必見『きらびやかに送る展』

2泊3日の関西旅ハイライトは正倉院展でしたが、正直こちらもそれを上回る勢いの激推し展覧会でしたのでご紹介です。
ちょっとでも古墳時代好きなら絶対行って、鑑賞後の興奮を分かち合いたくなるのが奈良橿原考古学研究所付属博物館で開催中の『きらびやかにおくる展』。
会場の博物館は、天皇家の祖先・神武天皇を祭神とする橿原神宮に隣接した、研究所附属の博物館。
隣接と言っても橿原神宮がたいへん広いので、最寄り駅は『橿原神宮かしはらじんぐう』駅より1つ手前の『畝傍御陵前うねびごりょうまえ』駅になります。徒歩5分の好立地です。
発掘対象の藤ノ木古墳は、法隆寺に程近い斑鳩町の直径約50メートルになる6世紀後半の大型円墳。
1985(昭和60)年から始まった発掘調査で金メッキされた豪華な馬具や冠、華麗な装飾の大刀等が多く出土し、古墳が未盗掘の状態である事が新聞にも掲載され大ニュースになりました。その貴重さと希少さに、出土品がそのまま国宝になる勢いで【国宝】指定され、大切に保管されていました。
その後2021年から文化庁主導で「国宝・藤ノ木古墳出土品修理事業」という、15年スパンでの再修理が開始。
今回の特別展では5年の節目を記念し、修理が完了した葬送用の装身具を中心に金銅製冠(6世紀後半)や画文帯仏獣鏡など、近畿・関東の他古墳の関連出土品も絡めて65点(うち国宝18点)を展示しています。展示の1/3が国宝・・・価値観が揺らいでしまいそうです。
訪問時、ラッキーなことに考古学研究所学芸課長青柳先生がギャラリートークが催されていまして、コバンザメのようにソソッと近づき解説を拝聴w
発掘現場ならではの苦労や小ネタ的なお話も伺えました。国宝だらけですが、注目展示をいくつかピックします。

「金銅製冠」6世紀
埋葬された棺の中から見つかった金銅製の冠です。緑青の金属板で花弁状の装飾や、鳩サブレのように可愛い鳥形が表現されています。
ものすごく綺麗に現存されていますが、修理ではアクリル樹脂を染み込ませて強度を持たせ、針金と飾りの部分は和紙を使って見えない箇所で補強しているそうです。
近くには再現された黄金色に輝く冠もあって眩いです。
「金銅製履」6世紀
古墳に横穴式石室で埋葬(合葬)されていたのは2名の男性でしたが、身元は不明ながらもかなりの身分と社会的地位が伺えるそうです。
副葬品としてかなり大きい、裏側にまでスパンコールがキラキラ取り付けられた靴が埋葬されています。
なんと大きさは38cmとの事。現代の成人男性でも靴サイズは大体30cm未満なのですから、その規格外ぶりが分かります。
ちなみに隣の展示室に博物館スタッフお手製の副葬品再現もありまして、厚紙で作った靴もありました。
【ご自由にお試しください】との事でしたので、ちょっと自分の足と比較対照。デカい(笑)
「銅鏡(神獣鏡・獣帯鏡・画文帯仏獣鏡)」
多くの銅鏡も出土しています。その中でも面白いのが【画文帯仏獣鏡】。
名称から分かるように鏡の裏面に4人の仏像とおぼしき浮彫と、その合間に4体のエビぞりになった獣が彫られています。
展示では鏡の浮彫部分をX線写真で撮影して上に並べているので、モノクロではっきりと形が判ってすごく見やすい。他でも普及していって欲しいです。
その【画文帯仏獣鏡】の隣の小振りな鏡は、奈良西北部の生駒郡平群町にある同時代の烏土塚古墳から出土した【四獣形鏡】。
調査では、どうも藤ノ木古墳の【画文帯仏獣鏡】を模倣して日本で造られた鏡=倭鏡なのだそうです。
素材の調査でも明らかですが、見た目で判るのは鏡の浮彫。
藤ノ木古墳のものは仏像をやや簡略化して表現しているのですが、それでも【人】を表現しているのが分かります。
一方、烏土塚古墳。獣はまぁなんとか近い形として表現されていますが、合間の仏像・・・クラゲ?宇宙人?にしか見えないw
たぶん模倣した職人も対象が何だか分からないけど近い柄で作った結果、こうなったのでしょう。伝言ゲームは難しいです。

保存と修復の見本
後半には修復に使う解析のカメラや3Dプリンターといった器具や修復に試行錯誤している様子の展示がありました。
銅鏡のひび拡大を防ぐアクリル樹脂での補強の様子、「金銅製履」で装飾されたスパンコール状の金属装飾を支える針金部分にあたる資材の試作品がケースにズラリと並んでいました。ポリエチレン糸、絹糸、レーヨン糸、楮(和紙)と何通りも試していたのが分かります。
1cmにも満たない金属片を支えるのにどれだけ手間を掛けて検討していったのかが伺えて、修復に携わった皆様全員に最敬礼な気分でした。
青柳泰介学芸課長は現在の修復の進捗について「今回はひと段落した修復の展示をさせていただきましたが、まだまだ紹介したい多くの出土品があり、数年以内に後2回程は皆さまに公開できる機会を設けたい」と仰っていました。
そして公開の後は、より出土品の修復作業に残りの10年を専念する予定との事でした。
1500年近い前の古代の空気がこんなにも感じられる国宝だらけな展覧会があと2回‥‥脳内カレンダーに赤字で訪問予定を書き込みます。
あちらもこちらも【国宝】で、貴重な展示品の盛りだくさんさに浮かれまくっていましたが、夕方の正倉院に間に合わせるべく、ものすっごく後ろ髪を引かれる・・・なんなら後ろ髪を鷲掴みされた気分で博物館を後にしました。
この貴重な展覧会は今月いっぱいになります。関西近縁の方、訪問大推奨です!
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奈良県立橿原考古学研究所附属博物館
〒634-0065 奈良県橿原市畝傍町50-2
TEL 0744-24-1185
https://www.kashikoken.jp/museum/index.html
開館時間:午前9時から午後5時まで(入館は午後4時30分まで)
休館日:毎週月曜日(祝日の場合は開館、翌日休館)
