4.0
夢のなかの家具
家具でありながら家具でないようなオブジェを指向していたらしい倉俣史郎のデザインは、たしかに、見ていると自立的な存在感がある。ただ家具として使用に供する物体になるのではなく、対話的にならざるをえない何かが表れているように感じた。
家具の家具らしくなさ。暗闇の中で光を受けて浮き上がる透明な家具が強く印象づけてくるように、それは脆さや冷たい温度感を伴って見える。家具が体現すべき安心感や親しみを括弧に入れて、そうした違和感を表現した先で、これらのオブジェは自ら挑発的に言葉を発するかのようだった。そこでようやく、倉俣によるオブジェたちはユーモアを交えた発話をしていることが見えてくる。
展示にあった、紙片に走り書き/描きされた倉俣自身の夢の記憶から連想するなら、倉俣の家具は、ちょうど不思議の国の住人として登場するキャラクターのような奇妙さと親しみ深さがある。スタイリッシュなフォルムが特徴的な倉俣作品だが、個人的にイメージしていた以上に夢見心地なデザインに、新鮮な驚きを得られた。