【FEATURE|内覧会レポート】
“逃げた男”と呼ばれた有楽斎の真価を問う
「四百年遠忌記念特別展 大名茶人 織田有楽斎」展
会期 | 2024年1月31日(水)~2024年3月24日(日) |
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会場 | サントリー美術館 Google Map |
住所 | 東京都港区赤坂9-7-4 東京ミッドタウン ガレリア3階 |
時間 |
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休館日 |
火曜日 ※ただし3月19日は20時まで開館 |
観覧料 | 一般 1,600円 大学・高校生 1,000円 中学生以下 無料
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TEL | 03-3479-8600 |
URL | https://www.suntory.co.jp/sma/ |
4.0
織田有楽斎は戦国時代でも武人ではなく、文化人、外交官、一種のネゴシエーターの役割を果たしていたのかなと思います。
毀誉褒貶の分かれる中でも、本能寺の変の混乱の最中に織田信忠を見捨てて逃げ出したことに否定的な意見が多いですが、今回の展覧会では多角的、立体的に織田有楽斎の功績や人間性を評価しようというものでした。書簡や書状が多く展示されていて、有楽斎の交流関係や人柄が見えてくるようでもありました。
残り4日のサントリー美術館「織田有楽斎展」行ってきた。それほどの混雑もなく、じっくり鑑賞できたけれど、週末はどうか。
武野紹鷗作の節のない、まるで象牙の茶杓を竹で制作したような姿に惚れ惚れ。その隣には、驚くほどそっくりな容姿…readmore
4.0
武士としての腕っぷしはそれほど…だったようですが、時には交渉役として間を取り持ち、時には茶人として茶会を開くことで人と人とを繋ぎ、活躍したようです。
手紙のやり取りからは「気配りの人」という印象を受けるし、肖像画や坐像にも、物腰の柔らかそうな雰囲気が漂っている気がします。
豊臣、徳川などいろんな人に重宝されたというのも納得です。
孫の織田長好の遺言状が興味深く、有楽斎から受け継いだ茶道具などの形見分けについて事細かに書かれています(現代語訳のパネルもあります)。
現在では行方知れずのものも多いとのことですが、それでも正伝院に寄進されたものの数々が今回たくさん展示されています。
織田有楽斎。
「逃げた」というよりは「生き抜いた」「時代を渡り歩いた」という方が合っている気がします。
有楽斎の人柄を感じられる展覧会です。
3.0
お茶に関するもの、将たるものに関するものがたくさん見られました
歴史の中にあるものをたどる楽しみがあるなぁ
有楽斎、良かったです
4.0
サントリー美術館の四百年遠忌記念特別展「大名茶人 織田有楽斎」展行かせて頂きました。京都文化博物館からの巡回展になっているそうです。茶道は不案内な私ですし、歴史も、史学科出身ながらこの時代は実は今一なのです。勿論、織田長益が信秀の子、つまり信長の弟にあたることや、本能寺の変の後にはまず信長の次男信雄に仕え、小牧・長久手の戦いの和議を成立させ、信雄改易後は豊臣秀吉に仕え、この頃に剃髪し、有楽と号し、政治的活動はしつつも、茶人としての活躍が目立つようになり、千利休に茶道を学び、利休十哲の一人にも数えられたこと。秀吉没後、大坂冬の陣では大坂方について和議交渉にあたり、これが成立すると京都に隠居し、茶の湯に専念し、趣味に生きたこと。後には自らの武家茶道「有楽流」を創始したこと。また、京都建仁寺の正伝院を再興し、ここに建てた茶室《如庵》(三井記念美術館に如庵一部の再現されたものが常設展示されていますよね。)は現在犬山市に移築され、国宝にも指定されていること。などくらいの、どこででも得られるごく一般的知識しかありませんでした。茶を通じてなのでしょうが、かなり知己は多い様で、それはそのまま政治力にも繋がっていたのかも知れませんが。茶風は武家茶道ながら、何より「客を饗なす」ことを重んじ、格式張らずおおらかでゆったりした手前だったとか。それも人となりが感じられる、などと勝手に思っていました。
