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現代日本にこそ合う? 機能を追求する中で生まれた家具のシンプル造形芸術
北欧モダンデザインを代表する家具デザイナーの1人であるポール・ケアホルムの展覧会。コレクターで研究者の織田憲嗣氏の解説と、家具約50点と関連資料を紹介しつつ、ケアホルムのデザイン哲学と洗練された家具の造形美を、建築家田根剛氏が手掛けた極上空間でじっくり味わうことが出来る展覧会です。
近年、こうした展覧会が増えているようで、特に北欧デザインブームもあり、東京都美術館企画展『フィン・ユールとデンマークの椅子』(2022)、日本橋高島屋『北欧デザイン展』(2023)に『北欧展』(2024)、 (販売系でもリビングデザインセンターOZONE『北欧家具名作展〜デザインの軌跡』(2021)、代官山Lurf MUSEUM『北欧デンマークのヴィンテージ家具工藝展』(2022)) (北欧ではないけれど、神奈川近美『シャルロット・ペリアンと日本展』(2011)、都現代美術館『ジャン・プルーヴェ展』(2022))などなどに、埼玉県立近代美術館も、北欧に限らずなのですが椅子好きの私にはめちゃめちゃ嬉しい、椅子にまつわる素晴らしいプロダクトデザインを、楽しませていただいています。
北欧が生んだ名作椅子の展覧会がこうして多く開催できるのも、長年にわたり椅子研究と収集を続けてきた織田憲嗣氏(東海大学名誉教授)のコレクションのおかげで、心から感謝しています。プラス私は自分の椅子好きをより進行させてくれた島崎信氏にも感謝していますが‥。
さて、51歳の若さで肺癌のためこの世を去ったケアホルムですが、コペンハーゲン工芸学校在学中に後の代表作エレメントチェアに繋がる椅子のプロトタイプを生み出すなど、太く短いデザイナー人生を歩みました。もっと長く生きて下さっていれば、時代の一歩先を行くデザインをもっともっと世に出してくれていたことでしょう。
今回の展覧会ポスターにも使われていて私もファンでもある《PK 0》は、単一の素材から三つ脚の椅子を製作することを試みた意欲作で、とても斬新でとてもスタイリッシュなデザインすが、当時の技術や量産の難しさからケアホルムの生前には製品化されませんでした。
デザイン展としては異例の黒一色の照明を落とした展示空間に、ケアホルムがデザインを手がけた椅子や家具など代表的作品数十点が並びます。文字情報を可能な限り省き、織田氏の音声解説やディテールを拡大した写真や図面などを補助線に、ケアホルムのデザイン自体を集中し… Read More