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アート&旅

日本三名園のひとつ偕楽園のある水戸から、関東で最も古い焼き物の産地として知られる笠間まで、美術館巡りとともに満喫【前編】

アート好きの心を満たす旅 Vol.01 / 水戸・笠間編(茨城県)
千波湖 左に見える緑青の屋根の建物は、茨城県近代美術館
(左上)水戸芸術館、(右上)千波湖越しの茨城県近代美術館、(左下)水戸プラザホテル、(右下)偕楽園の紅白の梅の木

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水戸徳川家ゆかりの庭園と湖を抱く美しい街・水戸。まずは水戸駅からスタートして、時空を超えたアート散策に出かけよう。

水戸徳川家ゆかりの庭園と湖を抱く美しい街・水戸。まずは水戸駅からスタートして、時空を超えたアート散策に出かけよう。

アート好きの心を満たす旅 Vol.01 / 水戸・笠間編(茨城県)【前編】

早春の訪れを告げる梅、春の盛りは桜、初夏にはつつじ、秋は風情溢れる萩の花。金沢の兼六園・岡山の後楽園とともに日本三名園のひとつに数えられる偕楽園で知られる茨城県水戸市。水戸市にあるアートスポットの中からは、茨城県近代美術館水戸芸術館 現代美術ギャラリーを取り上げつつ、水戸の街を巡りたい。次回は、水戸に続いて笠間を巡る。「水戸&笠間編(後編)」もお楽しみに。

千波湖 左に見える緑青の屋根の建物は、茨城県近代美術館
千波湖 左に見える緑青の屋根の建物は、茨城県近代美術館

旅の開始は、水戸駅から。例えば東京駅からだと電車で1時間半ほど、車で1時間半~2時間ほどで辿り着く。都会の喧騒から離れつつ、日常とは違った美しい自然に抱かれた景観も、水戸ならではの様々なアートスポットも楽しめる。日帰りまたは1泊2日で、気分転換をしてまたあらたな日常へのエネルギーをチャージできる旅先としておすすめしたい。

建築家 吉村順三設計の伝統とモダニズムの融合した美空間、茨城県近代美術館で内外の優れた近代美術を堪能する

茨城県近代美術館 外観
茨城県近代美術館 外観

千波湖の東に位置する茨城県近代美術館は、JR水戸駅南口から徒歩15分ほど。駅を背にして、駅南中央通りを5分ほどまっすぐ進み、橋を越えたら右折して、桜川沿いを経由して向かえば、心地よい散歩道だ。水戸のシンボル徳川光圀公(水戸黄門)像がある千波公園(湖畔の西側)からも徒歩20分の位置にある。開館は1988年(昭和63年)。千波湖の水と緑の景観に溶け込む緑青色の銅板葺きの屋根と茶系の自然石からなる外壁の建物の設計は、日本の伝統とモダニズムの融合を図った建築家 吉村順三によるもの。エントランスをくぐると、高さを低く抑えられた外観に反して、吹き抜けの大ホールの開放感が印象的だ。

茨城県近代美術館 内観(ホール)
茨城県近代美術館 内観(ホール)

日本画の巨匠 横山大観は、ここ茨城県水戸出身である。その他、木村武山、小川芋銭(うせん)、中村彝(つね)など茨城ゆかりの作家の作品、さらにモネ、ルノワール、ロダン、など西洋の近代美術を中心に、国内外の優れた作品約4000点を収蔵する同館は、ロダンの大作「三つの影」などの彫刻作品が展示された大ホールを中心に、2階に企画展示室、1階に所蔵作品を展示する常設展示室を備え、一年を通して創意に富んだ展覧会を開催している。美術作品を映像などにより鑑賞できるアートフォーラムコーナーやミュージアムショップもあり、湖の眺望が楽しめる レストラン「プティ・ポワル」も人気の高いスポットだ。

水戸出身の洋画家・中村彝(つね)の復元されたアトリエ
水戸出身の洋画家・中村彝(つね)の復元されたアトリエ

同館の敷地内には、水戸出身の洋画家・中村彝(つね)の東京都新宿区下落合にあったアトリエが復元されている。赤い切り妻屋根の小さなアトリエでは、豊かな才能に恵まれながらも早逝した洋画家の遺品や資料を公開。レンブラントやルノワール、セザンヌなど、西洋の画家たちの作風を学んだ中村彝が生前に使用していた椅子やソファー、テーブル、イーゼル等の遺品、デスマスクなどが展示され、同館制作のビデオ「夭折の画家 中村彝」他の上映も行っている。茨城県近代美術館には、中村彝の作品が29点所蔵されている。