今展で、冒頭の展示で、長益が本能寺の変後、「逃げた男」として書物『義残後覚』に悪評が書かれていることを知り、全く知らなかったので、驚きました。当時長益を悪くに言う者は事実居たは居たらしいですが、ただこの本の作者はそもそも織田に批判的な立場の者とされ、全体的に織田家に対しては悪口ばかりで、もしかすればこの記述も事実ではない可能性もあるとか。なるほど…。有楽斎が本能寺の変でどのように生き残ったのか、歴史的な資料は少なく不確かです。でももし単に卑怯な「逃げた男」であったのなら、その後、秀吉時代には武人としてより交渉人調整人としての活躍が多くあり、更にその後も、たとえ茶道があったとしても、有能な大名として生き、武将たちと良好な関係を築くのは困難だったのではないでしょうか。
今展展示は、「織田有楽斎の人物と生き方を知る」を目的にしているようで、茶道具よりも書簡がとに… Read More
4.0
織田信長の弟で茶人という乏しい予備知識で、美術館を訪問。
しかし、入ってすぐ丁寧な年表に始まり、武人・茶人との書簡には、現代語訳付き。
織田・豊臣・徳川に仕えただけあって、名前を聞いたことのある人との書簡もあり、
中身がこれまた面白い!! 昔も今も書く内容は、そんなに変わらないんだな~と。
そして、サントリー美術館に行ったことがある人ならわかると思いますが、階段を下りた先の展示がこれまた素晴らしい!! 全面、狩野山楽。わがまま言うと、座れるタタミを真ん中に置いて欲しかった・・・。そして、しばらく眺めたかった・・・。
「逃げた男」と言われ続けた有楽斎に興味が湧く展覧会でした。
4.0
もの自体を観ると言うより、生き方を観た感じの展覧会でした。
人との関係性、使用された茶道具の傾向、そこから人となりを探るよう。
戦国時代の「逃げた男」ではない有楽斎が漂ってきました。
思ったより器は少なく、書状が多かったのでちょっと不勉強な私は難儀しましたがw。
蓮鷺図襖は階段上から見おろした途端の圧巻でした。
広がる蓮に飛び交う燕が私は鷺より好ましく清々しかった。
余談ですが、サントリー美術館のライティングは本当にいつ来ても素晴らしい。
小品の茶入れすら肌合いがきちんとわかる調整。
金箔の襖図も良い加減で反射を作っていて、魅力倍増です。
3月4日(月)・10時半入館・混雑無し・撮影不可
4.0
「有名な茶人」ということ位で、歴史にも疎く、有楽斎についてよく知らないまま行きました。
「イメージとしては茶道具がいっぱい」だったんですが、行って見たら歴史上の人物・織田有楽斎とはどんな人物だったのか?という視点の展示で、初っ端がお手紙などの書類系、2番目に茶道具、3番目が縁の深い正伝院のお宝という感じ。
歴史上の人物を掘り下げるという展示は興味深く、絵や彫刻・仏像等の「もの」をひたすら愛でる展示だけでなく、こういう文系博物館みたいな展示も面白いなぁ、サン美の学芸員さんの守備範囲って幅広いんですね、と感心。
ふと、去年のベストに入る、たば塩での太田南畝展を思い出しました。
皆様仰る通り、やはり蓮鷺図襖16面!は圧巻です。
「双頭蓮」(吉祥の一本の茎に2つの花がついている)があるそうですが、私は見つけられませんでした・・・。
あと印象に残ったのは茶道具。素人なんで恐れ多いと思いながらも、呼継茶碗(こちらのHPで写真見られます)一つ見ても、何というか一筋縄でいかない感じ。ストレートな美というより、ちょっと曲がった枝の方がいい、みたいな。
いつもなら自分がこう感じた、こう思った、という感じですが、この日は「有楽斎はどこを気にいったんだろう??」という見方になって、にわか歴女になった気分(笑)で楽しく見ました。
今日から後期展示開始ですので、もう一回行こうと思います。
もし私のように「歴史に疎いからなぁ・・・」という方にはエデュケーターによる鑑賞ガイドや学芸員による展示レクチャーをお勧め致します。
(詳しくは公式HPをご覧ください。)
特に今回はめっちゃ役に立ちました!
