2024年はアーバン・アートからスタート
都市建築や生活様式の触発により、街で発達したあらゆる視覚芸術を表す【アーバン・アート】。
ストリート・アートとグラフィティを連結したというこの言葉自体知ったのはつい最近。
景観の一部になる多様性とか複合文化を謳う今に便利な言葉だなと感心し、さて自分にとってその言葉にもっとも当て嵌まる【街】はどこだろう?
と思い浮かぶのは東京都中央区の【銀座】。
(ちなみに『アーバン=都市』って意味だと知ったのも昨年『アーバン・ベア熊』が連呼されたつい最近。。。遅。)
コロナ明けの令和6年、アート鑑賞初めのスタート地点となる【銀座】2024年の新春アートをご報告いたします。
徒然と銀座アート鑑賞ポイントをいくつかピックアップ。
①GINZA SIX 観世能楽堂【新春能】
銀座4丁目交差点に程近い複合施設GINZASIXの地下3階・観世流能楽堂で開催される新春能です。
年始はなんと、先着順無料での鑑賞が可能です!なので年明け朝っぱらから整理券目指して並びます。
寒いんですけどね……寒がり血圧低めな私にはなかなかの高ハードルですが、朝9時のチケット配布で席を確保。
演目は3部制で11時~13時~15時~から。注目は1部の演目=一人翁ひとりおきな / 仕舞 老松・東北 / 舞囃子 高砂たかさご。
どれも年明けに相応しい演目で、【翁】は芸能というより神前の儀式要素が高く、高砂は一昔前なら結婚式で大合唱した演目。
鑑賞したらというか、その場にいるだけで自動的に厄落としとご利益頂けそうです。
しかし今年はチケット並びが遅かったので(寝坊)、鑑賞したのは第3部=仕舞 嵐山あらしやま/ 草子洗小町そうしあらいこまち/ 能 猩々しょうじょうでした。
が、負け惜しみでなく大正解でした。特に【猩々しょうじょう】は見たかったので。先月の歌舞伎座演目にも【猩々】があり、見比べてみたかったのです。
結論はどちらも素晴らしかったですね。能と歌舞伎では趣きが全然違うんですけど、その違いが面白いです。
猩々は中国発祥の実在しない朱い猿の妖獣なんですが、日本に伝わると妖獣というより霊獣、お酒が好きで陽気でおめでたい神聖な霊獣にだんだんランクアップ(笑)
酒好き霊獣の様子が分かり易いのは歌舞伎に軍配が上がりますが、霊獣としての神聖さが感じられるのは能楽のように思います。
②ショップのディスプレイアート1:和光
銀座の不動のランドマーク、SEIKO HOUSE GINZAビルは季節毎のディスプレイも人気です。
東京の一等地としての『顔』で度々画面に映る和光の時計の真下、百貨店三越と向かい合う4丁目交差点に面した1Fのディスプレイは街を象徴するアーバン・アートの代表格。
現在1月24日まで、龍が空を舞うAR(※Augmented Reality=現実世界を立体的に読み取って仮想拡張する技術)ショーが付随するデジタルアートが体感できます。
ディスプレイ左隅にあるQRコードを読み込むと、スマホ画面上で巨大な龍がビルから舞い上がり、雲の中からSEIKO時計広告を務めるスポーツマンのおみくじが楽しめるのです。
PCからもリンク可能です。
https://seiko-newyear2024.jp/wd/
ARもビックリですが、展示の白い龍(辰)オブジェが凄く格好良くて素敵で道往く人は皆写真撮影。
もちろん私もパシャパシャ。兵庫出身のアーティスト・下田昌克氏の作品です。
素材はキャンバス生地で、巨大な布をミシンや手で一つひとつ縫うという膨大な手間から生み出されています。
ものすごく写真映えする龍に、今年が辰年なんだなとやたらと実感が湧いてきました。
③ショップのディスプレイアート2:エルメス
フランスの馬具発祥ブランド【エルメス】の銀座店舗は、4丁目交差点に面した晴海通りで和光から2ブロック先にある全面ガラスブロックが輝く存在自体がアートな建物。
設計はパリのポンピドゥー・センターや関西国際空港ターミナルビルを設計したイタリア人建築家レンゾ・ピアノ氏です。
たまに通りかかる夜のエルメス店舗、照明が壁のガラスブロックを透過して建物自体が柔らかく発光して見えるんですよね、素敵建築だなぁとしみじみ思います。
こちらのブティックも和光同様、各月のテーマでディスプレイを変えており、それがまた雑誌広告の世界そのままの美麗な見せ方で街往く人を愉しませています。
年始の現在は「ボタニカル(BOTANICAL)」がテーマ。
フラワーアーティストの東信による「植物の謎」が展示されています。
5m程の展示スペースには、人間サイズの水仙とヒヤシンス、アネモネらしきオブジェ等。
その植物の周囲には青虫と蝶、カタツムリの虫たちがいますが、よくよく見ると、蝶の羽根や青虫の身体はエルメスのシルクスカーフ、カタツムリはジュエリーボックスです。
・・・多分世界でも稀な美麗なアオムシ(笑)。テーマに沿った商品のPRはさすがです。
この他にも能楽堂のあるGINZASIX内にはギャラリーが併設され、6Fの蔦屋書店FOAM CONTEMPORARYスペースではミヤケマイ個展が1/24迄開催中です。
そして店内そこかしこに浮世絵をオマージュした粋なアーバン・アートのディスプレイがあり、見つける度に撮影開始。
地下鉄一駅分足を延ばして訪れた歌舞伎座は1月公演初日で和服の観客が集い、お江戸の頃と変わらぬ風物詩感が漂います。
世間を振り返れば穏やかとは云い難いかもしれませんが、それでもテンポの良いアートウォッチの新年幕開けとなりました。