 中村彝「静物」 大正8年(1919年) 油彩、板 茨城県近代美術館蔵
中村彝「静物」 大正8年(1919年) 油彩、板 茨城県近代美術館蔵

茨城県近代美術館では、「名作は、いかにして名作になったのか――」をテーマに、横山大観や菱田春草、中村彝など茨城県近代美術館の中でも特に重要な収蔵作品を中心に、素材や技法、構図などに着目し、作家が作品をどのように構想して完成へと導いたのか、制作の裏側を探る展覧会が、現在開催中である。

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「名作のつくりかた」
開催美術館:茨城県近代美術館
開催期間:2020年7月11日(土)~2020年9月22日(火・祝)

この後は、たっぷり堪能した美術館をあとにして、千波湖の遊歩道に沿って散歩を楽しみつつ、あるいは車窓から千波湖畔の景観を楽しみつつ、偕楽園へと向かおう。

偕楽園、千波湖で四季折々の自然が織りなす美を楽しむ

四季折々に豊かな表情を見せる偕楽園
四季折々に豊かな表情を見せる偕楽園

偕楽園を擁する茨城県水戸市は、自然に抱かれた街だ。1842年(天保13年)、水戸藩第9代藩主 徳川斉昭(とくがわなりあき)により造られた偕楽園の名は、「古の人は民と偕(とも)に楽しむ、故に能(よ)く楽しむなり」という中国の古典『孟子』の一節から名づけられたという。偕楽園の盛りは何といっても早春。2月下旬、「水戸の梅まつり」が始まる季節ともなれば、園内に植えられた約100種3,000本の梅のつぼみがほころび始め、あたり一面を早春の爽やかな香りで満たす。梅の花が散った後も、春には桜、つつじ、初夏には恒例の梅の実落とし、秋には萩祭り、初冬に咲く可憐な二季咲桜と、一年を通して楽しむことができる。

この街の中心に位置する千波湖は、周囲約3kmの桜並木の遊歩道で囲われ、白鳥や黒鳥を始めさまざまな野鳥が生息する。千波湖を含む周辺一帯は、偕楽園、常磐神社、千波公園などからなる都市公園を形成しており、ニューヨークのセントラルパークに次ぐ世界第2位の広さを誇るという。風光明媚な景色を楽しみながらのジョギングやボート遊び、サイクリング、釣り、カフェでの食事など千波湖の楽しみは多々ある。

弘道館は水戸の誇り。江戸時代最大級の藩校の遺構が残る日本遺産

弘道館の正庁(せいちょう)と桜
弘道館の正庁(せいちょう)と桜

偕楽園とともに、水戸を訪れたら外すことができない場所が弘道館だ。徳川斉昭によって偕楽園とほぼ同時期に創建された弘道館は、儒学、歴史、天文、数学、医学などの学問、そして剣術、柔術、兵学、鉄砲といった武芸まで、文武両道の広大なスケールを持つ江戸時代最大級の藩校。明治維新にも影響を与えた水戸学の礎を築いた場所であり、現在に至るまで水戸市民の誇りだ。「近世日本の教育遺産群―学ぶ心・礼節の本源―」の構成文化財として、平成27年には日本遺産にも認定されている。

敷地内に約60品種800本の梅が植えられた見事な梅園
敷地内に約60品種800本の梅が植えられた見事な梅園

本瓦葺きの正門をくぐると眼前にある正庁(せいちょう)は、弘道館を象徴する建物。書院造の格式ある空間は、その佇まいから「学校御殿」とも呼ばれている。校舎の設計や配置にも自ら指示を出したという水戸藩主・斉昭の思いが形となった遺構の多くは、江戸時代のまま。敷地内には、約60品種800本の梅が植えられた見事な梅園も見逃せない。毎年2月20日~3月31日の間に開催される「水戸の梅まつり」の会場は偕楽園だけではなく、ここ弘道館も含まれるのだ。偕楽園よりも静かに梅を鑑賞できる場所であることを紹介しておこう。

このあとは、水戸にいれば、必ず目に飛び込んでくる、くねくねと正四面体が積み重ねられたタワーのふもとまで、向かってみよう。ここでは、現代アートを楽しむことができる。

未来的なタワーは水戸のシンボル。2019年にプリツカー賞を受賞した磯崎新の建築による水戸芸術館で現代アートに親しむ

水戸芸術館
水戸芸術館

水戸の街には一際目立つタワーがある。1990年(平成2年)に開館した水戸芸術館のシンボルとして建てられたこの塔の高さは、水戸市制100周年を記念して地上100m。空に向かって伸びる正四面体を規則的に積み重ねた未来的なイメージのタワーは、それ自体がアート作品のようだ。水戸芸術館の設計は日本を代表する建築家である磯崎新。コンサートホール、劇場、現代美術ギャラリーの3つの独立した施設があり、音楽、演劇、美術の3部門がそれぞれ自主企画により運営されている。

