記者発表 特別展「京に生きる文化 茶の湯」@京都国立博物館
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- by morinousagisan
”茶の湯”をテーマにした 特別展「京に生きる文化 茶の湯」が京都国立博物館でこの秋に開催されます。それに先立って記者発表会に参加してきましたので、ご報告します。
国際観光都市ともいえる京都の魅力として、千年の都、京都で培われてきた伝統文化があげられます。「茶の湯」はその代表的な一つです。「茶の湯」の原形は中国にあり、平安時代末頃に日本へもたらされました。時代を経るにつれて次第に和様化し、日本独自文化へと発展し、現在においては日本文化を象徴する1つとして世界で認知される存在です。「茶の湯」で歴史的にも中心的な役割を果たしてきたここ京都には、今もなお家元や茶家(茶人)の多くが本拠地を置き、「茶の湯」は連綿といきづいています。
秋の京都で、この地にゆかりのある各時代の名品約200件を通して、京を中心とした「茶の湯」文化を紹介する展覧会です。
展覧会の見どころ
・茶の湯の名品中の名品が集結!
- 宋の皇帝・徽宗筆と伝わる宮廷絵画の傑作、国宝「桃鳩図」を11月3日~6日の 僅か4 日間、期間限定で公開(10年に1回公開されるほどの貴重な作品で、世界史の教科書にも掲載されています。4日間毎日でも会いに行きたい)
- 茶の湯の茶碗の最高位ともよばれる、天下三大井戸の1碗、国宝「大井戸茶碗 銘喜左衛門」を展示
- 喜左衛門と並び称され、秀吉が愛用したとされる重要文化財「大井戸茶碗 銘筒井筒」が数十年ぶりに関西で公開(三井戸と並び称される井戸茶碗の名品、通期展示でしっかりと目に焼き付けたい)
- 世界に三碗現存するうち、京都・龍光院所蔵 の国宝「曜変天目」を10月8日~23日に公開。400 年間、禅の心をもってずっと京都で守り伝えられてきたご存じの名碗。(「国宝展」@京博で見逃した方も今回はお見逃しなく!)
・時代ごとの喫茶の場を体感 時代ごとの空間性を再現して、「茶の湯」の空間を疑似体験する
- 建仁寺方丈での四頭茶礼の様子を名品で再現し、古い「茶の湯」の形を知る。
- 室町時代、茶会の場で賞玩されていた唐物の名品を設えた場を体感。
- 秀吉の《黄金の茶室》」と利休の「わびの茶室」を再現展示、二人の茶の湯への考え方の違いをそれぞれの茶室から体感。
本展は、序章から始まり、時代を追って1~7章の構成となります。
以下、各章についてとその代表的な展示品を紹介します。紹介作品については展覧会公式サイトに画像が掲載されていますので、そちらもご参照ください。
序章 茶の湯へのいざない
最初から国宝がお目見えします。
- 国宝「法語(破れ虚堂)」虚堂智愚墨蹟 虚堂智愚筆 (きどうちぐ) 1幅 南宋時代・13世紀 東京国立博物館蔵(前期展示)中国の禅宗の偉い僧が弟子に語った言葉で茶の湯の精神に繋がる禅の心を著し、所謂「茶禅一味」ということか。「破れ虚堂」の別称が印象深く、2016年の「禅ー心をかたちにー」@京博で拝見したものと同じ墨蹟かと。
- 国宝「大井戸茶碗 銘喜左衛門」京都・孤篷庵(通期展示)国宝展でお目にかかって以来となります。「天下の三井戸」の1碗、最高の名物井戸と伝わります。
共に松平不昧所蔵の来歴があり、さすが不昧公お目が高い。
第1章 喫茶文化との出会い
喫茶文化は、奈良時代に中国から日本にもたらされました。平安時代後期になって、中国・宋代の点茶法による飲むお茶が始まり、喫茶文化が変容し広がっていく様子を紹介します。
- 「喫茶養生記」断簡 京都・建仁寺 (通期展示)日本に茶を伝えたと歴史でも習った建仁寺を開山した栄西禅師が著した喫茶の薬効を説いた書。実物を目に出来るのが楽しみです。
- 「四頭茶礼道具」京都・建仁寺(通期展示) 古い形式を今に伝える建仁寺方丈での四頭茶礼の様子を名品で再現します。
第2章 唐物賞玩と会所の茶
武家社会では会所に唐物を飾って集まった人々で愛でて茶を楽しむようになります。一方、茶の栽培が広がっていくにつれて、寺社の門前に茶屋などを構えて茶を楽しむようになっていきました。
- 重要文化財「青磁茶碗 銘馬蝗絆」東京国立博物館蔵(通期展示)平重盛、足利義政所持と伝わるこの茶碗、清々しい釉色と姿が美しく、ひび割れを鎹で止め、それを蝗に見立てて命名したことにもキュンとくる茶碗です。
- 重要文化財「茉莉花図」伝趙昌筆 常盤山文庫蔵(後期展示)会所の茶会などで賞玩されてきた、中世以降美の規範だそうで、東山御物の名品です。単眼鏡お忘れなく!
