ART BLOGS

アートブログ

展覧会タイトルが長い!が、世界初公開の若冲の巻物だけではない充実の展示内容

展示風景:伊藤若冲 画、梅荘顕常 跋《果蔬図巻》1790年頃 福田美術館 30.5cm×277.5(※跋文部分54.5cmをくわえると332.2cm)

若冲の作品が新発見されたというニュースが飛び込み、驚いたのもつかの間、更には応挙との合作の屏風の発見というニュースが流れ、見つかっていない若冲作品はまだまだあるのかもしれないとワクワクしてきます。福田美術館学芸課長で本展ご担当の岡田さんも「海外へ流出した作品とか、まだ見つかって来る可能性はあります。」と話されていました。

新発見にしてて、世界初公開となる若冲作《果蔬図巻》お披露目となる福田美術館での展覧会「開館5周年記念 京都の嵐山に舞い降りた奇跡!! 伊藤若冲の激レアな巻物が世界初公開されるってマジ?!」につきましては、すでにアートアジェンダ編集部さんから

レポート「『若冲激レア展』で新発見の《果蔬図巻》が初公開 本作発見の意義と伊藤若冲の魅力を紐解く 福田美術館学芸課長・岡田秀之氏インタビュー。「若冲激レア展」が、2024年10月12日(土)から開催」が掲載されておりますので、そちらもご参照ください。

早速展覧会へ伺って上記レポートで言及されていないポイントや展示作品について本ブログでは書きたいと思います。

福田美術館は、今回も写真撮影OK、スマホで聴ける無料音声ガイドもあります。先に予習なさりたい方は、展示作品リストからどうぞ。⇒


第1章    若冲と彼が影響を受けた画家たち

《果蔬図巻》は、若冲70代後半に描いた珍しい彩色画ですが、本章では若冲の水墨画を中心に初期から晩年までの作品が展示されています。


左から:《霊亀図》《仔犬図》紙本墨画 軸装 18世紀 福田美術館

「筋目描き」は、中国でつくられた吸湿性が強くて墨がにじみやすい画仙紙に描いて白い筋目を利用した若冲の特徴的な技法です。なんとも剽軽な表情の《霊亀図》ですが、亀の甲羅を筋目描きで表現しています。菊図や鳳凰の羽、鯉の鱗、達磨の衣紋などの表現にもみられます。

上記アートアジェンダさんのインタビュー記事でも紹介されている2019年に発見された若冲が30代初めに描いた《蕪に双鶏図》も展示され注目作品です。


熊斐《松竹梅鶴亀図》絹本着色 18世紀 福田美術館

花鳥画を得意とした中国人画家・沈南蘋は当時の絵師たちに大きな影響を及ぼしました。その弟子・熊斐や長崎で学び江戸に南蘋の画風を広めた宋紫石、禅僧の白隠の作品などが左壁面に展示されています。当時日本へもたらされた黄檗宗の僧侶による絵は最新の絵画で若冲のネタ元とも言えるでしょう。


第2章    《果蔬図巻》世界初公開 大典と大阪で活躍した画家たち

初公開となる《果蔬図巻》はじめ、今年5月に福田美術館のコレクションとなった若冲50代の拓版画《乗興舟》、若冲と同時代に大阪を中心として活躍した個性的な絵師の作品が展示されています。


展示風景: 伊藤若冲 画、梅荘顕常 跋《果蔬図巻》部分

本展のお目当て作品、多くの方が新発見となったこの《果蔬図巻》を楽しみにしていらっしゃることでしょう。アートアジェンダさんの岡田さんへのインタビュー記事を既にお読みになった方も多いでしょう。本ブログのメインヴィジュアルの画像では展示風景をご紹介しています。図巻すべてを開き、その上に描かれてある果蔬を京都府立大学の先生に依頼して特定できた果蔬の名称と梅荘顕常(以下「大典和尚」)による跋文の現代語訳のパネル解説付きという丁寧な展示となっています。描かれているのは実のなるものや野菜です。名称が確定しなかった果蔬もありますが、パッションフルーツやジャックフルーツなど南方の珍しい果物の名前もみられます。新発見のニュース画像でも「あっ!」と思い、実際に目にして描かれた果蔬の瑞々しさにうわぁーとなりました。特にクワイの水色が美しくて目を惹きました。紫外線による経年劣化などがなく巻物なので保存状態が良かったからなのかとお尋ねすると、制作から200年以上を経ているので、その間におそらく2回は修理されていることもあるのではないかとのお話でした。本作が若冲の真筆と特定された決め手の一つには、巻末に「米斗翁行年七十六歳画」の署名があることだけでなく、「藤汝釣印」(白文方印)・「若冲居士」(朱文方印)が他の作品に捺されている印と一致した点にもありました。2023年2月に美術商から連絡が入り、実見して2023年8月に福田美術館所蔵となりました。その後さらななる調査をされ、胡粉の浮きなどがあったため修理を経て本展でお披露目展示となりました。本展終了後は裏紙の交換など再度修理に入ります。大典和尚の跋文の現代語訳もパネル解説にあります。そこからは若冲と大典和尚の関係性も伝わってきます。