4.0
あんまりこの人を知らなかったけど、これに行って分かりました。
織田信長の12歳年下の弟だそうです。
あの戦乱の世の中、織田信長の弟にして、生き残ったのはすごいですね。
生きる術だと思います。
5.0
戦乱の世を生き抜いた織田有楽斎がどのように茶の湯の世界を愛したのか、とてもよくわかる展示でしたね。茶室の「如庵」を見てみたくなりました。6階の茶室に行かれる方は10時から木曜日に呈茶券が先着で販売されていますので、お早目にいかれると良いと思います。
4.0
なんだっけな。茶の湯は外交の手段みたいな話を何かで観た覚えがあるんだけど
その成否かはともかく、様々な人物と交わした書状やその内容から
人と人、陣営同士のアレコレをうまくいなし
関係を取り持つことにたけた人だったのだなあと感じる
普段は書状関係はさらっと流して見てしまいがちなのだけど
今回の展示、実は一番興味深く楽しめたのが第二章
「有楽斎の交友関係」のパートだった
一つ残念だったのは裸眼立体視展示
機器が何かバグっていたのか
コントローラーでの操作を受け付けなくなっていたこと
これだけが残念だったなあ
5.0
【後期】
会期終了が近づいたためか、前回よりも混雑してました。
特に絵画や文書は入れ替わりが多く、2回目でも新鮮。
長谷川等伯の水墨の障壁画、しゃっ!と刷毛で一気に描かれたような、岩ののシャープな墨の線と、木々の直線的な枝ぶりが力強く、印象に残りました。
あれ?最近見た気がするけど、記憶違い??と思ったのが、「青貝葦葉達磨香合と朱塗菱型十字花弁盆」。所蔵を見たら泉屋博古館で、先月「うるしとともに」で素敵と思った逸品の一つでした。記憶があっててほっつ(記憶力に自信がない)。
【前期】
信長の親族の中でも生き抜いた人物だけれでも、生き延びてしまったことで潔くないと巷の評価はいまひとつな印象の織田有楽斎。
それに対し、交渉人、文化人としての再評価に、資料をもとに正面から取り組んだ、意欲的な企画でした。
狩野山楽の「蓮鷺図襖」を一望できるコーナーは蓮に囲まれて、別世界にいるようでした。
茶道具も青磁や楽焼のお茶碗、茶杓と充実。
正伝永源院は後で調べたら、公開期間が限定されているお寺さんでした。
お寺さんが空っぽになったのでは?と思うくらいの寺宝を一度に拝見できる貴重な機会でした。
書状が多いのですが、現代語訳もあり、歴史ファンは必見かと。
展示替えもあるので、後期も行く気満々です。
5.0
織田信長の弟さん、
行ってきました♪
蓮鷺図襖 狩野山楽を
みることができて、もう満足です?
花弁の線の柔らかさ、
ボワっと浮かび上がる白
画面が流れていく抑揚、リズム
生命の鼓動が伝わってきます。
風がふき、揺れているかんじ
花弁が今まさに落ちようとする
瞬間
やっぱり、絵は写真より
その場の空気、そのもの自体を
表現できる✨
この作品と一対一になれる時間も
あり、なんて贅沢?
この一瞬のために
来てよかった!
3.0
有楽斎、企画者の気合が感じられる展覧会です。
東博で見た有楽井戸のキャプションを読んで信長の弟なのかぁと初めて知ったくらいの存在でしたが
たくさんの書状や書簡など展示してその幅広い交流関係にも目を配り
従来の有楽斎像を見直して歴史をアップデートする転換期に立ち会うような貴重な機会でした。
寺社がカラッポになっているんじゃないかくらい正伝永源院の寺宝がゴッソリ出品されています。
山楽の襖絵や伝徽宗、後期には長谷川等伯など近世絵画も出ています。
個人的には是非見たかったマスプロの青磁茶碗、永青文庫の呼継、茶入などが良かったです。
ただ中心はやっぱり書状なのでどうしても地味な感じは強いかなぁ。
キャプションや現代語訳も充実していて歴史好きの方も楽しめそうです。
見づらいというほどではありませんがそれなりに観客が入っていました。
3.0
サントリー美術館の展示で、いつも一番期待しているのは階段を降りたところのスペース。天井から長い幕を垂らしているときもあれば、小ぶりなケースを並べているときもある。でもでも、今回はシンプルに壁面のガラスケースのみ。しかも、襖だけの展示!
なんの意図があるのかと近寄って見ると、正伝永源院の一室の三方の襖をそのまま展示したんですね。もっとも、さすがにコの字型の展示は無理だったのでL字型でしたが…。
最初は「鷺が可愛い」「蓮の茎まで描いて高さ出してる」「狩野山楽の特徴ってどんなだった?」なんて思いながら見てたんですが、そのうち襖の幅が気になって気になって、空間が一瞬歪みました(笑)
説明書きと現物を見比べて、ようやく両脇の各4枚が極太、正面中央の4枚が極細、正面脇の各2枚が普通幅だと理解したんですが、一室を構成する襖に幅の違う3種類の襖を使う不思議っぷりにいろいろ惑わされました。
この襖、気になり出すと、足が止まりますよ。
4.0
平日に午後に訪問。ゆっくりと鑑賞。
茶碗や茶杓は穴が開くほど、さまざまな角度から眺めてきました。
きっと怪しい動きをしていたことでしょう。
柔らかな眼差しの有楽斎に会えて、最高でした。
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