11/3~11/6 4日間限定公開の国宝「桃鳩図」(伝徽宗筆)と国宝「曜変天目」(京都・龍光院所蔵)もこの章になります。東山文化、北山文化のとともに。
第3章 わび茶の誕生と町衆文化
町衆の経済活動を背景に、日々の暮らし、手元にあるもので茶を楽しむ「わび茶」が室町後半から広がり、茶が限られた人々からもっと身近な存在になっていきました。
- 国宝「観楓図屏風」狩野秀頼筆 東京国立博物館蔵(10/8~10/23)洛北高尾で宴席しながら茶を楽しむ人々の姿が色も鮮やかに描かれています。
第4章 わび茶の発展と天下人
千利休がめざしたわび茶は、信長、秀吉をも魅了し(互いに利用しながら天下人となっていくような気さえしますが)、「名物狩り」「御茶湯御政道」という言葉もあるように、武将らもこぞって名物を蒐集するようになり、「茶の湯」は日本全国に拡がりながら、独自の道具を生み出し、「茶の湯」として体系化されていくことになります。
- 重要文化財「大井戸茶碗 銘筒井筒」(通期展示)関西には久々のお目見えです。秀吉が北野大茶湯で用いたかものこの碗、大小の割れも細川三斎の機転によって救われた天下の名碗です。
- 重要文化財「黒楽茶碗 銘ムキ栗」長次郎作 文化庁(通期展示)
第5章 茶の湯の広まり 大名、公家、僧侶、町人
武家、公家、僧侶、町人それぞれの立場にあった「茶の湯」が形作られていきます。その形成過程で生まれた独自の茶道具などを通してこの時代の「茶の湯」を紹介します。
- 重要文化財「色絵若松図茶壺」 野々村仁清作 文化庁(通期展示)丸亀藩京極家伝来の来歴を持ち、仁清が作り出した京都らしさが加わった華やかな茶壷です。
- 国宝「志野茶碗 銘卯花墻」三井記念美術館(通期展示)あまりにも有名な志野茶碗の国宝が今回も上洛です。
第6章 多様化する喫茶文化 煎茶と製茶
中国僧「隠元隆琦(いんげんりゅうき)禅師」が来日し黄檗山萬福寺が開創されました。それと共に中国の新しい文化ももたらされ、その1つがお煎茶でした。お抹茶とは別に文人と結びついた「煎茶」の喫茶文化が発展していきました。また、黄檗山萬福寺がある京都府南部の宇治地域では製茶技術の向上により、良質の茶が作られるようになります。その様子などもこの章では紹介します。
- 「紫泥茶罐 宜興窯(しでいちゃかん ぎこうよう)」京都・萬福寺(通期展示)隠元禅師が愛用した茶器です。
第7章 近代の茶の湯 数寄者の茶と教育
近代になり、文明開化の名のもとに日本の伝統文化は大きな影響を受けました。茶の湯も例外ではなく、多くの茶道具も海外へ流出しました。近代数寄者に茶の湯が流行したことはご存じの通りで、「道具茶」と揶揄されることもありながら、海外への日本の古美術の流出を阻止しようとした財界人たちの「社交の手段」でもあったでしょう。「茶の湯」は婦女子教育に取り入れられ近代に広まりました。また、寺社での献茶が茶会へと広がり一般にも拡がっていきました。
- 重要文化財「色絵鱗波文茶碗」野々村仁清作 北村美術館(通期展示)江戸から現代、時代を超えて愛された仁清ならではのモダンな茶碗です。
京都には「茶の湯」に関連する施設も多く、「茶道具」を展示する美術館も多い。今年は千利休生誕500年で、また千利休の曾孫、表千家四代家元江岑宗左の350回忌にも当たるそうです。京都市内の様々な施設と連携しながら秋の京都は「茶の湯」で盛り上がりそうです。
本展会期中は、10/15から毎週土曜日に記念講演会も開催予定です。コロナが収束することを願うばかりです。
【開催概要】
展覧会名 :紡ぐプロジェクト 読売新聞大阪発刊 70 周年 特別展「京(みやこ)に生きる文化 茶の湯」
会 期 : 2022 年 10 月 8 日(土)~12 月 4 日(日)
[前期展示]10 月 8 日(土)~11 月 6 日(日)
[後期展示]11 月 8 日(火)~12 月 4 日(日)
会 場 : 京都国立博物館
休 館 日 : 月曜日(ただし、10 月 10 日[月・祝]は開館、翌 11 日[火]は休館)
開館時間 : 午前 9 時~午後 5 時 30 分
(金・土曜日は午後 8 時まで開館、入館は閉館 30 分前まで)
展覧会公式サイト :https://tsumugu.yomiuri.co.jp/chanoyu2022/
展覧会公式 Twitter : @chanoyu2022
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