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秋の嵐山で美人画の軌跡をたどる@福田美術館&嵯峨嵐山文華館

上村松園《しぐれ》絹本着色 軸装 昭和15年(1940)頃 福田美術館[通期展示]

今年は上村松園生誕150年ということで、松園の作品を目にすることが多かったです。本展も福田美術館が所蔵する松園作品を中心に美人画の軌跡をたどろうとする企画展です。

上村松園と美人画の軌跡@福田美術館

第1章    上村松園と近代に活躍した女性画家たち

群像の中の一人として描かれていた人物像から、江戸時代初期には女性の姿を独立して描くようになり、日本の「美人画」の始まりとなりました。導入部では、寛文年間(1661-1673)に描かれるようになった「寛文美人図」やその流れを引き継いだ浮世絵の肉筆画から始まります。


左から:上村松園《一家和楽之図》絹本着色 軸装 明治30年(1897) 福田美術館[前期展示]/ 上村松園《四季婦女》絹本着色 軸装 19世紀 福田美術館[通期展示]

松園の初期作品です。1890年(明治23)東京上野公園で開催された第3回内国勧業博覧会に《四季美人図》を出品して褒状を受け、訪日中の英国王子アーサー・コノート殿下お買い上げとなり、評判となりました。松園はこの《四季美人図》を画題として女性の髪形や所作などを変えて同様の作品を描きました。手前から奥へ季節が移ろい、女性も年を重ねていくように描いた松園の画壇へデビューは15歳で、意欲的な作品です。

22歳の松園が描いた《一家和楽之図》繕い物をする女性の糸や幼子が遊ぶおはじきにもご注目ください。

右壁面には松園作品がほぼ年代順に展示され、松園が描く女性の人生や季節の中の女性像、古典に学んだ女性像などの作品が展示されています。


上村松園《長夜》絹本着色 軸装 明治40年(1907) 福田美術館[前期展示]

第1回文展に出品して三等賞第一席を受賞し、岡倉天心が購入したと伝えられるよく知られた作品です。行灯に手を伸ばして火の様子を確かめる手の描写、透け感の表現に改めて目を凝らしました。

左壁面には、松園と共に「三都三園」と呼ばれた島成園や池田焦園の作品も展示されています。


上村松園《雪女》絹本墨画 軸装 大正10年(1921) 福田美術館[通期展示]

近松門左衛門の戯曲『雪女五枚羽子板』に登場する侍女を描いたすでにこの世の人ではない女をシルエットで表現しました。


基礎的な和装用語解説パネル

美人画では、着物や帯の柄だけでなく、年齢や場にあった髪形も見どころで、時代を写しその時代の風俗をも伝えています。


第2章    東西で活躍した個性豊かな美人画家たち

「西の松園、東の清方」と称され、江戸の浮世絵の伝統を受け継いだ鏑木清方は多くの弟子を育てました。前半は清方とその門下の美人画を展示しています。清方と伊東深水の作品は撮影禁止ですが、深水の描く女性は、ムチッとして逞しくモダンな女性像です。


門井掬水《舞踊の楽屋》紙本着色 屏風 20世紀 福田美術館[通期展示]

清方門下の門井掬水の六曲一双の大きな屏風、舞台が始まる前の舞台裏を描いています。着物の模様など凹凸も描かれていることにもご注目ください。

展示室後半は、京都や大阪で活躍した画家による美人画が展示されています。岡本神草や2023年に開催されて話題となった映画界でも活躍した甲斐荘楠音には時代的にもデカダンな香りが漂います。この展示室最後の京都画壇出身の谷角日沙春の作品は、刺繍のステッチの様であったり、幾何学的な図形の組み合わせであったりと美人画なのか?とその表現の広がりをみせています。


第3章 現在につながる「美人画」の軌跡

松園や清方の次の世代が描く美人画やルノアール作品などを展示しています。


東郷青児《微風》キャンバス・油彩 額装 昭和35年(1960) 個人蔵[通期展示]/ 東郷青児 草上の三人の娘 通期 キャンバス・油彩 額装 20世紀 福田美術館(旧山本憲治コレクション

毀誉褒貶にまみれても戦後に二期会のドンとして活躍した東郷青児、好き嫌いは別としても久しぶりに見た東郷青児はインパクトありました。

 

それでは、浮世絵と美人画の軌跡@嵯峨嵐山文華館へ移動しましょう。

第1章    べらぼうに美しい浮世絵美人たち

浮世絵に描かれた東西の美人画を展示しています。


「江戸時代の美人画におけるファッション」の解説パネル

浮世絵に描かれる美人は、当時のファッションリーダーです。当時の着物やメイクの流行にも注目してみましょう。祇園井特の奥の奥まで描かれた瞳や笹紅は妖艶にも見えて一度観たら忘れられません。

 

第2章    浮世の美人 技芸乃夢姿

歌舞伎や浄瑠璃の芝居の演目に登場する女性や芸事を嗜む女性、遊郭の女性たちを描いた美人画が勢揃い。


『大近松全集』付録版画 通期 紙本印刷 - 大正11-14年(1922-1925) 福田美術館 左から:木谷千種『心中宵庚申』/上村松園『雪女五枚羽子板』

1922年近松門左衛門没後200年に木谷千種の夫で大阪の演劇研究家の木谷蓬吟が『大近松全集』の編集発行を企画し、戯曲の内容に題材を取った絵を画家に依頼して、印刷物にした豪華な付録です。

福田美術館で展示されている松園の《雪女》を印刷物にしたのが本作です。


磯田長秋《浅宵》絹本着色 屏風 大正13年(1924) 福田美術館[通期展示]

縁台で線香花火をする遊女たち。線香花火を手にしている遊女の手にはほくろが描かれています。馴染みの旦那との愛を誓うために入れた刺青の「入れぼくろ」だそうで、色っぽくもあり、切なくもあり、気づけばドキッとし見入ってしまいました。 

残念ながら映画は観ていないのですが、吉田修一著『国宝』を読み終えたばかりで、歌舞伎や舞姿の女性像が『国宝』の登場人物と重なりました。


【開催概要】アートアジェンダの展覧会紹介をご参照ください。

  • 上村松園と美人画の軌跡@福田美術館 ⇒
  • 浮世絵と美人画の軌跡@嵯峨嵐山文華館

※Google Arts & Cultureと福田美術館の作品がコラボレーションして、名画のつづきを表現した新しい鑑賞体験「Moving Paintings」を世界初公開されています。絵画の続きが動き出す!詳しくは⇒

 


プロフィール

morinousagisan
阪神間在住。京都奈良辺りまで平日に出かけています。美術はまるで素人ですが、美術館へ出かけるのが大好きです。出かけた展覧会を出来るだけレポートしたいと思っております。
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