水戸芸術館
水戸芸術館

複合施設内の「現代美術ギャラリー」には、光の状態や面積がそれぞれ異なる個性的な9つの展示室がある。簡素で美しいプロポーションの空間は、アーティストの想像力が自由に発揮できるように設計されたという。開館以来、現代美術の自主企画展にこだわり、クリストとジャンヌ=クロードといった世界的アーティストの個展や、内藤礼、中谷芙二子など日本を代表する作家の個展、時代と呼応したテーマのグループ展などが開催されてきた。

現代美術のみでなく、建築、デザイン、ファッションなどの分野にもフィーチャーしている。年に3回程度開催される企画展の他、若手作家の新作を紹介する企画展シリーズ「クリテリオム」を開催。ラテン語で「基準」を意味するこの企画は、若手作家と水戸芸術館のキュレーターが共同企画する興味深い展覧会だ。

アートシャワーの句読点。街中の小さな古民家カフェで寛ぐ

cafe 清らの庭を眺めるダイニングスペース(左上、右下)、外観(右上)、酵素玄米の清ら膳(左下)、あんみつ(下中央)
cafe 清らの庭を眺めるダイニングスペース(左上、右下)、外観(右上)、酵素玄米の清ら膳(左下)、あんみつ(下中央)

水戸アートトリップの際に訪れるランチのおすすめスポットをご紹介する。茨城県近代美術館の「プティ・ポワル」、水戸芸術館の「チャイナテラス」(※新型コロナウイルス感染拡大の影響で現在営業を中止している)など、水戸の美術館には魅力的なカフェやレストランが併設されている。また、街中のレストランやカフェが充実しているのも水戸の魅力だ。その中のひとつ、水戸駅からJR常磐線で10分の赤塚駅、石畳の路地に佇むcafe 清らは、靴を脱いで上がるスタイルのカフェレストラン。古民家をリノベーションしたこの店は、懐かしい友の家を再訪するような居心地の良さを感じる場所。地元の旬の食材や体に優しい酵素玄米の滋味深いランチの御膳をいただきながら、手入れの行き届いた庭を眺めるのは至福の時間となるだろう。

森の中の迎賓館、エジソンの曾孫 J・D・エジソン氏の手による洗練されたデザイン空間のホテルで、アートな1日を振り返るくつろぎのひととき

水戸プラザホテル 外観
水戸プラザホテル 外観

水戸・笠間のアートトリップでお薦めしたい宿泊先のひとつ、水戸市内にある緑豊かな雑木林の一画に建てられた、“森の中の迎賓館”をコンセプトにした「水戸プラザホテル」をご紹介したい。

このホテルのインテリアデザインを手掛けたのは、発明家として有名なエジソンの曾孫で、インテリアデザイナーのジョン・デビッド・エジソン氏。ところどころアール・デコ様式も感じさせるヨーロピアンクラシック調のホテルである。家具調度やファブリックの色調や配色センスは洗練され、高級感と落ち着きがあり、贅沢な居心地を味わえる空間となっている。緑豊かな敷地内に建つこのホテルは、異国情緒にも満ち、旅の疲れを癒すとともに、心地よく気分転換が図られる。

水戸プラザホテル アクアリウム(左上)、ツインルーム(右上)、ホワイエ(左下)、ロビー(右上)
水戸プラザホテル アクアリウム(左上)、ツインルーム(右上)、ホワイエ(左下)、ロビー(右下)

5階建ての客室棟は、中庭があり、光を取り込むガラス屋根のアトリウムが特徴的で、1階にはラウンジのほか、レストランが並ぶ。宿泊の室内も、ホテル全体の重厚感あるイメージを裏切らない、ハイセンスな居室となっている。室内の動線も良く考えられており、心地よいことこの上ない。アート巡りで過ごした1日の締めくくりに、充実感を高めてくれるステイ先としてお薦めしたい。

気軽な日帰り旅行でも楽しめるが、アートスポットも見どころの多い水戸・笠間は、宿泊してゆっくり楽しむとより満喫できるに違いない。後編の水戸・笠間へアートトリップにつづく。

文・藤野淑恵、小林春日

関連リンク:
茨城県近代美術館(茨城県水戸市千波町東久保666-1)
偕楽園 ~梅の芳香と歴史の景勝地~(茨城県水戸市見川1-1251)
弘道館(茨城県水戸市三の丸1-6-29)※リンク先は「観光いばらき」のサイト内
水戸芸術館(茨城県水戸市五軒町 1-6-8)
café 清ら(茨城県水戸市姫子2-352-114)※リンク先はfacebookページ
水戸プラザホテル(茨城県水戸市千波町2078-1)

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