諏訪敦「眼窩裏の火事」

府中市美術館

  • 開催期間:2022年12月17日(土)~2023年2月26日(日)
  • クリップ数:42 件
  • 感想・評価:12 件
諏訪敦「眼窩裏の火事」 府中市美術館-1
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《目の中の火事》2020年 白亜地パネルに油彩 27.3×45.5cm 東屋蔵
《依代》2016-17年 紙、パネルにミクストメディア 86.1×195.8cm 個人蔵
《HARBIN 1945 WINTER》2015-16年 キャンバス、パネルに油彩 145.5×227.3cm 広島市現代美術館蔵
《father》1996年 パネルに油彩、テンペラ 122.6×200.0cm 佐藤美術館寄託
《不在》2015年 キャンバス、パネルに油彩 32.5×45.3cm 個人蔵
《まるさんかくしかく》2020-22年 キャンバスに油彩 50.0×72.7cm 作家蔵
《Mimesis》2022年 キャンバス、パネルに油彩 259.0×162.0cm 作家蔵
《Solaris》2017-21年 白亜地パネルに油彩 91.0×60.7cm 作家蔵
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この展覧会についてABOUT THIS EXHIBITION

緻密で再現性の高い画風で知られる諏訪敦は、しばしば写実絵画のトップランナーと目されてきた。しかしその作品を紐解いていくと彼は、「実在する対象を、眼に映るとおりに写す」という膠着した写実のジャンル性から脱却し、認識の質を問い直す意欲的な取り組みをしていることが解る。

諏訪は、亡き人の肖像や過去の歴史的な出来事など、不在の対象を描いた経験値が高い。丹念な調査の実践と過剰ともいえる取材量が特徴で、画家としては珍しい制作スタイルといえるだろう。彼は眼では捉えきれない題材に肉薄し、新たな視覚像として提示していく。

この展覧会では、終戦直後の満州で病没した祖母をテーマにしたプロジェクト《棄民》、コロナ禍のなかで取り組んだ静物画の探求、そして絵画制作を通した像主との関係の永続性を示す作品群を紹介する。それらの作品からは、「視ること、そして現すこと」を問い続け、絵画制作における認識の意味を拡張しようとする画家の姿が、立ち上がってくる。

開催概要EVENT DETAILS

会期 2022年12月17日(土)~2023年2月26日(日)
会場 府中市美術館 Google Map
住所 東京都府中市浅間町1丁目3番地(都立府中の森公園内)
時間 10:00~17:00 (最終入場時間 16:30)
休館日 月曜日 
12月29日(木)~1月3日(火)、
1月10日(火)
※ただし、1月9日は開館
観覧料 一般 700円(560円)
高大生 350円(280円)
小中生 150円(120円)
  • ※( )内は20名以上の団体料金
    ※未就学児および障害者手帳等をお持ちの方は無料
    ※府中市内の小中学生は「府中っ子学びのパスポート」提示で無料
    ※企画展「諏訪敦『眼窩裏の火事』」観覧料金で常設展も観覧できます
TEL050-5541-8600(ハローダイヤル)
URLhttps://www.city.fuchu.tokyo.jp/art/

府中市美術館の情報はこちらMUSEUM INFORMATION

府中市美術館 府中市美術館

感想・評価 | 鑑賞レポートREVIEWS

5.0

写実性は目的ではなくひとつの手段

個人的に写実絵画はあまり好きではないのですが、好きではない人にこそ見て欲しいのがこの諏訪敦の作品です。
彼の初期の頃の作品は恐らくお手本通りのアカデミックな写実絵画ですが、近年の作品は乱反射する光の描き方が特徴的で、それは「ときに視野の中心が溶解する現象や、辺縁で脈打つ強烈な光に悩まされることがある」と本人が語っているように、その現象が画布に表現されているところが面白いなと思いました。それは写真のように描くということではなく、諏訪自身の網膜に飛び込んでくる現実をそのまま描写するという、これこそ真の写実絵画だということなんだと思いました。
個人的に好きだった作品は病院のベッドに横たわる父親の絵です。どこかアントニオ・ロペスの絵画を彷彿させる表現でした。

