5.0
日本が世界に誇る天才芸術家・山下清の大回顧展
農村の風景から虫や草花、そしてヨーロッパの街並みまで…山下清の目に映るたくさんの美しい風景・瞬間が切り取られ、〝繊細で緻密な貼り絵〟という、山下清にしかできない表現方法で描かれていることに深く感動しました。
人間業とは思えぬほど細かくちぎられ幾重にも重ねられた貼り絵の細かさに目を見張り、その類まれな色彩センス、記憶力、構成力、そして素朴で心温まる文章…そのすべてが山下清という一人の天才芸術家の中で奇跡のように組み合わされ、美しい作品として世に産みだされたことにただただ感動しました。
回顧展で時代ごとに作品を鑑賞することで、作風の変遷や苦労して技術を磨いたこと、晩年は長年酷使した目の不調に苦しみながらも陶芸など新たな表現方法を模索し続けたことなどが分かり、作品を通して彼の芸術家としてのすばらしさに触れることができました。
テレビ出演やドラマなどで時代の寵児となり山下清自身が愛されすぎた故、作品自体を知らぬ世代も増えてきたかもしれませんが、山下清は日本が世界に誇る唯一無二の天才芸術家であることを改めて感じることのできる大回顧展だったと思います。