3.0
甘くないスィートホーム
さる所から頂いた招待券で訪れた展覧会。
事前の知識がない分、展覧会の「ホーム・スィートホーム」という題に郷愁やノスタルジーをイメージしていたが、そこには自分のアイデンティティを改めて考えさせる「甘くないスィートホーム」が待っていた。
自分の出自の国とは違う国・文化の中でアートを紡ぎだす作家。
中国生まれの幡逸舟の「「ほうれん草たちが日本語で夢を見た日」は日本語のロゴがある箱に無数の窓を開けた段ボール箱が部屋に点在する。日本語がそのまま読めるもの、窓で切り刻まれて読めなくなった日本語・・彼のスィートホームはいずれの国にあるのだろう。
また、ジョージア生まれのアンドロ・ウェクアは「タイトル未定(家)」で幼少期に住んでいた家を表現すると同時に同じ部屋に「無題」で後ろから大きな黒い狼に迫られる少女像を据えた。少女の指はない・・
ウクライナだけでなくジョージアもロシアの介入をこの作品を制作する以前にうけている。黒々とした巨大な狼と少女の欠けた指はじわじわと領土を脅されるジョージアの危うく脆い「スィートホーム」の表現なのだろうか。
そして翻って日本にルーツを持つ自分の「スィートホーム」は安心できるものだろうか?と考えさせられた展覧会であった。