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【記者内覧会】『没後50年  福田平八郎』後期展示 が始まりました。

左から:《筍》昭和22年(1947) 絹本着色 額装 山種美術館/《雨》昭和28年(1953) 紙本着色 額装 東京国立近代美術館

『没後50年 福田平八郎』後期展示が4月9日より始まり、記者内覧会に参加してきましたのでご報告します。展示替で後期に展示された作品を中心に本展担当の主任学芸員 林野雅人さんから見どころを解説して頂きました。


最初に重要なお知らせがあります!ご注意ください! 詳しくは⇒

「4月9日(火)– 4月23日(火)の期間、作品保護のため《漣》(重要文化財)の展示を一時休止いたします。展示の再開は4月24日(水)になります。その後5月6日(月・休)の閉幕まで展示いたします。なお、上記展示休止期間中に展覧会をご覧になられた方には、4月24日(水)から5月6日(月・休)にご利用いただける特別割引券を配布いたします。」

※掲載の画像は、主催者の許可を得て内覧会にて撮影したもので、後期4月9日から展示されている作品です。

後期展示では、本画は32点、素描・下絵は14点が展示替えとなりました。写生帖は一部頁替えされています。本レポートでは、展示替えとなった作品を中心にご紹介したいと思います。



左から:《桃と女》 大正5年(1916) 絹本着色 屏風(六曲一隻) 山種美術館/《驢馬と鵲》大正4年(1915) 絹本着色 軸装

《桃と女》は、京都市立絵画専門学校2年次に第10回文展に出品した作品で、残念ながら落選でした。右の女性が持つ桃はとてもリアルに描き出されています。二人の女性が着る着物や着物を締める紐、絣の前掛けと見どころは多くあります。着物は質感にもこだわり左の女性の縦縞には白い絵具を削ったあとがあるようです。右下には当時使っていた「九州」号の落款があることにもご注目ください。平八郎の初期の代表作です。私はこの作品に国画創作協会の若き画家たちの作品に似る要素を感じました。

この展示室は平八郎の初期の作品が展示され、人物画や羊やロバなどの動物画、風景画などを描いていた時代です。


左から:《游鯉》大正10年(1921) 絹本着色 軸装/《紫陽花孔雀図》大正10年(1921) 紙本着色 屏風(二曲一隻) 大分市美術館

帝展で特選を受賞した《鯉》と同じ年に描いた《游鯉》。平八郎は“鯉”も繰り返し描きました。ピチピチ跳ねる鮎とゆったりと游ぐ鯉は動と静のように感じました。写生を繰り返し、鯉の鱗も細かく描き分けているそうです。


主任学芸員 林野雅人さんが語る「平八郎の魅力」

1. 本人も自称する「写生狂」徹底した写生に基づく作画。

2. 「カラリスト」色が鮮やかで、色で形を捉える。

3. 「トリミング」構図の力。対象を的確に切り取っていく。

もう1つ加えるとしたら、一般の人が気づかない身近なモノ、不定形なモノを対象として描いたこと。「水」や「雲」や「氷」など。


左から:《朝顔》大正15年(1926) 絹本着色 屏風(六曲一隻) 大分県立美術館/《菊》昭和3年(1928) 絹本着色 屏風(二曲一隻) 京都市美術館

縦に伸びる朝顔を画面いっぱいに描いた《朝顔》と上部に大きく余白をとり、霜よけの簾の下に菊を描いた《菊》。《朝顔》は、蕾から種になるまでの朝顔を描き、菊は真ん中に赤い菊を描いてアクセントとしています。黄色い落ち葉や大きくとった余白に秋の風情が感じられます。


《水》昭和33年(1958) 鉛筆、着色、紙ほか 大分県立美術館/ [写生帖]昭和32-33年(1957-1958)冊子装 大分県立美術館

水にすっかり魅せられてしまった平八郎は、繰り返し水を写生しています。実際に水溜りの波紋を私の携帯で撮ってみると、本当にこんな風な波紋が出来ていて驚きました。最近、水溜りがあるとついついじっと見下ろしてしまいます。


左から:《清晨》昭和10年(1935) 絹本着色 軸装 京都国立近代美術館/《花菖蒲》昭和9年(1934) 絹本着色 額装 京都国立近代美術館

花菖蒲も平八郎は繰り返し描いています。上記《花菖蒲》は、もちろん尾形光琳筆 国宝《燕子花図》を意識して描いています。縦に横切る水路には空が映っています。群青一色の光琳とは異なり、色に変化を持たせています。琳派のたらしこみを用いると共に「彫塗」(最初に引いた線を避けて彩色する方法)の手法により葉がすっきりと描かれています。外国の方には着物の柄のようと人気の作品で、私もこんなモダンなデザインの浴衣なら着てみたいと思いました。お隣の《清晨》同色系の色合いからでしょうか、胸のすくような清々しい作品です。


