美術の中のかたちー手でみる造形 兵庫県立美術館2023年コレクション展Ⅱ《小企画》
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- by morinousagisan
兵庫県立美術館コレクション展で開催されてきた「触って作品を鑑賞できるシリーズ」は今回で33回目を迎えます。今回の展示は「遠藤薫 眼と球」です。
作家さんの名前を知る前に大きな落下傘の画像を目にして「あっ!あの作家さんだ!」と思いました。この3月に初めて足を踏み入れる港湾施設の「住友倉庫」で入口真正面に見えた作品の作家さんでした。港湾施設の古く大きな貯蔵倉庫で出会った作品たちは、あまりにも衝撃的でした。(※参考:拙ブログ『KOBE Re:Public Art Project KORPA 特設会場「住友倉庫」』)そして、私は遠藤さんの作品にはその前にも出会っていたのでした。大阪中之島美術館で。
遠藤薫さんは、「国際芸術祭 あいち2022」にも参加された新進気鋭の人気若手作家さんであったことを今回再認識しました。
※遠藤薫HPとプロフィールについては⇒コチラから
本展の企画にあたり、遠藤さんは、視覚に障害のある方たちにヒアリングを行いました。展示室ではその動画も視聴できるので、そちらも是非ご視聴ください。そこからはいつも通りの作品が触って鑑賞できれば良いという答えが返ってきました。次々と大きな作品に取り組みながらも、遠藤さんにこの春お子さんが産まれました。「生命の誕生」を自身の身をもって体験されたのです。(長い人類の歴史の繰り返しにも思いを馳せられたかもしれません)展示会場で配布されたハンドアウトに「視覚とは、眼球とはなにか、生きて死ぬこと、人間とはなにかについて知りたくなりました。この場所は、答えが明確に示されているものではありません。私の思考の痕跡の集積自身が、私の無意識にふれ、結果的に、自ずと何らかの象徴を形造ってしまったのだと思えます。」とありました。まだまだ若い作家さんなので、これから「自分自身への問い」とその思考の痕跡が重ねられていくのだろうと思いました。
ハンドアウトより
「この展覧会のタイトルは『眼と球』、めときゅう、Me and Q、私と問い、です。」
「何かが生まれていく」過程を歩いて、触って、臭って体感する。造形作品には、多分に触って感じてこそのものであったはず。例えば、茶の湯の茶碗なども両手の中に包み込んでこそのものだと思い続けてきました。
「住友倉庫や大阪中之島美でも作品拝見しました」とお伝えすると、遠藤さん自身も「あの時も本当は触ってほしかったんです」とのこと。落下傘に仕立て上げられた麻布のザラザラ感や名画の刺繍の裏の糸の動き、丹波で焼かれた陶器などなど手から伝わるものは視覚に頼っただけでは伝わらない全く別の感覚です。
本展に関連して「手でふれ、こころに触れる。」として関連イベントが予定されています。
兵庫県立美術館HP『《小企画》美術の中のかたち―手で見る造形 遠藤薫 眼と球』
詳しくは⇒◆
[特集] Welcome! 新収蔵品歓迎会 昨年新たに加わった「新収蔵品」を主役に大学のサークルの”新歓”のごとくに既存の所蔵品とともにテーマごとにお披露目されています。同時開催中の特別展『Perfume COSTUME MUSEUM』にも因んでコスチュームに着目した作品にもご注目下さい。
コスチューム研究会@常設展示室1
今期のコレクション展のメインヴィジュアルとなっている料亭の女将風の写真、インパクトありますがこれって何って思いました。並べて見ると「なるほど」と納得させられて「あるある」と吹き出してしまうのです。様々なコスチューム/制服を着て写る作家の澤田自身は、誰もがその職業に抱くイメージを体現しています。この作家さんどこかで見た覚えが・・・ご本人がこちらも多分変装して写る証明書写真の作品の人でした。見た目、制服で判断している自分にはねかえってくるちょっとおかしな作品、有名人や絵の中の人になりきる森村泰昌とは違ってもっと身近な存在を対象としています。
勧誘-どこかで会ったことある?@常設展示室1
