ART BLOGS

アートブログ

2023年アートはどこから始めましょうか。

藤田美術館 あみじま茶屋

2023年皆さんはどこの展覧会から始まりましたでしょうか。

新年の連休も過ぎて世間が少し落ち着いた頃、遅まきながら私は始動しました。

まだ行ったことがないという友人を誘って、藤田美術館へ伺ってきました。昨春リニューアルオープン直後に伺って以来の再訪です。この間何度も再訪したいと思いながら出かけられず、2023年はここから始めたいと決めていました。他地域の方には分かりにくいかもしれませんが、JR東西線の大阪城北詰駅から徒歩1分、人の多い梅田を通らなくても行く事が出来て有難い。(そう、コロナの感染者がとても多い大阪ですので)

昨春伺った時は、展示作品の画像を掲載しておりませんでしたが、今回はスタッフさんに確認しました。平日は13時から学芸員による「展示ツアー」があり、それに参加したく、かつその前に予習として展示品を見ておきたいと思って伺いました。展示件数はほぼ分かっていたので1時間もあれば一通り見ることは出来るだろうと甘い考えのもとに。


藤田美術館庭園内 多宝塔

駅構内から地上に上がり、美術館は左手なのですが、右手の嘗ては藤田家の御屋敷のお庭のあった旧藤田邸跡公園(桜之宮公園)についつい入り込んで蕾が膨らんできた梅などを愛でてしまいました。この公園と多宝塔が建つ藤田美のお庭とは繋がっていました。

ようやっと美術館へ。ラッキーなことに来館者が少なく、スタッフの方がすぐに近くに来てくださいました。再訪であることを告げ、荷物をロッカーに預けてロビーに戻りました。リニューアルから1年近く経ちスタッフさんの対応もスムーズです。クレジットカードで入館料をお支払いして、スタッフさんがスマホで作品解説を読む(見る、聞く)方法(Wi-Fiの繋ぎ方から、QRコードの読み込み、解説の聴き方まで)を丁寧に教えてくださる。思わずこれをお一人お一人に説明なさっているのですか?とお尋ねしてしまいました。多分圧倒的に高齢者が多いからだろうなぁ。助かるわー。(感謝)

4つのテーマの内3テーマを展示し、毎月1テーマが展示替えとなる。テーマはずっと同じでなく、テーマを設けてそれに沿った作品を所蔵品から選んで展示されているようです。毎回3テーマでだいたい30件ほどが展示されています。国宝や重文を含む書画、茶道具、金・工芸、仏画、法具などバランスよく展示されていました。今回は茶道具が少なかったようにも感じました。「国宝 玄奘三蔵絵」は、どの巻が展示されているかはその時のお楽しみという所でしょうか。


住吉具慶筆「日月秋草図」江戸時代 17世紀 :右隻には太陽、左隻には月を描いた武蔵野の秋の風景

現在のテーマは「月」「僧」「輝」と「緑」、1月は「月」7件、「僧」11件、「輝」7件の25件が展示されています。(そんなに少なかったのかと後でビックリです)

展示作品はHPに「名称」と「画像」が掲載されています。⇒

作品とじっくり向き合ってほしいとの思いから、昨年と同様に展示作品の側にはその「名称」しかありませんが、全ての作品についてスマホで簡単な解説があり、目の前の作品も解説掲載画像を拡大して視ることもでき、撮影することもできます。「一遍上人像」南無阿弥陀仏の名号を称える口元は歯が見えるらしいのですが、これはスマホの中の画面を拡大してやっと確認できるほどです。展示室は「蔵の美術館」という名の通り暗くなっていますが、目がその暗さに慣れて、その分照明で作品が際立ちます。展示室に使われているのは低反射で透明性の高いガラスで、ガラスの向こうの作品までの距離が近いように思います。

ということで、解説を聴きながら単眼鏡でも覗きながら1点1点見ていくと半分も見ないうちに学芸員さんによる「展示ツアー」となりました。その日に集まったのは7人くらいだったでしょうか、一応20~30分程度、何点か作品をピックアップしその作品を前に、作品を囲んでお話を伺いました。それでも40分くらいお話しくださいました。「一遍上人像」の表装についてなどお尋ねしたいこともあり、質問する時間があればよかったのになぁとも。