果蔬を描いた作品には重要文化財《果蔬涅槃図》京都国立も思い浮かびます。若冲は青物問屋の主人だったことに加えて、常に「草木国土悉皆成仏」の思いがあり、果蔬への慈しみを感じます。


展示風景:伊藤若冲 下絵、梅荘顕常 短辞《乗興舟》部分 紙本木版正面摺 巻子装 1767年頃 福田美術館所

この《乗興舟》は、今年の5月に福田美術館所蔵になったばかりの若冲50代の頃の画巻です。碑文などを写しとるときに使う技法である拓本画で、ネガとポジが反対になったモノクロの木版画です。若冲と大典和尚は、当時上方の文化人サロンの中心的存在であった木村蒹葭堂の元を訪れるために淀から天満橋までのゆるりとした船旅にでます。若冲が描く淀川両岸の景色に、大典和尚がその土地ごとに短い漢詩をよせて、それも解説パネルに現代語訳が掲載されています。美しいグラデーションやぼかしが見所です。「乗興舟」は、拓版画で版木があったため「20点ほどあると思われる。」との説明でした。


左から:佚山《牡丹叭々鳥図》1759年、佚山《群鶴図》18世紀 軸装 福田美術館

佚山は、若冲と同時期に大阪で活躍していた曹洞宗の僧侶で、篆刻、書、画で有名でした。長崎に滞在して沈南蘋を学びました。《群鶴図》では、鶴の数と黒い尾羽と足の数にご注目!

 


鶴亭浄光《梅・竹図押絵貼屏風》紙本墨画 屏風 1767年 福田美術館

こちらも初公開作品です。鶴亭は、長崎出身の黄檗宗の僧にして画家です。2016年神戸市立博物館で開催された「我が名は鶴亭-若冲・大雅も憧れた花鳥画」で観た鮮やかな吉祥画が強く印象に残っています。当時の京都や大阪の絵師に大きな影響を与えました。


第3章    若冲と同時代の画家 曽我蕭白と円山応挙

奇想中の奇想の画家・曽我蕭白と当時も人気ナンバーワン絵師の円山応挙の作品が展示されています。



曽我蕭白《虎図》紙本墨画 18世紀 福田美術館

画力も凄いが、ユーモアのセンスも抜群!奇想でいいじゃないか!蕭白大好きです。


円山応挙《虎図》絹本着色 1786年 福田美術館

蕭白の虎と見比べて如何でしょう。生真面目な応挙先生、毛描きなど緻密ですが、なにせ本物の虎を見たことがなく「写生の応挙」といかなかったようで、前足のかわいらしさや目は猫の目になっています。


さて初公開の《果蔬図巻》も含めて充実のラインナップ。

ミュージアムショップでは「果蔬図巻」モチーフのグッズも登場していますので、お楽しみに。

秋の京都、渡月橋も落っこちそうなほど外国人観光客でごった返しそうですが、美術館からのSNSでの混雑状況もチェックしてお出かけ下さい。午後遅い時間が空いているらしいです。朝一は一番混んでいるそうです。

【開催概要】

障がい者と介添人1名まで:各900(800)円 ※( )内は20名以上の団体 料金 ※幼児無料

詳しくは⇒


プロフィール

morinousagisan
阪神間在住。京都奈良辺りまで平日に出かけています。美術はまるで素人ですが、美術館へ出かけるのが大好きです。出かけた展覧会を出来るだけレポートしたいと思っております。
通報する

この記事やコメントに問題点がありましたら、お知らせください。

こちらの機能は、会員登録(無料)後にご利用いただけます。

会員登録はこちらから
SIGN UP
ログインはこちらから
SIGN IN

※あなたの美術館鑑賞をアートアジェンダがサポートいたします。
詳しくはこちら

CLOSE

こちらの機能は、会員登録(無料)後にご利用いただけます。

会員登録はこちらから
SIGN UP
ログインはこちらから
SIGN IN

ログインせずに「いいね(THANKS!)」する場合は こちら

CLOSE
CLOSE
いいね!をクリックしたユーザー 一覧
CLOSE