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ボタニカルアートで楽しむ日本の桜 -太田洋愛原画展-

日本人の桜推しは深く濃い。。。

薄ピンクの花房がユラユラしているのを眺めると、なんとなく気分がフワフワソワソワするのは日本人のDNAなのか、ストレスを緩和する色彩効果なのか。

関東の桜がピークを迎えた3月、恐竜展で賑わう上野の国立科学博物館を訪問しました。

今回のお目当ては恐竜ではなくて、日本人の大多数が推す【桜】。

日本のボタニカルアート(植物画)の先駆者、太田洋愛(おおたようあい)が描いた水彩画約100点と、貴重な押し葉標本など【桜】に纏わる関連資料を公開しています。

本来は2020年の3月に展示予定だったのですが、新型コロナの影響で延期され、お蔵入りかとヒヤヒヤしましたが今年ようやく日の目を見ました。

満開の桜シーズンにピッタリの展覧会、化石や動物の剝製が大部分を占める科学博物館本館の一角に、精緻で可憐な水彩画の桜の展覧会看板はなかなかの存在感。


江戸時代の【桜】図鑑『怡顔齋櫻品(いがんさいおうひん)』

会場内には綺麗に額装された桜の植物画がずらりと並び、桜の研究や新種探索、品種改良の歴史等、絵画だけではない学術要素の展示も楽しめます。

海外の立ち寄りと思しき観光客や、小学生くらいの子供たちも興味津々に覗いていてなかなか盛況な人出。

何十種類とある桜の絵が丁寧に額装され、並ぶのを見ると、自分も含め日本人て桜好きだよね、としみじみ思います。

展示品には江戸時代の本草学者、松岡恕庵著の『怡顔齋櫻品(いがんさいおうひん)』という桜図鑑も。もう江戸時代に桜図鑑があるのに驚きました。

69種もの桜が絵付きで紹介されているそうで、木製の表紙にも桜イラストがあってインテリアに飾りたいくらいのお洒落書籍。



ヒマラヤザクラの貴重な押し花標本

改めて知ると、桜の野生種は世界中でなんと約150種(多い!)もあり、内50種以上が中国原産。

日本の桜のルーツも遠いヒマラヤ山脈の麓、中央アジアに近い中国奥地とされているそうです。

しかし中国では桜よりも花弁が大きくて色鮮やかな牡丹・芍薬を好んでいたらしく、力強くも儚い桜を好んでせっせと植樹した日本各地が桜名所として世界的にも有名に。

お国柄というのか、趣向の違いも面白いです。


野生種の中でメジャーなのはヤマザクラ、エドヒガン、オオシマザクラの3種。

日本人は平安期頃から桜を愛でていたようですが、江戸時代まで花見といえばヤマザクラが対象。

太閤秀吉が愛でた京都の醍醐寺や奈良の吉野山の有名な千本桜も大体ヤマザクラで、ソメイヨシノよりやや白くて少し梨の花にも似て、若草色の葉っぱが見え隠れしているのも涼やかで綺麗です。



ずらりと並んだ額装の桜絵

今私達が親しみ、日本中を席巻している『染井吉野ソメイヨシノ』はエドヒガンとオオシマザクラの交配品種。

江戸時代に植木職人が多く住んでいたという染井ソメイ村の発祥です。

接ぎ木苗の初期成長が早くて、大きく美しい花が枝に多くつくことがわかり、見栄えのするソメイヨシノは日本全国各地へと広まっていったそうです。

接ぎ木の大元を辿ると、なんとソメイヨシノ1本。現在の全国の桜の名所を作る桜、ソメイヨシノはたった1本から分離した同じ桜なのです。

いわばクローンです。フォースが出てくるSF物語のトルーパーが浮かびます。桜の方が情緒1億倍ですけど。日本全国分身だらけ、ソメイヨシノって凄い。。。

会場の桜絵はソメイヨシノ以外の品種なので、改めての目新しさがありますね。小さな花弁だったり多弁だったり、絵に描くことでそれぞれの個性が分かり易いように思えます。

雅やかな名前(・・・なんか鬼と闘う某少年漫画みたいなのとか)もあって、誰がどんな状況で命名したんだろうと当時が気になります。


2~3個くらいなら名前憶えられそうだなと乏しい知識欲の充填にホクホク会場を進むと、会場出入口の主催後援や協力の企業・団体リストに目が留まりました。

研究機関等の団体名の中で異彩を放つ『木村屋総本店』


・・・・なぜにパン屋?


( ゚д゚)ハッ!あんぱん!!

そう、あんぱん中央の大事なワンポイント、桜の塩漬けです!

明治天皇への創作献上で不動の地位を手にした木村屋の桜あんぱんの桜は、奈良県吉野山から取り寄せた八重桜だそうです。

桜の名前云々の新知識より、あんぱんの桜産地に意識が持ってかれました(笑)。

あの甘じょっぱさ、ちょっと濃いピンクの桜の塩漬けはこし餡とまさに黄金律の相性。想像するだけで食べたくなってます。

愛でるだけでなく、食用にと加工するパン職人の桜への親しみ。日本人の桜への愛が最も現れたおやつです。

無性にあんぱんが食べたくなってきて、帰りにさっそく購入したりしましたが、改めて【桜】への知識探求にお奨め展覧会。期間限定なのでお気をつけください。


展覧会情報は下記参照。


企画展「ボタニカルアートで楽しむ日本の桜 -太田洋愛原画展-」

開催期間 2023(令和5)年3月14日(火)~4月9日(日)

開催場所 国立科学博物館(東京・上野公園)

日本館1階 企画展示室

開館時間 午前9時~午後5時 ※入館は閉館時刻の30分前まで

休館日 月曜日

※ただし3月27日(月)、4月3日(月)は開館

入館料 一般・大学生630円(団体510円)(税込)

※常設展示入館料のみでご覧いただけます。


プロフィール

uchiko
美術と骨董、宇宙と化石を愛でるアートウォッチャー。
カロリー消費に美術館、仏閣、史跡散策をして、終わればまったり食べて補給。
2022年よりインスタグラムとこちらのサイトでアートウォッチの記録始めています。
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