六甲山頂の風は涼やかでした。” 神戸六甲ミーツ・アート 2025 beyond”が始まりました。
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- by morinousagisan

8月末から始まる神戸・六甲山頂で現代アートを巡る「神戸六甲ミーツ・アート」は、今年で16回目を迎えます。年々私たちを取り巻く自然環境が変化し、今年は特に酷暑が続き、そんな中で始まりました。昨年の様にトレイルを1時間も歩いて山越えなら今の私には無理かもと途中リタイアも覚悟してのガイドツアーに参加してきました。
※作家《作品》には、リンクを貼っていますのでご参照ください。
JR六甲道からバスで六甲ケーブル下まで。六甲ケーブル下にも作品があり、ケーブルの待ち時間に鑑賞。「六甲ケーブル下駅」から、1.7kmを約10分、標高737m「六甲山上駅」に到着です。山と海に挟まれた神戸、山頂に吹く風は涼しく、別荘地として開発されたことも頷けます。近代化産業遺産に登録されている「六甲山上駅」の駅舎にある展示作品紹介プレートに 須田悦弘《ササユリ, ノブドウ, リンドウ》 とあり、えっ!かの須田さんなのかと、いつものようにさりげなくそこにある作品を捜しましたぁ。《ノブドウ, リンドウ》見つけてくださいね。小さな扉の先にある《ササユリ》をのぞき込んで、天覧台へ。快晴!爽快!
大きな映画の看板のような作品が目に飛び込んできます。インド系タイ人アーティスト、ナウィン・ラワンチャイクン+ナウィン・プロダクション《神戸ワーラー》多国籍の人が共に暮らしてきた多文化都市神戸を作品にしています。
藤棚の下に建てられた小屋の中には山田毅《自動れきしはんばいき》が設置されています。「六甲ミーツ・アート」会場内に《自動れきしはんばいき》が3か所あります。拾い集めた六甲山の歴史の一端、何が出てくるでしょう。

機械式時計に用いられてきた「脱進機(エスケープメント)」の構造を取り入れた動く彫刻作品 石島基輝《風の中のClock systems》 風が吹くと動き出し音が青い空に響く。
同じ場エリアに六甲の別荘文化に着目したドールハウス 岡留優《別荘》太陽光電池も利用した別荘からパフォーマンスや配信もあるそうです。

ミュージアムエリアの新池には2023年から参加の川俣正《六甲の浮橋とテラス Extend 沈下橋2025》 沈下橋が今年は渇水の影響でまだ水面下となっていませんでした。
目を凝らさないと見つけられない やなぎみわ《大姥百合(オオウバユリ》 「大姥百合」は、開花までに長い年月を要し、一度だけの開花で生涯を終えるという、やなぎみわならではの作品でそこに内包するものは小さくないはずで、情念のようなモノが漂い・・・。9月には川俣さんのテラスで主催:AiRK、森山未來プロデュース、やまぎみわ作、演出・舞台美術、野外劇「大姥百合」が予定されています。詳しくは⇒◆

沖縄漆喰で形作られた 堀園実《風や水を切る》 繁茂する緑の中に有機的なフォルムがすっぽりとおさまり呼吸しているようでした。鑑賞者には手でも触れて感じてほしいと作者のコメントにあります。
今年アメリカの雑誌「タイム」の「世界で最も影響力のある100人」にも選出された 奈良美智《Peace Head》が、阪神淡路大震災から30年の今年「ROKKO森の音ミュージアム」内のSIKIガーデン~音の散策路~に「常設展示」となりました。作品の裏面に、作品タイトルとなる「PEACE」が刻まれています。《Peace Head》の原型は、奈良さんの手の中で造形された手跡の残る粘土で、本作は5体あるうちの1体だそうです。現在の日本や世界情勢も鑑みても、図らずもメッセージ性のある存在となりました。

池に球体(本作品は半球)を浮かべ夜は発光する作品は毎年あるのですが、六甲山の環境と水辺との相性がよく、一日の時間の推移、季節の移り変わり、気候の変化で見え方が変化していく作品は魅力的です。遠山之寛《(semi)sphere》製造過程で水を一切使わない「環境負荷の低い石灰石由来の紙HAQURを使い、折り紙構造を用いて平面の折りたたまれた状態から球体を作り出している」環境への負荷を考えた作品が多いのも昨今の出品作品の傾向と言えるでしょう。
神戸六甲ミーツ・アートの今回のテーマは「環境への視座と思考」でした。開催概要には「ここでの環境とは、六甲山の自然・歴史・文化はもとより私たちの社会、世界の有り方までを含む概念です。アートの展観を通じて、より広く多様な視点で環境を見つめ思考する契機が生まれることを望みます。」とあり、テーマについてアーティスト各人のアプローチが造形化していす。

