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絵本はいくつになっても楽しめるもの
千葉市美術館の建物は、戦前から残る近郊をリノベーションした趣のある佇まい。
本年2025年秋には、開館30周年を迎えるそう。
開館記念に行われているこの世界の絵本の原画展は、春休みからゴールデンウィークにかけて行われるのにぴったりな、子供から大人まで広い世代に受け入れられる内容。
絵本は、絵と文章がセットになったもの。
構成は、絵をメインに、文章は少なめで、言語がわからなくても視覚で直感的にわかるものや、
絵が文章を補完していると思われるもの(日本語以外の言語で書かれていたので絵から推測した範囲で)
絵の上に後から活字が載り、印刷されることを意識した構図のものなど、
バランスもさまざま。
手法も、手書きもあれば、手書きとデジタルを併用したものなど、
制作過程を惜しみなく公開しているものもあり、興味をそそる。
原画と、実際に手に取ってページをめくれる絵本とがセットに展示されているのだが、
制作過程や、作家の大切にしているものなどを紹介するパネルがあることにより、
絵本をめくるたびに作り手の想いが伝わってきて温かい気持ちになれた。
特に気になったのが、ダニ・トゥレンさんの「一等車の旅」
ひとりの女性が一等車に乗って結婚相手を探す1年間の旅に出るストーリー
絵本らしくないストーリーな気もしつつ、なぜか惹かれると思ったら、
映画的手法を用いて作ったとのこと。なぜかこの言葉に納得してしまった。
カット割のような斬新な構成のページがあったり、
絵本が子供のものとするならば、郷愁ただよう女性の表情が絵本らしくなくて、
文章は日本語ではないから、絵からの想像で感じるしかないのだけど、
それがまた深い味わいを感じ、
日本語が出たらぜひ手に取ってみたい。
いや、むしろ原作を自分で辞書片手に訳しながらのほうがいいか。
作家さんは、絵は女性の内面を、文章は情景を表したと言っていた気がする。
会場内の一部は撮影が可能なエリアがあったけれど、
不可の部分も多く、それが作品に集中するのによかった。
この企画展に続くのが「ノック ノック!千葉市美術館をたのしむ4つの扉」
幅広い世代が来る展覧会であることを意識して、
美術の楽しみ方を扉を開きながら教えてくれるもの。
子供のアイレベルに合わせた展示や、扉の造形の愛らしく、
美術鑑賞のハードルを下げるきっかけを提案していて、とても共感でした。