HPのどこどう入って行けばたどり着くのか私には今もって分からないのですが、「作品名」を検索すると美術館のHP内の作品解説が現れてきます。

それでは、今回は特に気になった作品を数点選んでご紹介したいと思います。


国宝「紫式部日記絵詞」一巻 絹本着色 鎌倉時代

「藤原道長の娘で、一条天皇の中宮となった彰子に仕えた紫式部が、寛弘5年(1008)の彰子の出産から同7年正月まで宮中で見聞きした事柄を中心に記した日記」『紫式部日記』を題材に後世に絵画化されたものです。

寛弘5年9月15日、道長が敦成親王第五夜の産養(うぶやしない)の後、公卿たちが禄を賜った翌日、十六夜のもとで貴公子と女房たちが舟遊びをする第二段と同じ夜に祝いを述べるためにやってきた内裏の女房たちの車が道長の土御門殿の門前に集まっている第三段の場面が展示されていました。引目鉤鼻の人物もさることながら、「詞書」の金銀を散らした料紙が本当に美しいです。この絵巻、当初は50~60段もある大部の絵巻だったらしいですが、藤田美術館本を含めて分蔵され、詞23段、絵24段が伝わっているそうです。藤田美術館本は、後水尾天皇からの拝領の品と伝わり、大正元年(1911)まで館林の秋元家に伝来し、大正6年に藤田傳三郎の長男、平太郎が入手したものです。

藤田美術館HP解説 ⇒ コチラから


柴田是真筆「月下兎図」部分 明治時代 19世紀

漆芸家としても有名な柴田是真のウサギ図です。筆数少なく描かれたウサギうまいですよねー。卯年ということでのこの作品と「戎二童子図」は十日戎にちなんで、1月だけの展示だそうです。

藤田美術館HP解説 ⇒ コチラから


国宝「玄奘三蔵絵」第12巻 部分 紙本著色 鎌倉時代(14世紀)

「玄奘三蔵絵」は、第11巻と第12巻が展示されていました。「玄奘三蔵絵」は、土蔵の展示室の頃からどの場面が展示されているかなぁと毎回楽しみでした。11巻、12巻共に初めて拝見したように思います。第11巻は玄奘が『大般若経』600巻の翻訳を終えて、完成を祝う供養で『大般若経』から眩いばかりの光線が部屋いっぱいに放たれ人々が合掌する神々しい場面です。この絵巻最後第12巻は玄奘三蔵の遷化の場面で、お釈迦様の涅槃図のようです。玄奘の死に際して嘆き悲しむ様子が一人一人細かに表情豊かに描かれています。それにしても改めて鎌倉時代に描かれたものとは信じられない保存状態の良さ、色彩の鮮やかなこと。本絵巻は近世まで興福寺大乗院門跡に伝来し、門跡の代替えの時にだけ、新門主へ譲り渡されて視る事が出来、秘宝として宝蔵で守られてきたからだそうです。

藤田美術館HP解説 第11巻 ⇒ コチラから、第12巻⇒コチラから


「古井戸茶碗 銘老僧」 朝鮮半島 朝鮮時代 16世紀

昨秋の京博「茶の湯」展にも出ていましたね。「茶の湯」展の図録読み返しました。「小井戸茶碗の代表作として古くから知られている」と書かれています。京博の「茶の湯展」では茶碗がありすぎてピンとこなかったので、改めてまじまじと拝見しました。裏返して「梅花皮」のブツブツも見たかったですね。最近になって藝術新潮10月号「千利休生誕500年記念【特集】闘う茶の湯」を読みました。武者小路千家第15代家元後嗣千宗屋さんと磯田道史先生が藤田美術館で所蔵の茶道具を前に対談する特集で、この「老僧」も登場していました。枇杷色の井戸茶碗、元は雑器、飯盛り茶碗であったやもしれない。この茶碗のどこが良いのかと不思議で、それが繰り返し目にするうちにその術中に嵌っていくような気もしていますが。茶碗は掌の中におさめて愛でてこそと夢のまた夢のようなお話に。

