銀座画廊の歩き方
年に数回催されている【GINZA画廊の夜会】へ水無月目前の5月、幸運にも参加が適いましたので備忘レポです。
東京都中央区の銀座は、おそらく関東で最も画廊の多い街。
何故画廊が集中したのかはちょっと分かりませんが、散策してるとチラホラと◎◎ギャラリー、とか☆★画廊という小さな看板に出会います。
ショーウィンドウを覗くと、美術館で見かけるシャガールやガレ、ローランサンといった巨匠作品が何気なく飾られていて、お店の前を通過してから「ん?」
と引き返して、美術館レベルの作品を街中で鑑賞することも可能な銀座界隈。
そんなギャラリー密集地帯の銀座では、もっとアートを身近に知って欲しいと2004年から複数の画廊をガイドさんの案内でハシゴするイベント「画廊の夜会」が開かれています。
参加方法は事前の予約制で、いくつかあるコースに先着順で申し込み受付をします。参加費はなんと無料!(最高(⌒⌒)!)です。
今回は17時と19時のスタート時間2部制、A~Gコースの7コースから事前選択します。
どれを申し込みするかものすごく迷った末、4か所のギャラリーをハシゴする『G:グループ展でアートシャワーコース』を選択しました。
終業後に銀座へ移動し、地図を見ながら最初の待ち合わせギャラリーへ向かいます。
途中、黒い小っちゃいアルファベットの旗を持った他コースの団体(と言っても最大人数5名)を通り過ぎ、最初の待ち合わせ【創英ギャラリー】へ。
①【創英ギャラリー】
やや新橋寄りの銀座7丁目にある、2013年設立の比較的新しいギャラリーです。
訪問時には第5回 RESA展という若手作家のグループ展が開催中で、なんと作家さん達が勢揃いしていました。
自分のワクワク度が爆上がりします。やはり作家ご本人とのお話を伺うと、製作の意図含めて眼からウロコな発見もあって愉しいですね。
一際眼を惹く可愛らしいリス彫刻の作者、大島玲佳さんからは柔らかな風合いを出す着色後のヤスリ掛けについて、つぶらな瞳で鑑賞者を見返すヤモリの作者、与島雪さんからも自身に身近なテーマでの創作について等コメントを頂きました。
また、お目当てだった剥製よりも本物にしか見えない人気のバードカービング、水上清一氏作品もショーウィンドウにしっかりありました。
お話させて頂いたオーナーの海老原氏曰く、製作にものすごく時間が掛かる方なので、個人の展示会は難しく今回のグループ展参加との事。
また、創英ギャラリーとしてオンライン展覧会やVR構想などに今後力を入れていきたいとの熱心なお話をもっと拝聴、、、したかったんですが、ガイドさんより次のギャラリーへの移動が押していると促されてもの凄く後ろ髪を引かれながら移動です。
今後の活動もHPで要チェックなギャラリーです。
創英ギャラリー:https://www.soei-g.com/
②【アールグロリュー】
次の訪問先は銀座の新たなランドマークの1つ『GINZA SIX』ビルの中にあるギャラリー【アールグロリュー】。
このギャラリーはGINZA SIXになる前、閉店後ビルごと解体した『銀座松坂屋百貨店』を運営する株式会社大丸松坂屋百貨店が経営していて、大阪にも店舗があります。
銀座松坂屋、、、懐かしいですね。
かつての松坂屋の周辺にも小さなギャラリーが何軒かあったと朧気ながら記憶していて、SIXに拡張大開発されて無くなっちゃったな。。
と寂寥感もあったんですが、キラキラしいGINZASIXの中にこうしたギャラリーがあると往時の面影ではないんですけどちょっとホッとします。
訪問時にはMetamorphoses(変身)という企画展が開催中で、作品を展示している作家の平出俊さん、丸山恭世さんに自作品を紹介して頂きました!
