4.0
丹念、丁寧に構成された叙情的抽象
難波田龍起の代表作による回顧展。
1905年生まれ、92歳で没と長寿で、画歴は長い。戦間期から戦後、現代にいたる20世紀モダニズムの浮沈の時代に営まれた画業であり、その時代感に難波田氏の作風形成の歩みを照らして鑑賞する面白さがある。
実は、抽象画を追求するのは1960年代、50歳頃と遅い。キュビスム的、幾何学的な図像分割・構成の制作が中心である。
60歳頃になると、アンフォルメルやアメリカ抽象表現主義の吸収、ポロック流のドリッピング、アクションペインティングを志向するのだが、どうも、似て非なる作風に感じられる。迸る勢いの制作プロセスや偶然性への着目、画面全体を埋め尽くすようなオールオーバーな表現には至っていない。画面の図と地、余白を効かせた丁寧な作画であり、叙情性が豊かである。この作風の模索を、本展主催者は、独自の日本的抽象表現の形成過程として捉えている。同感である。
一方で、この時期の、ロスコのようなカラーフィールド作品も展示されている。難波田氏の表現には、こちらの方が合っているように感じる。
70歳頃にして、縦の線、色面が連なる丹念で一段と叙情的な画風が確立する。他館でも幾度か目にする難波田のトレードマークの作風は、こんなに時間をかけて到達したことを知り、興味深い。やはり、この作家は、スタイルは変遷しつつも緻密で丁寧に構成する抽象表現のひとであり、一本筋が通っているように感じられた。