藤田美術館HP解説 ⇒ コチラから


「中地蔵左右文殊普賢像」の「地蔵菩薩像(マニ像)」部分 絹本着色 中国 元~明(14世紀)

地蔵菩薩とされていますが、実はマニ教の教祖マニを描いた画像です。両肩と両膝の辺りに赤い四角形が表されているのがマニ教の画像であることの特徴との解説を聴き、そうだ!奈良博で見て「マニ教って!!」と驚いたアレか。通常はセグメンタと呼ばれる赤い四角形の中に顔形を表すそうです。髪形や手の動き、卵形の光背、衣の色、足先の衣の処理の仕方も他のマニ像と似ているそうです。世界的には極めて少ないマニ教信仰の絵画が日本に仏教絵画などとして伝来する中国絵画の中にいくつも存在することが確認されているそうです。マニ教は唐代には祆教や景教の様に中国へ伝わり、宋元代には福建などの南方地域を拠点として江南へ広がりました。その江南地域でのマニ教の礼拝画が何らかの経緯で仏教絵画として日本に伝えられたと考えられるとあって、とてもとても興味深いと思いました。(参考:「奈良国立博物館だより」第109号 2019年「展示品のみどころ」より引用)台座や蓮華座に小さな天女?が描かれているのもなんだか面白いのですが。青い獅子にのった文殊菩薩と白い象に乗った普賢菩薩がちょっと女性ぽくないでしょうか。両脇侍は室町時代の作で不思議な中央の地蔵菩薩(マニ像)に合わせて描かれたのでしょうかしらと思いは巡ります。

藤田美術館HP解説 ⇒ コチラから


気が付けば行きつ戻りつで3時間くらいも展示室に居たかもしれません。全てが見どころあり、見応えありでした。あみじま茶屋でカタログは販売されていました。ソフトスクラプチャーの曜変天目とは申しませんが、グッズ販売があると嬉しいけれど、きっぱりとされないのもいいのかも。

「学芸員と一緒にじっくり絵を見る会」や「能楽体験」などユニークな企画も開催されています。

藤田美さんやっぱりええもん持ってはります。


藤田美術館 正面と旧太閤園
  • 藤田美術館⇒HP
  • 開館時間:10:00~18:00
  • 休館日:年末年始のみ
  • 入館料:1,000円(19歳以下無料)
  • お問い合わせ:06-6351-0582

 

【参考】

  • 『特別展 国宝の殿堂 藤田美術館展 曜変天目茶碗と仏教美術のきらめき』図録 奈良国立博物館 2019年4月
  • 『特別展 京に生きる文化 茶の湯』図録 京都国立博物館 2022年10月
  • 『藝術新潮10月号』「千利休生誕500年記念【特集】闘う茶の湯」2022年10月

プロフィール

morinousagisan
阪神間在住。京都奈良辺りまで平日に出かけています。美術はまるで素人ですが、美術館へ出かけるのが大好きです。出かけた展覧会を出来るだけレポートしたいと思っております。
かつて関西のアートサイトに読者レポートとしてアートブログを掲載して頂いていたご縁で、展覧会担当の広報会社さんから私個人に内覧会や記者発表のご案内を頂戴し、「アートアジェンダアートブログへ投稿」という形を広報会社さんに了解頂いて、アートブログを投稿しています。アートブログは全くの素人の個人としての活動です。
通報する

この記事やコメントに問題点がありましたら、お知らせください。

こちらの機能は、会員登録(無料)後にご利用いただけます。

会員登録はこちらから
SIGN UP
ログインはこちらから
SIGN IN

※あなたの美術館鑑賞をアートアジェンダがサポートいたします。
詳しくはこちら

CLOSE

こちらの機能は、会員登録(無料)後にご利用いただけます。

会員登録はこちらから
SIGN UP
ログインはこちらから
SIGN IN

ログインせずに「いいね(THANKS!)」する場合は こちら

CLOSE
CLOSE
いいね!をクリックしたユーザー 一覧
CLOSE