5.0

見逃せない希有な展覧会

ホキ美術館を何度か訪れるまでは、いわゆる写実絵画家の存在をほとんど知りませんでした。一般の美術館では彼らの作品を目にする機会はほとんどありません。写真そっくりに描写する彼らの作品が美術界であまり評価されないのか、あるいは、注文制作が多く作品が個人蔵になってしまうためでしょうか。
その写実絵画家の一人である諏訪敦氏の作品が、遠いホキ美術館に行かなくても、都内の美術館でまとめて観られるとはうれしい展覧会です。きっとホキ美術館から大量に作品を借りてくるものと予想していましたが、今回展示されている作品は個人蔵か作家蔵のものがほとんどで、観たことのない作品ばかりでした。
第一章の「棄民」シリーズでは、終戦直後の満州で亡くなった祖母をテーマにした《依代》と《HARBIN 1945 WINTER》が展示されていました。砂に埋もれた遺体が朽ちていく光景は美しくも凄まじく、現代の九相図といわれた松井冬子の「浄相の持続」から「四肢の統一」までの一連の絵画を連想させます。
第2章の「静物画」シリーズの《目の中の火事》では各種ガラス器の質感を描き分けるテクニックに驚くと共に、説明文により展覧会のタイトルとなった「眼窩裏の火事」の意味を知りました。第3章「わたしたちはふたたびであう」で描かれた舞踏家大野一雄氏の肖像画も感動的でした。
府中市美術館の展示スペースの関係で作品数は少なかったですが、秀作揃いで素晴らしい展覧会でした。府中市臨時駐車場(美術館利用者は無料)はいつも空いているのに、今回は満車に近い状態でした。府中市美術館にこんなに観客がいるのは初めてです。テレビや新聞で何度か紹介されたため、注目度が上がったのでしょうか。

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jyusuranさん、niko3さん、micco3216さん

5.0

写実絵画の魅力

府中市美術館、諏訪敦さんの「眼窩裏の火事」が素晴らしかった。消えかかりつつもまだそこにある命のゆらぎや、キャンバスの中で時間が巻き戻され、そのまま時間が止まるのを、圧倒的なスーパーリアリズムの技術によって目の当たりにした気がした。

展示の最終室、老いて眠る舞踏家・大野一雄の、胸の上で重ねられた両手の細かなシワを見て、先年亡くなった祖母の柔らかくて温かい手の感触を思い出し、不覚にも涙。

これまで写実絵画には「ホンモノソックリ」という以上の感想を持ったことがなかったし、上手ければ上手いほど、ただ客観的に描くのならば写真と何が違うのだろう、という見識でいたのだけれど。

被写体の限られた生の時間を余すことなく見つめて、その温もりやかすかな息遣いまでを筆でなぞり、キャンバスの上に乗せて永遠の命を吹き込もうとするかのような真摯さが感じられて、強く強く、胸を打たれた。

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niko3さん

5.0

細密です、そして、いろいろと深いです

評判がよかったので少々遠い府中まで伺いました。
眼窩裏の火事、は、、片頭痛の前触れの、閃輝暗点ですね。芸術には苦痛がともなうのだろうか、、描き続けていただきたいのだけど、おからだも大事にしていただきたいと思います。
ご自身のルーツにまつわるシリーズ、不在のひとびとのポートレイト。魂を写し取ったかのような細密さに、長い時間見入りました。疲れましたが、非常に充実した時間でありました。また拝見したいと思う展示でありました。

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niko3さん

5.0

画家と美術館による作品展

閃輝暗点という視野の中心が溶解したようになる現象に病気の諏訪氏。その炎のように揺らぐ光も絵に落とし込むことで、写実的でありながら非現実な絵画とも感じる作風。
美術館の造りもあって、3つの部屋・3つの章に分かれた構成となっていますが、第3章で紹介されている「描き続ける限り、その人が立ち去ることはない」という試みの作品は、とても可能性のある表現手段なのではないかと感じました。
しかし、私が個人的に感動したのは第2章「静物画について」です。グラスや食べ物などオーソドックスな題材を描いた静物画は、それ自体も綺麗ですが、展示方法が本当に美しかったです。とても暗い部屋で”各絵画にだけ光が差す”ように設置されたスポットライトの効果で、絵自体が発光しているようで、絵画の瑞々しさを倍増させていました。
諏訪敦という画家の力とそれを愛している美術館の合作、という部屋になっていました。学芸員さんたちの気概が感じられる美術展。

