4.0
写真の束を彫ると現れる奇妙な世界
Nerholの作品は写真を大量に撮影するか、あるいは画像を大量に用意して、それを紙に印刷し、その紙を積み上げて固定して、カッターで削ることででき上がる。最初に見た作品は「3分間にわたって連続撮影した200枚のポートレイトを撮影順に積み重ね、カッターで切り取り起伏を付けていく」という作品です。2017年のVOCA展でした。正面から見るとポートレイト写真だが、何か異様でぶれているような、その割にピントはあっているような感じで、近づくと作品はかなり厚く、写真の束をいろいろな方向から切り取っているのがわかる。紙の彫刻というか、3分間という時間を彫った作品でした。
その当時は、唯一無二のポートレイトという感じでしたが、一方でここからどう展開していくのだろうかと注目していました。今回の展示では、その後の展開もいくつかの方向性を見せてくれました。これが多様で面白い。
まず、インターネット上にアーカイブされていた画像や朝日新聞のフォトアーカイブから選んだ映像で制作した作品。ちょっとしたドキュメンタリー風の味わいがある。帰化植物をテーマにした作品もあって、できあがりは、複雑な印象派作品という気がする。さらに画像のない作品にも取り組んでいる。展覧会の開催する地域に関係する素材を練り込んだ和紙をつくり、それをそのまま積み重ねたり、重ねて彫ったり、ちぎって床一面に敷き詰めたりしているそうです。千葉では古代ハスとして有名になったオオガハスを素材の一部に使って紙を造り作品にしています。これはもの派というか韓国の抽象画「単色画(ダンセッファ)」のような趣があって◎。
一部撮影不可で、図録は制作中です。