5.0
現代アートで最近気になるワード「身体性」
デジタルが普及し、便利な世の中になればなるほど、生きているということを実感しにくくなるのではないか、そんな世の中の世相をこの言葉は表している気がします。失敗を恐れる余り、効率化を求める余り、知らず知らずにうちに大事な何かを見落としている、そんなことを感じ、現代アート鑑賞の面白さを少しずつ感じている今日この頃です。
国立国際美術館で初めてギャラリートークに参加しました。ワイヤレスイヤホンの貸出で、どこにいてもクリアに解説が聞けてこれはいいなぁと思いました。スペースの問題もありますが、ワイヤレスイヤホンが数多く用意され、希望者全員が参加できている点もよかったです。今回の講師は、国立国際美術館 主任研究員の正路佐知子さんでした。2023年4月に着任され、それまでは福岡市美術館にいらっしゃった方、国立国際美術館に来てまだ1年経ってないとの事でした。ここは好きな美術館で何度も見に来ていたけど、見るのと展示をつくるのではまったく違い、1から所蔵作品を学び、上からは3つのミッションを与えられ作り上げた展覧会であることを、赤裸々に語っていたのが、印象的でした。
写真撮影もいつもなら、受付で許可をもらって胸にシールをつけていたのが、今回は、撮影不可作品(石川真生17点)以外はOKでした。
大好きな高松次郎の《影》を改めてじっくり見る機会となり、当時の歴史的背景を知り、より深く鑑賞することができました。当時、作品の前に柱があってそれにあわせて作成された寄りかかる影が、今回、偶然にも再現されていた(よく質問するおじさんが正路さんに指摘していた)。
今回のテーマ「身体」は、ルイーズ・ブルジョワの作品《カップル》が国内初公開され、この作品を軸に展開されていました。今年9月に森美術館でルイーズ・ブルジョワ展が開催予定ですので、ルイーズ・ブルジョワ・イヤーになる予感。森ビルにあるパブリックアート、蜘蛛の彫刻《ママン》が有名ですが、日本には、あと東京国際フォーラムに《自然研究(白い目)》という作品があるだけという話を聞き、びっくり。これを機に広く知られていくと思いました。現代アートが学べる「国立国際美術館」より好きになりました。