銀座画廊の歩き方②―AUTAMN GINZA 2024・アフタヌーンギャラリーズ―
いっこうに気温が下がらず青々とした葉っぱに痺れを切らしたように、各地で秋のイベントがスタートしています。
5月に本ブログでもご紹介した【画廊の夜会】タイトルで夜の画廊巡りがありましたが、芸術の秋、銀座では『AUTAMN GINZA 2024』というイベント期間が設けられ、そのひとつとして【アフタヌーンギャラリーズ】と銘打って午後の画廊巡りイベントが開催されました。
再び引率してもらいながらのギャラリー探訪という美味しい企画に乗っかり、画廊をハシゴさせていただきました。
しかし今回の選択コース、なかなか立地がディープというか、ガイドさんも「ちょっと一人だと勇気がいるかもね。。」と零すラインナップ。
訪問の心構え目安として自作『敷居の高さパーセント』付きでご紹介いたします。
※あくまで個人感想です。
①至峰堂画廊―敷居の高さ率40%―
コース最初の待ち合わせ場所に設定されたのは、日本一当たると有名な宝くじ売場の裏、数寄屋橋交差点から新橋方面に徒歩3分の好立地にある至峰堂画廊さん。
1977年に大阪で創業し、銀座には2009年からお店を構える、近現代の日本画・洋画の取り扱いがメインの画廊です。
店内はこぢんまりとしながらも、白を基調とした壁紙に絵画が映えて、天上近い本棚には美術書がズラリと並んだすっきりとした内装。
ギャラリーは1階と2階のスペース2つです。対応して頂いた女性店員さんは柔らかな表情で作品の特徴を語り、大通りにも面した立地は入りやすいかもしれません。
ただ、2階に上がる階段がちょっと狭くて町家建築を彷彿とさせる急勾配。恐る恐る入った人と足腰不安な方にとっては2階に上がるのが躊躇されるかもしれません。
訪問時は企画展「脂(ヤニ)派」が開催されていました。
「脂(ヤニ)派」は西欧の油絵の技法を踏襲した明治美術会(日本で最初の西洋美術団体)画家の色彩が全体暗色系で艶やかにテカっている印象を松ヤニの脂ヤニに例えられた名称。
黒田清輝率いる明るい外光を感じさせる絵(紫派)と比較されて、日本では評価が芳しくないまま120年ほどが経過しました。
ところが今、海外で日本独自の美術様式と再評価され始めていて、今後脂派を広めたいと開催されたそうです。暗色系も好きな私としてはどんどん評価が上がって欲しいですね。
ホーム | 東京都中央区銀座 美術品鑑定 至峰堂画廊 銀座店
②黒田陶苑―敷居の高さ率90%―
2軒目は日本陶芸の巨匠、北大路魯山人作品の取り扱いで著名な黒田陶苑さんです。
銀座には店舗が2つあり、案内されたのは新店舗兼ギャラリーになります。
場所は日本和菓子界の名門で皇室御用達、虎屋さんの新しい虎屋銀座ビル5階。ビルに入る前から赤と黒を基調にした重厚な雰囲気にだいぶ圧倒されます。
(え?ここでいいんだよね?)