《竹》昭和15年(1940) 絹本着色 額装/《竹》昭和17年(1942) 絹本着色 額装 京都国立近代美術館

何とカラフルな竹でしょう。戦時中、平八郎は毎日竹藪の中を歩いていたそうで、竹の写生を繰り返し、竹の色はこれまで描かれてきたような緑青一色ではないと気づいたそうです。写生に基づいた新たな竹を表現しました。


左から:《雨》昭和28年(1953) 鉛筆、 着色、 紙ほか 大分県立美術館/[写生帖] 昭和30-31年(1955-56)/昭和39年(1964) 大分県立美術館

重要文化財《漣》と共に平八郎の代表作と言える《雨》。斬新ですよねー。初めて見た時はビックリしました。降り始めた雨が瓦にポツポツと当たってドット模様となる。雨そのものを描かずして雨の降りはじめを絶妙なトリミングで表現しています。音が聞こえてきそうではありませんか。そしてこの後ザーッって降って来るのだろうなぁと。黒く濃く太く引かれた瓦の境目、縦の垂直と横の波波線もリズミカル。《漣》を描くときも写真を参考にしていましたが、本作でも瓦の写真を写真家に撮影してもらって参考にしていたそうです。間近でじっくりマジマジと観たい作品です。

山種美術館蔵《筍》は色彩も美しい作品です。敷詰められた淡い色の竹の落ち葉にニョキニョキ育つ筍2本、筍の皮の間から飛び出す緑の小さな葉にも勢いを感じます。

描くべき、描きたい対象以外を削ぎ落す中、色彩が映えて装飾的になっていきます。


左から:《筍》昭和21年(1946) 鉛筆、 着色、 紙 額装 大分県立美術館/《竹》昭和40年(1965)頃 紙本着色 額装 大分県立美術館/《春の水》昭和42年(1967) 紙本着色 額装 大分県立美術館

昭和36年(1961)第4回新日展に出品して以降、平八郎は日展への出品を止めて、以後は小規模な展覧会へ小品を発表していきます。形態は単純化し、色彩はますますヴィヴィッドに、しかしながらあくまで写生に基づいた具象画で新しい日本画を追究しました。


左から:《模写 -現代アメリカ絵画展》昭和42年(1967) 鉛筆、 着色、 紙 額装 大分県立美術館/《雲》昭和25年(1950) 鉛筆、 着色、 紙 額装 大分県立美術館

晩年は子どもの絵にも興味を持ち、子どもの落書きを模写することもあったそうです。大分県立美術館以外では初めて展示された《雲》。青い空と雲しか描かれていません。上記でご紹介している《雲》のための素描です。《模写 -現代アメリカ絵画展》は、京都国立近代美術館で1966年秋に開催された「現代アメリカ絵画展」に展示された戦後のアメリカ画壇の作品を模写したものです。上の段は展示された3点のマーク・ロスコによる作品です。当時の現代アメリカ絵画にも平八郎は目を向けていました。

前後期を見ても、もう一度じっくり観たい作品もあり、写生帖には平八郎の目が詰まっていてずっと眺めていたくなりました。

4月14日放送の「日曜美術館」は「時を超え、自由に 日本画家・福田平八郎」と題して、日本画家 千住博さんが本展をご案内。諏訪敦さんもご出演のようで楽しみです。


【開催概要】没後50年 福田平八郎

  • 会場:大阪中之島美術館 4階展示室
  • 会期:2024年3月9日(土)~5月6日(日)
  • 前期:3月9日(土) – 4月7日(日)/後期:4月9日(火) – 5月6日(月・休)     ※会期中に展示替えがあります
  • 開館時間:10:00 – 18:00(入場は17:30まで)
  • 休館日:後期展示期間中は、月曜日も開館で、無休となります。
  • 観覧料:一般1800円(団体 1600円)/高大生1000円(団体 800円)/中学生以下 無料
  • 展覧会公式サイト :https://nakka-art.jp/exhibition-post/fukudaheihachiro-2023/
  • お問い合わせ:大阪市総合コールセンター(なにわコール)06-4301-7285

 ★音声ガイドのナレーターは声優の駒田航さん、担当学芸員の解説もありとても参考になりました。

  大分県立美術館へ巡回します。    2024年5月18日(土)~2024年7月15日(月・祝)

 


プロフィール

morinousagisan
阪神間在住。京都奈良辺りまで平日に出かけています。美術はまるで素人ですが、美術館へ出かけるのが大好きです。出かけた展覧会を出来るだけレポートしたいと思っております。
かつて関西のアートサイトに読者レポートとしてアートブログを掲載して頂いていたご縁で、展覧会担当の広報会社さんから私個人に内覧会や記者発表のご案内を頂戴し、「アートアジェンダアートブログへ投稿」という形を広報会社さんに了解頂いて、アートブログを投稿しています。アートブログは全くの素人の個人としての活動です。
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