中村萌《Silent Journey》森の妖精がやって来たようなぬくもりのある木彫作品です。子育て中のママさん作家さんで、袖の中にある指や立っている足先もカワイイ!お子さんの仕草や可愛い手足も知らず知らずに作品に反映しているのかもしれません。ギュッと抱きしめたくなるような優しさ可愛さに癒されます。
ポーラ ミュージアム アネックスでも9/28まで個展開催中のようです。詳しくは⇒◆

六甲高山植物園の中に建つ 風の環《しらす、山に昇る》 遠くからは「バードケージ?」「大きな虫籠?」のように見えました。実は、神戸の海の現象を山で可視化した作品です。様々な専門家が集まって今年設立されたアートプロジェクトで、「神戸六甲ミーツ・アート2025 beyond公募大賞」グランプリ受賞作品です。神戸の地に根ざし、大阪湾の漁獲量の変化は風の影響があるのではないかと、気象データを可視化し、今後も得られた結果を継続的に発信していく、コンセプトもしっかりして未来につながる作品です。
本ブログのメインヴィジュアル白水ロコ《山の精霊たち》大阪湾を一望する六甲ガーデンテラスエリアに立つ作品は、毎年のお楽しみです。快晴で作品が映え今年も心がふぁぁ~と解放されるようでした。

岡田裕子《井戸端で、その女たちは》亡くなった関西ゆかりの女性作家たちの井戸端会議の側に座り、私、関西のオバチャンはその話に聞き耳を立てているのでした。真ん中の井戸水を汲み上げるポンプが象徴的。会話の主たちのバックグランドのリサーチが深い。作家さんは、会田誠さんの奥様だった!
⾵の教会エリアにある六甲山芸術センターにある 堀尾貞治×友井隆之《1ton彫刻までの道程》1㎏単位の作品を1000個作ると総重量は1tになる。2010年から二人で取り組むも堀尾さんは残念ながら2018年に逝去、その後も友井さんが堀尾さんの思いも引き継いで作り続け2020年に1000点を達成。展示会場の映像は、芦屋市立美術博物館でのパフォーマンスで、もしやと思ったらやはり堀尾さんは、具体のメンバーでした。作品は六甲山芸術センターの建物の外にもはみ出していたのでした。

髙野千聖《The seamless ship》六甲山や神戸周辺で集めた廃材などでホテル跡地に組み上げられた巨大な船型造形。時間と空間が交錯し、住み家は人が棲んでいないとドンドン荒んでいきます。現在の空き家問題も考えさせられます。

岩崎貴宏《Floating Lanterns》安藤建築の風の教会の光と影が織りなす空間に空へ舞い上がっていくランタンの様に漂う発泡スチロールの建築模型の断片。広島に生まれ広島在住の作家さんが、神戸の震災から30年と戦後80年に教会だった建物に失われた建物の記憶に鎮魂を込めて。
六甲ミーツ・アートのかつての受賞作品がJR灘駅南側広場に展示されています。六甲山頂ではあんなに輝いていた作品が、同じ作品とは思えないほどの印象で、作品は展示環境も大きなファクターとなっていることに気づかされます。
9月23日からの土日祝には、六甲高山植物園を会場として”ひかりの森 夜の芸術散歩”が開催されます。詳しくは⇒◆
【開催概要】
- 会 期:2025年8月23日(土)~11月30日(日)
- 開催時間:10:00~17:00 ※営業日・時間は会場により一部異なります。
- 会 場: ミュージアムエリア( ROKKO 森の音ミュージアム・六甲高山植物園・新池)、六甲ケーブル(六甲ケーブル下駅・山上駅)、天覧台、兵庫県立六甲山ビジターセンター(記念碑台)、六甲山サイレンスリゾート(旧六甲山ホテル)、トレイルエリア、みよし観音エリア、六甲ガーデンテラスエリア、風の教会エリア
- 公式サイト:https://rokkomeetsart.jp/