4.0
90年以上前に亡くなった夭折の画家2人の生涯をいきいきと描く
板倉鼎と板倉須美子、夭折の画家の生涯に丁寧に追った展示でした。
板倉鼎は1901年(明治34年)生まれで、1926年(大正15年)に海外留学に出発。1929年(昭和4年)にパリで亡くなっている。一方、もう一人の画家、板倉須美子はロシア文学者の昇曙夢の長女として1908年(明治41年)生まれ、17歳で板倉鼎と結婚。板倉鼎と一緒にパリにゆき、パリで絵を描き始める。板倉鼎亡きあとは子連れで帰国したものの、長女は帰国後すぐに病死、須美子も結核で1934年(昭和9年)に死去。とまあ、かなり悲しい。展示はほぼ時系列に進みます。そして絵の展示を補完するように、書簡や出版物、写真そして映像の展示が並ぶ。
板倉鼎の作品は学生時代の作品も含めて、ほぼ生涯の全作品が展示されているように見えます。そのおかげで、絵画の技量やスタイルの変遷がよく分かります。写実的な作品から、シンプルでモダンな作風に変わっていくわけです。この変遷がなかなか面白い。そして、もう一人の画家、板倉須美子の作品も印象深い。ルソー的な素朴なタッチで描かれたちょっと幻想的な絵で、パリに来る前に滞在したハワイの風景を描いている。
この美術展の面白さは、90年以上前に亡くなった2人のほぼ無名の画家の作品が、かなりいい状態で下絵も含めて大量に残されていたことでしょう。解説によると板倉鼎の妹の板倉弘子氏によって保管されていた、とのこと。それらの絵画と資料類が松戸市に寄贈されたほか、今回の会場になった千葉市美術館にも絵画が寄贈されて、今回の美術展となったようです。展示替えはありますが一部下書きのデッサンのみで、写真撮影は一部可。