澤田の作品から振り返って、2面の仕切りの間から見える作品に私は「あっ!」と小さく叫んでしまいました。こちらは本当に観たことある・・・と思ったが、描かれた小さな部分が違っていたのでした。学芸員さんが、私が観たことがあると思った方の小出の作品写真を見せてくださった。大原美術館蔵の《Nの家族》です。二作品をじっくり見て描かれているものを見比べてみるのも面白い。小出楢重のアトリエが芦屋市立美術博物館の庭に復元・保存されていて、兵庫県ゆかりの画家です。
小出の作品の向かいに展示されているのは、兵庫県美ではお馴染みの元永定正(1922-2011)の作品かと思いきや、元永の作品と並べて展示されているのは、丸本耕(1923-2014)の1966年《作品》でした。「具体」の時代を背景に、元永とは同世代です。学芸員さんから興味深いお話を伺いました。丸本は神戸の元町で喫茶店を営んでおり文化サロンのような場でした。そこで初めての個展を開いた横尾忠則の作品が、デザイナーの灘本唯人の目にとまり横尾さんが神戸新聞社に入社するきっかけとなったそうです。丸本耕について、もっと研究が進めば当時の文化人と称する人たちの様々なつながりが更に明らかになりそうです。
身体研究会@常設展示室2
身体をモチーフにした作品の展示室です。なんだかツチノコのような塊のフォートリエ,ジャンの《トルソ》も触ってみたくなるフォルムで魅力的でしたが、新歓と言うことでアーミテイジ作品、平面と造形、二次元と三次元が往還します。
風景愛好会@常設展示室3
菱田春草《夜明けの海》朦朧体で描かれたお軸もあり、足が止まりました。
休部-ただいま不在中@常設展示室3
リーフレットには「そこに『いない』ことが、逆にその存在を際立たせる」とある。作品リストに恩地幸四郎とあったが、見逃したようです。
美術の中のかたち同窓会@常設展示室5
兵庫県美の彫刻作品群は、前身の兵庫県立近代美術館の頃より充実していると感じています。お馴染みの彫刻たちが同窓会。視覚に障がいのある方は、一部の展示中の作品を手でふれて鑑賞できます。(要事前予約)
体験入部@常設展示室5
この国谷のネオンの作品は、その後方にあるジャコメティの作品があってこそ成立します。学芸員さんの説明を受けて初めて「へぇー」ってなる。ネオンで何が描かれているかは背の高い人でもなかなか判読は出来ないだろう。画像が鮮明でないので床に映った文字は分かりにくいが、実は《Alberto Giacometti/SteleⅠ/1958/Bronze/167×22.3×20.5》つまり後方のジャコメッティ作品のキャプションを表していました。
小磯良平と金山平三記念室を経て
須田剋太交流会@常設展示室6
須田剋太と言えば、司馬遼太郎の『街道をゆく』の挿絵と結びつきますが、
この展示室では、木村重信元館長旧蔵品の寄贈を契機に木村先生と生前交流のあった須田剋太の作品と珍しい書の作品も併せて展示されています。長谷川三郎との出会いから抽象画を描くようになり「具体」の吉原治良らとも交流、時代を映した作品が目にとまります。また前衛書家の森田子龍との交流は県美で来年3月に始まる「スーラージュと森田子龍」にも繋がります。
私が申し上げるまでもなく、兵庫県立美術館はかなりかなり広い。展示室の他にもAndo Gallery(無料)があり、まるで迷路のような安藤建築はバエスポットの宝庫です。神戸ならではの六甲山と海の景色も楽しんで下さい
【開催概要】2023年度コレクション展Ⅱ
[特集] Welcome! 新収蔵品歓迎会
[小企画] 美術の中のかたち―手で見る造形 遠藤薫 眼と球
- 会期:2023年9月9日(土)~12月24日(日) ※会期中一部展示替えあり
- 開館時間:10時~18時(入場は17時30分まで)
- 休館日:月曜日 ※ただし9月18日(月・祝)と10月9日(月・祝)は開館、9月19日(火)と10月10日(火)は休館
- 会場:兵庫県立美術館 常設展示室(1階、2階)
- 観覧料:一般 500円、大学生400円、70歳以上250円、障害者手帳等をお持ちの方(介助の方1名無料)、高校生以下 無料 ※特別展とのセット料金あり
- 詳しくは ⇒ ◆
★お得情報!【コレクション展無料観覧日】
- 毎月第2土曜日は公益法人伊藤文化財団の協賛により無料
- 文化の日を含む3日間:1/3(金・祝)、11/4(土)、11/5日(日)
- 関西文化の日:11/18(土)、11/19(日)
- 敬老の日(県内居住の70歳以上のみ無料)