平出さんの作品のメインは『Money Cat』=直訳のお金の猫、ではなくて、金運を呼ぶ『招き猫』です。
メタリックカラーの招き猫が椅子に座り、自動で手を上下に招いています。膝にはクレジットカードを抱えていているのがなんとも現代的。
作家の平出さんはアメリカを活動拠点にしていて、カード大国であるアメリカは同時にクレジットカードの破産大国でもあり、カードを造るのも、破産するのも日常茶飯事。その皮肉を込めての作品だそうです。
丸山恭世さんもアメリカを活動拠点にしていますが、彼女は『顔』にフォーカスした女性の顔のアップを油絵で描いています。
ですが、一見すると油絵独特のテカリというか風合いが全く無くて、マットなアクリルかポスターカラーを使用したような質感に大変驚きます。
訊けば油絵をものすっごく薄くして、何度も何度も重ね塗りするんだそうです。製作期間も1か月は当たり前、との事。
お2人の作品題名欄にはチラホラと売約済みシールもあって、人気の高さが伺えます。
アールグロリュー:https://artglorieux.jp
③【ジャンセン・ギャラリー】
3軒目は、半世紀近い歴史の老舗【ジャンセン・ギャラリー】。
小ぢんまりとしたスペースに所せましとガレやラリックのガラス製品が陳列され、壁には大きなベルナール・ビュフェの鳥籠絵がすごい存在感を放ちながら飾られています。
そして外から見えない壁の裏側にはシャガールのリトグラフ、カーテンの陰には最近人気上昇中の馬愛好家のアンドレ・ブラジリエの作品が飾られています。
「画廊の夜会」のパンフレットには、シャガールの作品が掲載されていたので、当然それもあるかと思いきや、なんと早々に売れてしまったのだとか。
最近の美術品売買は活況らしく、入手した作品がすぐ売れるケースが増えているとの事です。
向田社長との業界ちょこっと裏話や今後入荷予定の作品についてのお話も出来るのはこの「夜会」の醍醐味。
またもやタイムキーパーなガイドさんに促されるまで店内から出られませんでした(笑)
ジャンセン・ギャラリー:http://www.jansem.info/gallery/information.html
④【日動画廊】
ラストは1928年創業で、日本で最も歴史のある洋画商の老舗、日動画廊さんです。
高額当選が話題の宝くじ売り場に近い、数寄屋橋交差点からも見える東洋美術な石像が目印。
広いスペースに巨匠から若手までの作品がズラリと並び、圧巻です。
1Fにはレオナール・藤田の『少女』やビュフェ『静物画』など著名作品、地下には若手作家の作品が並んでいます。
こちらもパンフレット掲載の安井曽太郎氏の静物画にはしっかり販売済みシールが貼られ、画廊の活況ぶりが伺えました。
美術館レベルの作品が売買され、ギャラリーという『店舗』の、いわば俗世間で見られるのが画廊の面白さ。
ニマニマしながらアート鑑賞のラストを堪能しました。
訪問時は第61回太陽展が開催中でしたが、6月にはフランス作家4名の展覧会予定でコンスタントに作品入れ替えの展示がされています。
店舗スタッフの方も、銀座の散策でふらりと立ち寄って頂けると嬉しいとコメントされているので、今後もお言葉に甘えて立ち寄りたいですね。
日動画廊:https://www.nichido-garo.co.jp/
おおよそ1時間半の散策コースが終了し、ガイドさんより解散を告げられるまで、どこか夢見心地な体験でした。
参加者は銘々そのまま画廊にとどまったり、夜の銀座散策にふらりと足を進めたりと様々でしたが、私含めて皆さま満足感漂う表情。
お腹も程よく空いたので、どこかで軽く引っ掛けながら余韻に浸ろうとゆるゆる動き始めます。
関東近郊の皆様、機会があれば是非参加推奨です。
画廊の夜会 | 銀座ギャラリーズ (ginza-galleries.com)