ゆかりの地も巡りながら楽しみたい源氏物語の世界
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- by morinousagisan
嵯峨嵐山文華館は、百人一首の歴史と日本画の粋を伝えるミュージアムです。
現在『よきかな源氏物語』が開催中です。
『源氏物語』の作者 紫式部を主人公にしたNHKの大河ドラマ「光の君へ」が始まり、タイムリーな企画展となっています。
嵯峨嵐山は、『源氏物語』にゆかりが深く、特に嵯峨嵐山文華館の周辺には、主⼈公・光源⽒の側室である明⽯の御⽅と、源氏との子である明⽯の姫君が居住したとされています。
メインヴィジュアル の第18帖「松風」は、明石の方が、上京して曾祖父の中務宮より伝領した「大井の邸」に移り住み、そこへ源氏が訪ね来て数年ぶりに再会し、明石の方との子に会う場面が描かれています。
本展では、『源氏物語』を題材にした日本画には各場面の解説を付け、また500人にも及ぶ登場人物や宇治十帖や紫式部を取り巻く人物相関図のパネル解説があり、より理解しやすい展示となっています。
第1章 雅な世界へようこそ
紫式部の自筆の『源氏物語』は伝わっていません。多くの写本で伝えられ、長く読み継がれてきました。『小倉百人一首』の撰者で知られる藤原定家は、紫式部が生きた時代から約200年後の平安末期から鎌倉時代初期の人で、『源氏物語』の写本を比較・校訂し、現在まで読み継がれる基本形を作りました。定家が写した「青表紙本」が5冊現存し、最古の写本とされています。現在展示中の定家様と呼ばれる特徴的な手蹟による《小倉色紙 はなさそう》の色紙は、定家の直筆のものと伝えられています。
大長編小説にして大ベストセラー『源氏物語』の華やかな平安貴族の世界観は、絵画や工芸の題材にもなり、婚礼調度品ともなりました。
54帖からなる『源氏物語』は、各帖で描かれる画題はいくつか決まっており、それが分かると「あっ!あの場面だ!」とより一層楽しむことが出来そうです。
「京狩野」の狩野山楽による屏風で、12の場面が描かれています。
『源氏物語』全54帖の場面全部が描かれた屏風も展示されています。
第7帖 「紅葉賀」は、朱雀院御幸の日、頭に菊を挿す源氏と紅葉を挿す頭中将、イケメン二人が「青海波」を舞う場面です。
各帖に絵になりそうな場面が必ずあり、紫式部が次の帖を書き上げるのを当時の殿上人達は待っていたことでしょう。
第2章 よきかな、源氏物語
この章では、場面ごとに切り取って題材にしたさまざまな作品が展示されています。
右隻に光源氏が流された第12帖「須磨」と第13帖「明石」、現在も風光明媚な地です。左隻も有名な第14帖「澪標」の場面、住吉さんの丸い太鼓橋も描かれています。
第4帖「夕顔」を梥本一洋は、乳母の見舞いに出かけた源氏が、隣の垣根に咲く夕顔に目を留めて夕顔との運命的な出会いの瞬間を描いています。恋の相手となる女性は描かずしてキュンとなる作品です。
玉圓永信《源氏五十四帖》は、登場人物を描かず、象徴的な背景や持ち物や小道具などでその作品や演目を連想させるものを描く「留守模様」の珍しい作品です。読み解くには鑑賞者側の教養も試されそうです。
『源氏物語』は浮世絵にも描かれました。『源氏物語』を下敷きにした柳亭種彦『偐紫田舎源氏』、挿絵は初代歌川国貞で大当たりしました。その意思を引き継いで娘婿の二代目国貞は、「俤げんじ五十四帖」を制作しました。
第24帖「胡蝶」は、六条院にある春の町の池に龍頭鷁首(りゅうとうげきしゅ)の舟を浮かべて舟遊びを楽しむ場面です。平安時代に嵯峨嵐山文華館側を流れる大堰川で催されていた御舟遊びで、現在は「車折神社」の神事「御船祭」として初夏の嵐山で観る事が出来るそうです。
右隻の第19帖「薄雲」は、身分が低いゆえに、光源氏との子である姫君を養女として紫の上に預ける事となった明石の方の我が子との悲しい別れの場面です。左隻は有名な第23帖「初音」。六条院で初めて正月を迎えた源氏が、明石の方によって娘の姫君宛に認められた手紙を読んでいます。場面の内容を踏まえて作品を観ると、明石の方が抱く姫君が明石の方と一体となって涙を誘います。
嵯峨嵐山文華館の周辺には、光源⽒のモデルになったとされる源融の⼭荘跡「清凉寺」や光源⽒がお忍びで六条御息所を訪ねた「野宮神社」、光源⽒が建てた御堂の北側にあったという「⼤覚寺」などがあります。「源氏物語ゆかりの地MAP」も用意されていますので、ゆかりの地も一緒に巡ってみてはいかがでしょうか。
【開催概要】よきかな源氏物語
会期:2024年1月18日(木)~2024年 4月7日(日)
前期:1月18日(木)~3月4日(月)/後期:3月6日(水)~4月7日(日)
開館時間:10:00〜17:00(最終入館 16:30)
休館日:2月18日(日)、3月5日(火) / 2月17日(土)は15:00で閉館
開催場所:嵯峨嵐山文華館(京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町11)
入館料詳しくは⇒コチラから ※嵯峨嵐山文華館との二館共通券あり
美術館展覧会サイト⇒◆
[参考]・佐藤晃子著『源氏物語解剖図鑑』
描かれた源氏物語の場面が分かると良いなと思い読んだこの本が今回とても役立ちました。