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niko3さん、micco3216さん

5.0

見えるものと認識できるものの全て、描き現す諏訪の脅威の画力。

コロナ禍が少しだけ落ち着き、リスクの高い高齢者を在宅で看ている身であっても、範囲は狭いながらも、少しは美術館博物館を訪れることが出来るようになった今年度。質の高い展覧会に多く出会うことができ、とても嬉しく思いました。個人的好みから高いポイントの蒔絵や工芸、仏教美術関連の展覧会が多く観られましたし、終盤にご褒美のような佐伯祐三展にも出会えました。そんな中、五本の指に入れたい展覧会に、この府中市美術館「諏訪敦-眼窩裏の火事」があります。諏訪敦の作品にはホキ美術館で幾度か出会い、そのただならぬ画力に触れるのは、もう感動しかないのですが、「棄民」の数点がとても印象的でしたので、「ぶらぶら美術博物館」を見ても、なかなか出かける決心がつかずにいました。実家墓参に絡め、意を決して出かけてみれば、まさに身震いするほどの感銘を受け、その日その後に廻る予定にしていた他館を中止にして、「府中の森公園」で暫くボーっと時を過ごしてしまいました。これはもう一市立美術館の展示とは思えませんでした。諏訪氏は「眼で捉えられない題材も描きだそうと、新たな表現を模索しつづける」「絵画制作における認識の意味を拡張しようとする」などと紹介されていました。丹念な調査や膨大な取材量と、コロナ禍も逆手に静物画の異色な研究も、それらを背景にして、ひとの人生や歴史や世界情勢や、物質や光や、全てを、写実じゃない写実にして描き現し、最後の章で見せたのは、対象人物と相対する時間の超越までも、その画力で描き現しきっているのです。絵画技術がここまで来たか、驚き感動すると同時に、背筋の寒くなる思いもありました。絵画は…、私が生きているうちに、いったいどこへ行くのでしょうか。

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micco3216さん

5.0

写真よりもリアル

写真のような絵なのかなと思って行ったのですが,実際は写真以上にリアルで心に迫ってくるものがありました。人物以外にも豆腐の質感や水面の表面張力を描いたもの,柿などが印象に残りました。亡くなった人物を描くためにいろいろな準備をするのですね。もっとこの画家のことを知りたい,絵を観てみたいと思わされた展覧会でした。

  • 0
  • BY poh

5.0

戦慄すら覚えるリアリズム

画家に対して絵が上手いなんてのは、ある意味失礼な感想かもしれないが
それほどまでに実にリアルで生々しい。
描く対象をとことん取材し、まるで自分の血肉にしたかの様な絵画は
畏怖の念すら覚える。それは静物画も同様で、そこにあるかの様にリアルで、それでいて近寄りがたさも感じる。イカの絵なんて艶感とか水っぽさとか、臭いも感じ取れる位にリアルです。
第3章の舞踏家・大野一雄を描いた展示室は圧巻の極み。躍動感のある
パフォーマンス姿を描いた作品と、寝たきりで横たわる老齢の姿を描いた作品の対比もずーっと眺めていられる。
展示数は多くないが、一つひとつの作品の重みがすごいので満足感は
十二分にあります。ポストカードを何点か買って家で見たけど、実物の
温度感は感じられないのでやっぱり、生で見るべき画家だと思いました。
常設展もなかなか良かったです。

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karachanさん、さいさん、morinousagisanさん

