「アートコレクターの住まい」がコンセプト
玄人好みの瀟洒なセンスが光る、京都で注目のホテル
node hotel | アート&旅 | HOTEL SELECTION VOL.04
構成・文 小林春日
ゲルハルト・リヒター、杉本博司、ロビン・F・ウィリアムズ、バリー・マッギー、五木田智央、加藤泉、大竹伸朗、キキ・スミスら、世界的に活躍する国内外の現代美術家たちの作品が飾られた客室で、とっておきの宿泊体験を堪能できるのは、京都市の中心部、中京区四条西洞院にある node hotel(ノードホテル)である。
ホテルの建築から、設置された家具、客室のしつらえ、ベッドリネンなどのファブリックやルームウェア、アメニティーなどの細部に至るまで、センスの良さが際立つこのホテルは、今から3年前の2019年7月に開業した。2019年といえば、コロナ禍に突入していく年として、世界が記憶に刻んだ年である。しかし、node hotelは、そのコロナ禍の間にも、ホテル激戦区である京都市内において、静かに評判を呼び続けてきた。
このホテルの持つ、洗練された個性的な魅力はどのように形作られてきたのだろうか?現在、ホテルの運営スタッフは、20~40代の約20名ほどの若手の従業員が中心となっており、気取りのない、明るく活気ある接客の雰囲気も好感度が高い。
2019年に「アートコレクターの住まい」をコンセプトに、同ホテルを開業まで導いたのは、京都で不動産事業を手掛ける node hotel 代表の新井成憲のほか、建築家の竹内誠一郎、アートディレクションおよび家具や内装などのデザイン・プロデュースを担当する村瀬正、榎本大輔(Indian Creek Fete)、ホテル全体のプロデュースを担当する金尾彰典(CANVAS)ら5名のプロジェクトメンバーである。
node hotel の建築を手掛けたのは、安藤忠雄建築研究所に10年ほど所属したのち、独立して2016年に竹内誠一郎建築研究所を設立した、竹内誠一郎である。「内外装の材料は自然素材をシンプルに使い、過剰な演出を抑えて『無為』を心掛け、来館者、家具、アートに対しては背景に徹し、都市に対しては端正に構え、歴史ある街に佇む都市建築のプロトタイプを目指した。」という。その言葉の通り、強く印象に残る魅力を放ちながらも、ホテル全体の空間は、歴史ある京都の街に馴染み、自然体で来館者をさりげなく包み込むような居心地の良さがある。
グレーを基調とした落ち着いたトーンの全客室のほか、廊下、ラウンジには、今をときめく現代アーティストの魅力的な作品の数々が飾られている。これらの作品は、主にアートコレクター榎本大輔の選定によるものである。また、家具やアメニティー、カトラリーなどのプロデュースは、村瀬正(Indian Creek Fete)によるもので、特に家具は海外の現地職人によって、木材はじめ大理石やアイアンなどひとつひとつ素材の質感にこだわって、同ホテルのためにオリジナルで製作されたものである。
客室は、4フロアー、全25部屋。11m² のシングルタイプから、50m² 超のジュニアスイートまで6タイプある部屋は、全室異なったアート作品が飾られている。室内に階段があり秘密基地のようなくつろぎ感のあるステアダブルや、集中力が高まりそうな落ち着きある作りのシングルルームはワーケーションにも最適である。
そして1階には、宿泊利用がなくともふらっと立ち寄れるカフェダイニング・バー「node(ノード)」がある。ビーフハンバーグやローストビーフなど人気の定番メニューもあるが、ぜひお薦めしたいのが、コース料理(Aコース4,800円、Bコース5,800円)である。前菜の盛り合わせ(Aコースは3種、Bコースは5種)から、本日の一品、パスタ、肉 or 魚料理、デザートとコーヒー・紅茶までのフルコースは、京野菜をメインに旬の食材をふんだんに使ったこだわりの料理で、見た目にも華やぎがあり、満足度が高い。ナチュラルワインなどアルコール類が充実しているのも嬉しい。
宿泊の方には、ぜひ外さないでほしいのが、朝食メニューである。“farm to table”をコンセプトにした地元京都の食材が彩り豊かにテーブルを飾る。コールドプレスジュースに新鮮な野菜のサラダ、サーモンや自家製ハムにオムレツにヨーグルト、数種類のフルーツなど、朝から見た目にも体にも心地よい。
※レストランメニューやコース料理の金額は、取材時のものとなり、変更になる場合があります。詳細はホテルまでご確認ください。
1Fパブリックスペースでは、アートイベントなどの企画やアート作品の展示が行われている。現在は、東京都現代美術館で開催中の「ジャン・プルーヴェ展 椅子から建築まで」にちなんで、フランスの建築家・デザイナーであるジャン・プルーヴェ(Jean Prouvé, 1901–1984)のヴィンテージ家具や資料を、2022年7月17日から10月16日まで展示している。
世界中にコレクターが存在するジャン・プルーヴェのオリジナルヴィンテージ家具の中には、オークションで数千万円の値段がつくものもあるという。近年評価が高まっているジャン・プルーヴェ作品の展示初日には、ロサンゼルスを拠点に活躍するアートディレクターであり、ジャン・プルーヴェ作品のコレクターでもある八木保氏を招いたトークイベントも実施している。
古都の面影を色濃く残し、世界中の観光客を魅了し続ける京都の街は、アートとの親和性も高い。古き良き街並みに、node hotel のような現代建築が馴染み、現代アートが映えるように、芸術的感性や創造性を柔軟に受け入れる包容力がある。だからこそ、今年10回目の開催となった「KYOTOGRAPHIE(京都国際写真祭)」や、今秋12回目を迎える舞台芸術のフェスティバル「KYOTO EXPERIMENT(京都国際舞台芸術祭)」が毎年継続し、人気を保ち続けている。そして、2021年には、現代アートに特化したアートフェア「Art Collaboration Kyoto(ACK)」がスタートしている。
node hotelでは、それらのアートフェアやアートフェスとコラボレーションを行うこともあり、連携や同時開催の展示なども折々に楽しめる。宿泊は通常料金の20~30%オフになることもあるので、そういったタイミングでの宿泊もお薦めだ。
アート好きな方には、ぜひ、アートコレクターのような気分で、上質な時間を過ごせる node hotel でのひとときを味わってみてほしい。
- アート&旅 | HOTEL SELECTION VOL.04
- node hotel(ノードホテル)
ADDRESS 604-8225 京都市中京区四条西洞院上ル 蟷螂山町 461
TEL 075-221-8800