5.0
写実性は目的ではなくひとつの手段
個人的に写実絵画はあまり好きではないのですが、好きではない人にこそ見て欲しいのがこの諏訪敦の作品です。
彼の初期の頃の作品は恐らくお手本通りのアカデミックな写実絵画ですが、近年の作品は乱反射する光の描き方が特徴的で、それは「ときに視野の中心が溶解する現象や、辺縁で脈打つ強烈な光に悩まされることがある」と本人が語っているように、その現象が画布に表現されているところが面白いなと思いました。それは写真のように描くということではなく、諏訪自身の網膜に飛び込んでくる現実をそのまま描写するという、これこそ真の写実絵画だということなんだと思いました。
個人的に好きだった作品は病院のベッドに横たわる父親の絵です。どこかアントニオ・ロペスの絵画を彷彿させる表現でした。