5.0
感想が遅くなり申し訳ありません。
海外の画家に大きな影響を与えたことでも知られ、多くのコレクターや研究者が絶賛し、世界で最も有名な日本人アーティスト、葛飾北斎。意外にもサントリー美術館ではこれが初めての北斎展。大英博物館が所蔵する北斎作品を中心に、国内の肉筆画の名品とともに、北斎の画業の変遷を追い、約70年におよぶ北斎の作画活動の中でも、特に還暦を迎えてから90歳で亡くなる前までの30年間に焦点。数多くの代表作が生み出された過程が、英国コレクターたちの眼と共に、紹介されている。世界有数の浮世絵コレクションを誇る大英博物館から、特に刷りの優れた北斎作品が並ぶ。《冨嶽三十六景》の「凱風快晴(赤富士)」の赤や「神奈川沖浪裏」の青がとても鮮やかだ。保存状態がスコブルいい。これらを今日私たちが見ることが出来たことに、ひたすら感謝したい。北斎漫画も版画も素晴らしいが、最後の章に並ぶ大英博物館や日本の北斎館などが所蔵する肉筆画はまさに圧巻。章タイトル「神の領域―肉筆画の名品」も納得だ。「弘法大師修法図(西新井大師所蔵)」の迫力もさることながら、特に「流水に鴨図」「河骨に鵜図」の大胆さと繊細さに感動した。今まで北斎の展覧会を幾度も見て来てはいたが、今回本展では、画力・題材・表現・技法ばかりでなく、つくづく北斎の強烈な意志なるものに圧倒され、増々魅せられた感がある。本当に良いものを見させて頂いた。