と気圧されつつ6人という人数の強みに励まされてエレベーターで直接5階へ。
ちなみにエレベーターの1階内部は黒田陶苑を表示案内するプレートや看板の類は無くて、フロアに表示があるのみです。
降りたら(工事中?)と勘違いしそうな絞りまくった照明の下、真正面の黒い壁に金の浮彫で黒田陶苑のロゴが控え目に煌めいています。
ロゴの左には壁をくりぬいて作った10cm四方のガラスケースに、ライトを浴びた小さな陶器の展示。周りがほぼ真っ暗なのでやたら明るく見えます。
そしてロゴ横の出入口正面、自動扉も真っ黒で壁とほぼ同化。。。私含めたガイドさん以外のメンバー、顔を見合わせつつ少々表情筋強ばってます。
さすがのガイドさんは躊躇無く自動ドアに進み店内へ。なんだか閉まったら開かないような気がして慌ててガイドさんの後に全員続きます。
ギャラリー内は思ったより広くて、既に高い評価を持つ巨匠のものと、現代の作家さんの作品が立っていて見やすい高めの棚に並べられています。
魯山人の小作品もいくつか置いてあり、目が釘付けです。男性店主がギャラリーの概要や展示作品、巷の鑑定の裏話など気さくに説明してくださいました。
ただ、今後一人で行くのは勇気が要りそうです。店主も自覚があるのか、現在のGINZA SIX裏手の店舗はここより入りやすいですのでそちらにもお越しくださいとお誘い頂きました。
たぶん次回はそっちに行く気がします。。。
③ヒロ画廊―敷居の高さ率95%―
黒田陶苑を上回る、入店に勇気の要りそうな画廊No.1のヒロ画廊さんは3軒目に訪問しました。
画廊は再開発から免れている旧タイプビルの3階にあり、エレベーターで向かいます。
1階の壁には画廊からの飛び地展示とおぼしきジョアン:ミロ作品がありますがモノクロで壁色に調和しすぎて出入りする人が気にしていないようなのが少々残念。
店舗の出入口扉も手動になるので、アポ無し営業訪問よろしく気合込めないと店内に踏み入るのは厳しいんじゃないだろうかと思います。
訪問時には3名の作家さんの展示会が催されており、特筆したいのは戦後の日本を代表する版画家の一人に数えられる浜田知明(はまだちめい)作品。
こちらの画廊では度々取り上げている巨匠です。浜田氏は戦時色の濃い時代に生まれ、20代の大半を軍隊で過ごした典型的な戦中派と呼ばれています。
自らの体験に基づいた『初年兵哀歌』シリーズは写実より心の中を映したような暗示とデザイン、寓意が散りばめられたものですが、逆に戦争に送り込まれる兵士として虐待教育される少年兵たちの
悲哀が強く伝わります。彼の作品はどこか戦前の空気に逆行しているような今の社会にもっと求められるのではないかと思います。
東京・銀座 ヒロ画廊 - HIRO GALLERY, Ginza Tokyo
④靖山画廊―敷居の高さ率25%―
最後のギャラリーは最も一人で入り易そうだった靖山画廊さんです。
こちらは東銀座の歌舞伎座の向かいの路地に面した上階が住居スペースになっているビルの1階にあります。
道に面した大きなガラス窓から、中の展示の様子が良く見えますので、ふらりと入りやすいのではないでしょうか。
こちらは絵画や工芸など古典から現代アートまで取り扱うギャラリーで、ここ東銀座の他にはニューヨークにギャラリーがあります。
訪問時には現代アーティストの浅香弘能氏の発泡スチロールそっくり作品が展示されていました。
見た目が本当に発泡スチロールなんですが、実際はなんと大理石製。どおりでちょっとキラキラしてる。。。そして持ったら重い!
フェイクに発泡スチロールも散らばしたり並べたりしてるので、本物の作品当てっこが楽しい展示でした。
今回もあっという間の90分で、ツアーを終了しました。
靖山画廊を出ると、ちょうど目の前には千秋楽の歌舞伎座が道路向かいの正面です。
午前の部が終わって満足げな観客が歌舞伎座からゾロゾロと近くのカフェに足を運ぶのを見て、銀座でのアートの愉しみ方を妙に実感した気がします。
ちなみに翌日は銀座中心エリアでいくつもの茶道流派が野点手前を披露する銀茶会イベント開催予定。
AUTAMN GINZAオータムギンザの秋は粋で奥深いです。
ちなみに次回の銀座ギャラリー巡りは12月です。割とすぐですね。
ご興味のある方、是非ご検討ください。