糸と傷の訴求
大阪駅でバスを待つより歩いた方が早く着きそうだったので出発したところ、思いっきり反対側(梅田CLUB QUATTRO側)へ歩き出してしまい、結局引き返して大阪駅からバスに乗って行った。中之島方面にはもう5回くらい行っているのに信じられ…readmore
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本展では、国立国際美術館が2023年度に収蔵したルイーズ・ブルジョワ、レオノール・アントゥネス、2024年度に収蔵し今回国内初公開となるルース・アサワの3作家による作品を起点に、既にある素材や構造、歴史をほぐし、それらを再構成していく作家の手つきと作品のあり方に注目します。また、近年収蔵した作品も多数紹介します。
本展タイトルは、ブルジョワが2000年にテート・モダンのタービン・ホールで発表した作品のタイトル「I Do, I Undo, I Redo」および2023年度に2作品を収蔵した手塚愛子をはじめとする作家の制作行為に着想を得ています。
◆ 出品作家(変更となる場合があります)
ルイーズ・ブルジョワ、ルース・アサワ、レオノール・アントゥネス、工藤哲巳、安齊重男、ソピアップ・ピッチ、寺内曜子、塩田千春、伊藤存、加藤泉、石原友明、竹村京、内藤礼、草間彌生、青木陵子、片山真理、ブブ・ド・ラ・マドレーヌ、石内都、芥川(間所)紗織、タイガー立石(立石紘一・立石大河亜)、横尾忠則、福田美蘭、清水晃、杜珮詩(ドゥ・ペイシー)、スターリング・ルビー、手塚愛子
◆ 常設作品作家
高松次郎、ヘンリー・ムア、マリノ・マリーニ、ジョアン・ミロ、アレクサンダー・コールダー、須田悦弘、マーク・マンダース
会期 | 2025年2月15日(土)~2025年6月1日(日) |
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会場 |
国立国際美術館
![]() |
展示室 | B2階展示室 |
住所 | 大阪府大阪市北区中之島4-2-55 |
時間 |
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休館日 |
月曜日、2月25日、5月7日 ※ただし2月24日、5月5日は開館 |
観覧料 | 一般 430円(220円) 大学生 130円(70円)
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TEL | 06-6447-4680 (代) |
URL | https://www.nmao.go.jp/ |
大阪駅でバスを待つより歩いた方が早く着きそうだったので出発したところ、思いっきり反対側(梅田CLUB QUATTRO側)へ歩き出してしまい、結局引き返して大阪駅からバスに乗って行った。中之島方面にはもう5回くらい行っているのに信じられ…readmore
4.0
解く、やり直す、というテーマを反映しているのだろう。本展の展示物は、糸のような繊維質な素材を用いて制作された作品がとくに特徴的だった。
異なる織物を解きほぐしつつ再縫合する、糸を張り巡らせることによって物体をつなぎとめるなど、柔らかで繊細な素材がある物体を自立させているさまは美しいというよりはどこか痛々しい。塩田千春による無数の黒糸の網の目の中に浮遊するドレスなどはその好例だ。手塚愛子による織物の作品などは二種の織り出されたイメージが重なり合うことで、かなり重苦しい印象を与える。軽やかなはずの繊維質な素材が、撚り集まり、さらに複雑に絡み合うことで視覚的な強度が増幅している。それもまた単に美しいのではなく、攪乱的で暴力的ですらあるイメージを生み出している。
針と糸はしばしば仕事と結び付けられるゆえ、その成果物は均整のとれた「美しい」ものであることが求められる。しかし美術表現において、そうした素材と作業は不完全さや混沌へと転化されている。痛々しさの正体はそうした歪さにあるのだろうが、これらの作品がどこかおどろおどろしくも魅力的なのは、実のところその「自然さ」ゆえなのかもしれない。
4.0
現代アート特有の作品だけ見ていてもその奥にある意味を考える問いが見えてこない。本展覧会のテーマ「Undo, Redo わたしは解く、やり直す」を咀嚼し、自分なりに理解した上で、改めて作品を鑑賞する必要があった。「Undo」は元に戻す、「Redo」はやり直す、パソコン操作に置き換えると、それぞれ「ctrl+Z」、「ctrl+Y」になる。そう考えると、手塚愛子さんの「織り直し #04」や「Ghost I met」は純粋な「Redo」ではなく、2つの織物を融合して、新しい作品を創造しているようだ。特に、「Ghost I met」に見られる中央の黒い影が袈裟を着た僧侶のような姿に見え、「Redo」前に「Undo」したそれぞれの織物を見てみたいと思いました。
