皇室という象徴シンボル【令和の御代を迎えて】展・三の丸尚蔵館
開館記念展の【皇室のみやび―受け継ぐ美―】展示を鑑賞すると、そのまま次の展示室は【令和の御代を迎えて】の展示会場となりますので続けて鑑賞のご紹介。
※写真撮影不可なので、参考写真は2019年の即位礼後の一般公開展示で撮影したものです。
特別展【令和の御代を迎えて―天皇皇后両陛下が歩まれた30年―】は、今上天皇陛下と皇族の皆様にまつわる行事と使用した品々を展示。
ご成婚の際の両陛下の燕尾服とローブ・デコルテ、参席者に振る舞うボンボニエールに、儀式で着用の禁色の束帯と十二単(正確には五つ衣と唐衣+裳)。
近年成人を迎えた愛子内親王の『着袴の儀←七五三』の可愛いピンク色の袿袴など。小さくて可愛いですw
雅子妃殿下のローブ・デコルテは、光沢のあるシルクがツヤツヤと照明の明かりに照り映えて美しいです。飾りボタンに皇室の花『菊』があしらわれていたのも新発見でした。
衣装に使用されたのは、厳選された国産の絹織物です。展示には皇室の御養蚕のパネル写真もありました。
天皇家と絹シルクを生む養蚕の歴史は古くて、起源は西暦462年に雄略天皇が皇后に桑の葉を摘んでご養蚕をすすめようとしたと日本書紀に記述があります。
皇室で育てられてきたカイコは「小石丸」という種族で、奈良時代から続いている日本古来の在来種。
小石丸から採れる生糸は非常に細いもので、毛羽立ちが少なく糸の張りがとても強い逸品なんだとか。品質の良さから最上級生糸として重宝されてきたそうです。
ちなみに蚕の育成は、皇居内にある「紅葉山御養蚕所」で代々皇后さまが行われています。
皇室の養蚕はニュース番組で毎年報道されているので多分思い浮かぶ人が多いはず。個人的にもお蚕さまの可愛いフォルム、好きです。
丹精込めてお世話した稀少な絹糸は、天皇家の儀式で先日レポート紹介した丸紅の源氏物語展のような、平安時代再現の強装束の衣装に仕立てられています。
会場には即位礼の装束として陛下の黄襤染こうろぜん(天皇以外は用いることができない色『絶対禁色』)の束帯装束と、皇后陛下の御五つ衣があり、絹の輝きが照明に照り映え美しいです。
そしてビックリするくらい衣装が歴史の教科書通り。
1000年前に遡る宮中装束が、今日でも使用されている事実に驚きます。
ちなみにこれまた伝統通りなのか、皇后陛下はじめ女性陣が手にしている「檜扇ひおうぎ」は綴じてあるとものすごくぶ厚い、10cmはありそうで百科事典並みの厚さ。
色とりどりの飾り紐でグルグル巻きに固定された扇はなんだか武器になりそうなレベル。。。。装束全体的に重量がありそうです。
また、2019年の即位礼の際に皇居内宮殿中庭で整然と翻っていた『萬歳幡ばんぜいばん』と『菊花章大錦幡』もありました。
自分の主張の正当性を表す【錦の御旗】という言葉の語源ですよねこれ。
歴史愛好家なら色々ネタが思い浮かびそうですが、とりあえず私のフワフワ記憶だと、真偽はともかくの幕末のすったもんだ錦の御旗が浮かびます。
映像展示もあるので、当時テレビ越しに見た景色が思い起こされ、その実物が目の前にあるのが感慨深くなります。
現代でも公式に存在する200近い国家の中で、君主を戴く国は日本を含めて43ヶ国。
王室(皇室)は27ありますが、実は歴史の古さでは日本がトップ。
確認できる資料から、6世紀以降王朝が交代した証拠がない日本は、1500年以上続く世界最古の皇室(王家)なんですよね。声高にアピールとかしてませんが。
かと言って立憲君主制の日本では皇室の政治介入や国家運営の実権は無く、あくまで【象徴シンボル】です。
この象徴って、分かりやすいようで深いよなぁと展示品を見つめながら改めて考えます。
現代は嗜好や流行の流れが早く、電子機器もどんどんアップデートして、政治を担う大臣閣僚もコロコロ替わって変化ばかりな日常。
そんな中、元号という日本独自の時代の区切りを作り、国事に国会の宣言に、伊勢神宮を始めとした祭祀を粛々と毎年毎年変わらずに過ごす姿に、何故か安堵している自分に気づきます。
お正月の『一般参賀』や、一般市民も参加できる『歌会始め』、春には天皇陛下の『田植え』と皇后陛下の『蚕の給桑(きゅうそう=餌やり)』。
秋は収穫を奉納する新嘗祭があって、折々の皇室季節行事はメディアを通じて一般国民にも広く周知されています。
『日本といえば』という言葉を聞くと、相撲力士だったり歌舞伎役者だったり、将棋の天才棋士だったりとあれこれ浮かびますが、
そうした時世や世代も関係なく、日本の『象徴』で今後も思い浮かぶのは、富士山もだけどやっぱり日本史と民族文化を体現し続け、お茶の間にも浸透した天皇家の皆様なのでしょう。