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アートコラム|映画

ヒトラーは、なぜ美術品の略奪に執着したのか!?ヒトラーの思想の背景と略奪された美術品がたどった闇の美術史に迫る映画『ヒトラーVS.ピカソ 奪われた名画のゆくえ』が、4月19日(金)より公開

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ヒトラーは芸術との因縁浅からぬ政治家だ。
自身若き日には画家を目指していたし、政権掌握後は映画監督のレニ・リーフェンシュタールと親交を結び、『意志の勝利』(1935年)や『オリンピア』(1938年)といったナチス・ドイツのプロパガンダ映画を撮らせたことはよく知られている。

それに加え、ナチス・ドイツ政権下の1933年から45年にかけて欧州各地で芸術品の略奪にも手を染め、その総数は約60万点。そのうち、ピカソ、ゴッホ、フェルメール、マティス、ムンク、モネの作品を含む約10万点が戦後70年以上経った今でも行方不明と言われている。

本作は、ヒトラーがなぜ美術品の略奪に執着したのか、欧米で活躍する歴史家、美術研究家をはじめ、略奪された美術品の相続人や奪還運動に携わる関係者の証言を元に、ヒトラーの思想の背景と略奪された美術品がたどった闇の美術史に迫っている。

さまざまなエピソードが紹介される中、ヒトラーの芸術観を知るヒントになるのが、ナチス・ドイツが開催した二つの美術展だ。

その一つ「大ドイツ芸術展」はヒトラー自身が企画し、ヒトラーが“正しい芸術”と称賛した作品を展示。写実的でわかりやすい古風な作風が好まれ、農村の風景画や裸体画を含む人物画が多く取り上げられた。人物画は男女共に白人、金髪で、健康的な肉体美を称揚するような描かれ方をしており、そこには「健康で美しい金髪の子供たちをたくさん産んで総統に捧げよ」というメッセージが込められていたという。

もう一つの「退廃芸術展」では、ナチスの美の概念にそぐわないとみなされたキュビズム、シュルレアリスムなどモダン・アートの作品が「退廃芸術」の烙印を押されて“さらし者”として公開された。

ピカソ、ゴッホ、シャガール、カディンスキー、クレーらの作品がネガティブな批評とともに配置も水平も無視した状態で展示されたものの、皮肉なことに連日の大盛況となり、4ヶ月で200万人もの動員を記録したという。モダン・アートに“危険な兆候”を見出し、貶めようとした主催者の意図に反して、当時の人々は新しい芸術表現に魅力を感じていたことがうかがえる。

ヒトラーは芸術が持つ力を理解すると同時に畏怖し、その影響力を自らの政治力を高めるために利用した。ピカソの「壁を飾るために描くのではない。絵は盾にも矛にもなる、戦うための手段だ」という言葉は、目指す方向は逆であっても、ヒトラーにも当てはまる言葉だ。芸術あるいはメディアの政治利用は、今なお新しい問題でもある。本作の膨大なナレーションと証言に耳を傾けながら、芸術と政治の危うい関係について思いをめぐらせてみたい。

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『ヒトラーVS.ピカソ 奪われた名画のゆくえ』
HITLER VERSUS PICASSO AND THE OTHERS
2019年4月19日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館他にて
出演:トニ・セルヴィッロ(『グレート・ビューティー/追憶のローマ』『修道士は沈黙する』)
原案:ディディ・ニョッキ 監督:クラウディオ・ポリ イタリア・フランス・ドイツ合作 97分
字幕監修:中野京子(作家『怖い絵』シリーズ) 日本語字幕:吉川美奈子
配給:クロックワークス、アルバトロス・フィルム

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