5.0
糸、布など、絵画や彫刻としては一般的でないものが使われていると、じっと観察してしまう。
塩田千春「眠っている間に」。ベッドで眠っている女性たちの周囲に多量の黒い糸が張り巡らされている写真。気を張り詰めていないと拘束してくる社会のルールや視線を表しているのかなと思った。
工藤哲巳「二つの軸とコミュニケーション」。2つのラグビーボール大の白い紡錘が並べられていて、カラフルな糸が巻き付けてある。2つの紡錘は数本の糸で繋がっている。右側の紡錘は整然と糸が巻かれているが、左側の紡錘の糸はぐちゃぐちゃだ。左側のお蔭で右側の正気が保たれているのか、病んだ左側に右側が寄り添っているのか。心が惹かれて思わず立ち止まってしまった。
4.0
最近、東京・大阪で回顧展や個展が話題になった作家作品も多く、楽しめました。
・ルイーズ・ブルジョア
東京森美術館の大回顧展の余韻冷めぬなか、本展の目玉作品のひとつ《カップル》は、複雑でめんどくさい男女の情愛表現をがっつりと感じます。ルイーズのど真ん中作品。
・塩田千春
つい最近まで隣の中之島美でド迫力で個展をやってました。本展では「黒」糸の作品が三点。大個展では白糸・赤糸作品が中心でしたが、私は彼女の黒糸作品の醸す格式めいた普遍性(フレーミング的な使い方も含めて)が好きでして、嬉しい限り。
・内藤礼
東京国立博物館・銀座エルメスにて、時空の表現に魅せられました。本展出品のマッチ箱大の《死者のための枕》二点は、繊細で脆ない透明感が独特、ジンときます。
同列に並ぶ竹村京の立体作品6点は、発散性ある表現豊かで実に佳し。
なので、空気感が異なる内藤作品は、同サイズのガラスケースに入れてますが、並べるにはもっと空間が欲しいかなあ。
その他、印象に残ったもの。
第3章「縫うこと」
・石内都の人体傷口の写真作品。
・片山真理の義足を扱うデコラティブな写真作品。
何れも独特のモチーフ勝負の作品だが、実にパワフル。みなぎる表現意欲を感じます。
第4章「歴史を編みなおす」
・芥川(間所)沙織、横尾忠則、福田美蘭、と著名作家の良作が並び、嬉しい。
・清水晃の約十点の小品。コラージュにして貼付け部分の浮出感がなく、柔らかく溶け込むような作風が素敵。
・手塚愛子の大作二点《織り直し#04》《Ghost I met》は本展のエピローグを飾る存在感。特に前者、じっくり見るにつけ、糸を操る制作過程を想像し惹かれます。
じわりとして見どころの多い、良質・貴重なコレクション展だと思います。
「Undo, Redo」の本展コンセプトは、「主催者側」にとって所蔵品選別の軸になったのでしょう。「見る側」への訴求性・誘導性については、個人的にはあまり感じませんでした。作品主導で鑑賞する、という良い意味で。
素敵な展覧会ですが、コレクション展扱いでフライヤなし。HPから自分でプリント、でもあるといいなあ。
4.0
タイトルのUndoには、ほどく、破壊する、,Redoには再び行う、やり直すという意味があるのだそう。その意味で今回一番心に残った作品は、紹介写真にもある手塚愛子の織物作品「Ghost I met」と写真にはないが「織り直し#4」だ。
「織り直し#4」は3種類の織物をほどいて、それを再び組み合わせている作品。
コレクションタイトル「Undo,Redo わたしは解く、やり直す」を実際に行っている作品で興味深く鑑賞した。
またレオノール・アントゥネスの作品は、先日訪れた香港のM+でも展示されていて、
ここでまたお目にかかれるとは、と思いがけない出会いを楽しんだ。
外国人の方が日本人より多く鑑賞に訪れていたのも印象的な展覧会だった。
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手塚愛子《Ghost I met》2013年
国立国際美術館蔵 Photo by Lepkowski Studios, Berlin
ルース・アサワ《無題(S.317、壁掛け式、中央部は開いた五芒星と枝が
重なりあう形にワイヤーを縛ったもの)》1965年頃
国立国際美術館蔵 撮影:福永一夫
© 2025 Ruth Asawa Lanier, Inc./Artists Rights Society (ARS), New York. Courtesy David Zwirner
レオノール・アントゥネス《道子#6》2023年
国立国際美術館蔵 撮影:福永一夫
寺内曜子《Hot-Line89》1987年
国立国際美術館蔵 撮影:内田芳孝
竹村京《E.K.のために》2015年
国立国際美術館蔵 撮影:福永一夫
ブブ・ド・ラ・マドレーヌ《人魚の領土-旗と内臓》2022年
国立国際美術館蔵 撮影:福永一夫 © BuBu de la Madeleine