5.0
宇野亞喜良の描くエロス×ファンタジーの空想的世界へ
イラストレーションにとどまらず、絵本やアニメーション、舞台美術まで幅広く創作を展開している宇野亞喜良。本展はそうした多様かつ膨大な仕事を整理して提示するとともに、宇野特有の表現性を探ることができる展覧会だった。
宇野亞喜良の絵にはたしかに独特のエロティックさはある。見ようによっては露骨に性的ですらある宇野亞喜良の描く女性身体。しかし彼のイラストレーションにはまた、そうした性的な視線をすり抜けていく流動性が備わっている。
宇野の表現がおもしろいのは、目に見えるエロスをいかにずらしていくか、隠していくかというところにある気がする。その発想力が画面に滲み出たエロティシズムに独特な地平を切り開いている。パブリックな目に晒されることが前提となるようなデザインを数多く手がけてきた宇野亞喜良にとっては、ある意味ではそうした規制的・抑制的な側面こそが、独特の幻想世界を創作するための潤滑油だったのかもしれない。
宇野亞喜良の耽美的で風変りな世界観には、エロスとファンタジーが通底している。隠喩として解釈することも、不思議で華やかな空想として楽しむこともできる宇野の世界観は、それゆえ老若男女問わず世代を超えて、人々を惹きつけるものがあるのだろう。
嬉しいことに本展はほぼすべて撮影可能だったが、余すところなくというのも難しく、分厚い図録も、掲載されている作品はおそらく半分以下なのが惜しい(作品リストが配布終了していたので照合できず)。それだけ大充実の作品群だったので、巡回先と予定が合えばまたじっくり鑑賞したい。