5.0

期待以上

自分の中で諏訪氏といえば、裸婦というイメージであったが、今回は良い意味で裏切られた。印刷物でしか見たことのない彼のお父様の絵を目の当たりにして、たとえようのない切なさを感じた。
自分も父を亡くしたばかりで、生前それほど深く交流してこなかった父に申し訳ない感情が溢れてきたのだ。
諏訪氏の眼は常人には見えない何かを記録し、再現してしうのだろうか。

3.0

この細密写実画家は、リサーチ系作家でもある

 この画家、細密写実系で有名だが、現代アート系で例えればリサーチ系作家でもあるともいえる。モチーフとなる人物や自身のルーツ、高橋由一の静物画などをリサーチして描く。1/13~2/18の成山画廊(九段下)の個展も楽しみ。

THANKS!をクリックしたユーザー
niko3さん

5.0

静物画が凄い

諏訪敦、年の瀬にスゴイものを見てしまった感があります。
出品数は少ないですが一つ一つが濃密濃厚で胸を打たれました。
リアル、写実、超絶技巧なんていう段階はとうに通過しているのだなと衝撃を受けました。
九相図、高橋由一豆腐、五姓田義松老母なども思い浮かべました。
写真撮影不可で正解、自身の眼でしっかりと静かに鑑賞したい展覧会です。
本展の図録も発行されていてやや高額ですが再現度の高い良質プリントです。
コレクション展では動物江戸絵画、芦雪、北斎卍、蕪村など嬉しいです。
オススメします。

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シンディさん、さんぽさん、Audreyさん、micco3216さん、morinousagisanさん

5.0

実は写実絵画ではない

2016年4月に放送されたNHKのドキュメンタリー番組「忘れられた人々の肖像 ~画家・諏訪敦 “満州難民”を描く~」を見て、諏訪敦の作品は手法的には写真のように描く写実絵画なのだけど、それだけではない、綿密な取材と制作における試行錯誤を繰り返して出来上がる、ということを思い知らされた。

展示は、脳腫瘍で亡くなった諏訪の父の入院中を描いた《father》(1996)から始まって、その父が満州へ移住して、母と弟、つまり諏訪の祖母と叔父を亡くしたことから描かれた「棄民」シリーズを展示する第1章。静物画をテーマにした第2章(烏賊と豆腐、ガラスの器に注目)。そして舞踏家の大野一雄を描いた《大野一雄立像》(1999/2022)や寝たきりとなった大野を描いた《大野一雄》(2008)などの人物画を展示した第3章で構成されている。

どの作品も印象深いのですが、作品以上に印象に残ったのが展示方法でした。府中市美術館の展示室には大きな展示ケースがあったはずなんだけど、ケースはなく、おそらくはケースの前に壁を作って壁紙を貼り、作品はほぼ壁に掛けられている。そして第1章と第3章は白い壁紙に作品が掛かっているのですが、第2章は全体に黒い。黒い壁紙に掛けられた作品もあるのですが、このために作られた黒い台にはめ込まれた作品がわりとランダムな感じで配置されてます。台によっては裏表、2作品が飾られているものもあるので要注意です。展示のデザインがかっこよくて、写真を撮影できないのは、少々残念でした。

ちなみに、見る前に諏訪敦と大竹昭子の対談をまとめた「絵にしかできない」(カタリココ文庫)を読んでおいたので、各作品の意味はそこそこ理解できたと思います。

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《目の中の火事》2020年 白亜地パネルに油彩 27.3×45.5cm 東屋蔵

《依代》2016-17年 紙、パネルにミクストメディア 86.1×195.8cm 個人蔵

《HARBIN 1945 WINTER》2015-16年 キャンバス、パネルに油彩 145.5×227.3cm 広島市現代美術館蔵

《father》1996年 パネルに油彩、テンペラ 122.6×200.0cm 佐藤美術館寄託

《不在》2015年 キャンバス、パネルに油彩 32.5×45.3cm 個人蔵

《まるさんかくしかく》2020-22年 キャンバスに油彩 50.0×72.7cm 作家蔵

《Mimesis》2022年 キャンバス、パネルに油彩 259.0×162.0cm 作家蔵

《Solaris》2017-21年 白亜地パネルに油彩 91.0×60.7cm 作家蔵

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