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アートコラム|この名画・名品を観に行きたい!(おうちで楽しむ)美術館散歩 Vol.01

格子を隔てた2つの世界。吉原遊廓の内と外を、ドラマティックな明暗と陰影で描き出した葛飾応為の代表作「吉原格子先之図」

葛飾応為 紙本著色一幅 26.3×39.8㎝ 文政~天保(1818~1844)頃 太田記念美術館蔵
葛飾応為 紙本著色一幅 26.3×39.8㎝ 文政~天保(1818~1844)頃 太田記念美術館蔵

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この名画・名品を観に行きたい!(おうちで楽しむ)美術館散歩

私たちが普段、美術館や博物館に足を運ぶときは、あるテーマの企画展や特別展などを鑑賞しに出かけることが多いのではないだろうか。多くの美術館や博物館では、各館のコンセプトに沿って、絵画や彫刻、版画、工芸など様々な作品を収蔵している。それらの作品の購入や寄贈により、形成されていくコレクションがどのようなものか、あるいはそれらの所蔵作品がどのような変遷を経ているかなども、各美術館や博物館の個性や特徴を知って、より深く鑑賞を楽しむ手掛かりとなるのではないだろうか。
「この名画・名品を観に行きたい!美術館散歩」では、そんな美術館・博物館の収蔵作品から注目すべき作品を1点ずつご紹介していく。

「吉原格子先之図」葛飾応為 この名画・名品を観に行きたい!美術館散歩 Vol.01 / 太田記念美術館

江戸時代の高級遊女は、結った髷(まげ)にきらびやかな簪(かんざし)や櫛などを20本ほども挿していたという。現代では、歌舞伎の人気演目「助六(すけろく)」の舞台において、助六の恋人役である花魁の揚巻(あげまき)が纏う華やかな打掛姿に、その多数の簪で飾り立てた豪奢な髪型を見ることができる。

まさに格の高い遊女の代名詞ともいえる、きらびやかな髪飾りの女性たちが、壁沿いに並んで座っているのは、吉原遊廓の妓楼「和泉屋」の店内である。格子越しに往来から覗く人々に、自分たちの姿を見せて、客を待っている。

この肉筆浮世絵を描いたのは、葛飾北斎の娘、応為(おうい)である。

格子の向こう側の一見、華やかな世界と、暗闇に提灯の明かりのみで人々の影を浮かび上がらせる、格子の手前の自由な往来の世界。店内の明るい色彩で描かれた遊女たちの多くは、格子に隠れて表情を伺い知ることができない。光と影の対比が強調されたドラマティックな画面構成に、描かれた人々のそれぞれの物語が浮かびあがってくるようである。

画中に描かれた3つの提灯には、それぞれ、名前の「栄」と画号の「応為」から一文字ずつが、隠し落款として記されている。

小説家の朝井まかてが、葛飾応為の絵師としての生涯を描き出した『眩(くらら)』という小説の装丁には、この作品「吉原格子先之図」が表紙の横幅いっぱいに配置されている。いったいどんな物語や人間模様が展開される小説なのかと、思わず手にとってしまうだけの魅力が放たれた浮世絵作品である。

また、この小説が生まれるきっかけとなったのが、「吉原格子先之図」の実物を美術館で見たことだったそうである。

この作品を所蔵するのは、東京都渋谷区にある浮世絵専門の美術館、太田記念美術館である。

数年に1度ほど展覧会に出展される機会がある。ぜひその貴重な機会が訪れた際には、間近で楽しんでみていただきたい名作である。

太田記念美術館
東京都渋谷区にある浮世絵専門の美術館 太田記念美術館
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太田記念美術館
〒150-0001 東京都渋谷区神宮前1-10-10
開館時間 10:30〜17:30(最終入館時間 17:00)
休館日 毎週月曜日(祝日の場合は開館、翌火曜日休館)、展示替え期間(月末)、年末年始(12/21~1/5)

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