5.0
とっても噛みしめがいのある魅力的なテーマ
埴輪・土偶をモチーフにした美術作品を一堂に…という切り口ではなく、(特に埴輪においては)時代の流れの中で、モチーフがもつ意味づけの変遷を辿っていく展示となっており、とても面白かったです。
埴輪は考古学的な価値を認められたあと、戦時下においては、政治的・社会的なメッセージを伝える手段として利用されていたことがよくわかり興味深かったです。
日本神話(神聖なもの、由緒あると考えられていたもの)との結びつき、また、「武人」(忠誠心、勇猛さ)という職業人がモチーフであったことも、軍事政権下では利用しやすかったんでしょうね。考古学的価値と切り離され、戦争支持・協力を促すためのシンボルとして扱われます。
こういった国のプロバガンダにより「当時の人はきっと埴輪を見ると「勇ましい」「神々しい」とか感じていたのかな?」と想像すると、今私が埴輪を見て「かわいい」と感じるのも、自分で認識できていないもの(環境、流行など)により、埴輪と「かわいい」を結びつけるような刷り込み的な働きが働いているのかもしれない・・・と思ったり思わなかったリ。
自らのうちに本当にわいた感情なのか、だれかの意図で社会等によってつくられた感情なのか・・・。ゆるキャラ文化とか・・・。
対する土偶は、政治的シンボルに使用されるなどの経歴はなかったようで、埴輪のような切り口でのアプローチはされず(というか、できず?)。
戦後、戦前の価値への忌避感もあり、埴輪(戦前的シンボル)の対局的なものとして位置づけ・評価された点にフォーカスされてました。
土偶と言えば、岡本太郎、イサムノグチなど、名声のある芸術家に強烈な支持を得てブームとなったイメージが強いのですが、実はそれ以前から評価している人はいましたよ、という点がポイント。
埴輪との対立構造、新しい価値・新しい時代のシンボルにすえられた土偶。これもまた社会や文化背景によってつくられたもの…。いろいろと興味深く。改めて、私を取り巻く身の回りのアレコレとそれに抱く感情について、どんな関係性で成り立っているものなのか、思考を巡らせるよい機会となりました。
そして、ハニ丸世代、かつ、映画ドラえもん『日本誕生』の土偶キャラの奇怪さに恐れをなした子供時代を過ごした私としては、埴輪と土偶の影響力を再認識しました。
(ハニ丸と写真撮影しましたよ。「かわいい… Read More