5.0
森の魔法使いの手で残された美しい形は、多分、不滅です。
フィンランドのプロダクトデザイナーで、彫刻家、造形作家でもあるマルチアーティスト、タピオ・ヴィルカラの本格的大回顧展。没後40年なのだそうで。2022年Bunkamuraザ・ミュージアムの「イッタラ展」を見ました。そこで《ウルティマ・ツーレ(ラテン語で「世界の最北/世界の果て」を表す言葉)》のグラスと小鉢を購入してしまいました。2023年には都庭園美術館で「フィンランド・グラスアート 輝きと彩りのモダンデザイン」展を見ました。昨今北欧ブームなのかショップばかりではなくあちこちの展覧会等で様々な北欧デザインが紹介されていて、若い頃からずっと、北欧家具や照明器具やテーブルウエア、また玩具なども、とても手は届かないものながら大好きな私としては、とても嬉しい限りです。今回TSGさんで「タピオ・ヴィルカラ展」と聞き、3年前手に買って一度使っただけで、ずっとただサイドボードを飾っていたウルティマ・ツーレのグラスで、アイスティーを飲んで出かけました。
会場に入ってまず出迎えてくれるのは、無造作に積み上げられた木材のブロックを思わせる巨大な両開きの「扉」でした。ヘルシンキの彼のスタジオの扉なのだそうです。この大胆なあそびごころには、思わずうなりつつ笑ってしまいます。それから展示は、ガラスや磁器のテーブルウェアにはじまり、照明器具や積層合板を加工したアートピース、金属のドアノブやプラスチック製品に至るまで、様々な品が並んでいました。特に積層合板の作品がとてもとても美しくて、すっかり魅せられてしまいました。今展メインビジュアルの《スオクルッパ》も、なんとも言えない曲線美に、ファンタジーの香りも加わったような、不思議な魅力です。それからVTRも良かったです。森の魔法使いのような風貌で、彼のゴツイ手が、魔法のようにさりげなく美しいものを生み出しているのですね。素材の全てを知ってそれに真摯に向き合うという、職人肌の人の様でした。厳しいフィンランドの自然の中にあって、自然との対話からインスピレーションを得るというヴィルカラ。一瞬で変わってしまう自然の神秘の姿を、ガラスや木や金属で不変の形に残している?? 繊細にしてダイナミック、大胆で美しい、ヴィルカラデザインの魅力を、じっくり堪能することが出来ました。
休日午後でしたが、さほど混雑はしておらず、ゆっくりマイペースで鑑賞出来まし… Read More