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教科書に載っている国宝に会いに行こう!!「日本国宝展」@大阪市立美術館

今年の春、関西は日本美術が熱い!第3弾!

あなたが見たい国宝は何?

本展は、大坂で、更には公立美術館で開かれる初めての国宝展です。

1. 絵画、彫刻、工芸、書跡など135件、展示作品すべてが国宝で、建造物などを除くと国宝指定の14%に当たるそうです。他、参考出品もあります。

2.幅広い時代と多様なジャンルの国宝で日本美術史をたどります。現在の日本美術史は、第1弾の『日本、美のるつぼ』で知った日本初の官制日本美術史 帝国博物館編『稿本日本帝国美術略史』に基づいているのでした。美術や社会の教科書に載っている国宝をコンセプトに展示作品が選ばれており、みんなにとっての学び直しの機会になるような内容にしたいとの思いが詰まっています。美術作品もそれぞれの時代背景を反映しています。図録も、日本美術史を日本の歴史を振り返りながら解説することから始まっています。

3.大坂で開かれる国宝展ということで、おおさかゆかりの国宝をまとめて紹介しています。どうしても奈良や京都に目が向きがちですが、大阪は大陸や諸国との交易拠点で、経済・文化が発展してきました。

 

リニューアルなった大阪市立美術館は、展示環境が最新でとても良く、展示の仕方、見せ方も抜群に上手く、展示空間全体がそれぞれの展示作品の空気感を纏っているように思いました。

国宝の実物をみることは、「国宝」となった造形が内包し、放つ力をまざまざと身をもって知ることかもしれません。

 

国宝は、絵画などは展示期間が決められているものや、所蔵元での公開や他の展覧会での展示など制約が多く、展示期間には要注意です。必ず作品リストの展示期間を確認してお出かけ下さい。作品リスト⇒

展示は、リスト順ではありません。音声ガイドは、大阪出身の津田健次郎さんと中条あやみさん、せっかくなら大阪のイントネーションでしてほしかったかもですが、聴きやすく丁寧な語り口でした。


Ⅰ「ニッポンの国宝―美の歴史をたどる」 6章構成です。

1.  日本美術の巨匠たち 日本美術を代表する巨匠の作品が展示されています。

最初にお出迎えしてくれたのは、春の展覧会を寿ぐような 長谷川等伯の子、長谷川久蔵筆 国宝《桜図》桃山時代 天正20年(1592)頃 京都・智積院蔵 [4/26-5/11] 父、等伯筆《楓図》の展示は[5/13-6/1]です。将来を嘱望されながらも若くして死んでしまう久蔵、等伯と永徳の関係性などについては、安部 龍太郎著『等伯』をお読みください。

おそらく京博かで見たとは思うのですが、なかなか関西では見る事が叶わない 狩野永徳筆 国宝《唐獅子図屏風》[5/20-6/15]皇居三の丸尚蔵館蔵 は狙って出かけたい。

私にとって思いがけない収穫だった 岩佐又兵衛筆 国宝《洛中洛外図屏風(舟木本)》江戸時代 17世紀 東京国立博物館蔵[4/16-5/18] 何度かチャンスはあったはずなのに見逃してきた又兵衛の舟木本。永徳の上杉本とは、描かれた時代も違うし、背負った人生も違っているので、又兵衛の「舟木本」の方がもっとガヤガヤとがやついているような卑俗さもあるような。これだけでも1日見ていられるほどのみどころありまくり。京都市京セラ美術館で開催された「村上隆 もののけ きょうと」で展示された村上版「洛中洛外図」はこの舟木本を引用していました。

繰り返し観たい会いたいLOVEな国宝たち

本阿弥光悦作 国宝《舟橋蒔絵硯箱》江戸時代 17世紀 東京国立博物館蔵[4/16-5/18] 想定以上に盛り上がった被蓋、金地に鉛の橋を渡して、銀板をくり抜いて和歌をちらして詩情も纏う。四方から眺め尽くしたいですが。尾形光琳筆《燕子花図屏風》[6/3-6/15] を立体造形化したような 尾形光琳作 国宝《八橋蒔絵螺鈿硯箱》江戸時代 18世紀 東京国立博物館蔵[5/20-6/15] 光琳のデザインの宇宙の深淵を覗き込んでみたいです。

今は昔、雪降る京の静かな夜、ぬくもりも描き込んだ 与謝蕪村筆《夜色楼台図》[5/13-5/25] にもまた会いたかったですけれど、そこは今回諦めて、浦上玉堂筆 国宝《東雲篩雪図》江戸時代 19世紀 神奈川・川端康成記念会蔵[4/26-5/11] 漱石よりもはるかに鋭い独自の審美眼の川端康成、東山魁夷に描かせた「京洛四季」シリーズの「年暮る」は、蕪村の「夜色楼台図」によせて描いた様に思えてならない。19世紀の絵画で国宝に指定されているのはこの作品と渡辺崋山筆 国宝《鷹見泉石像》[4/26-5/11] だけだそうで、華山の生涯にも思いを馳せる作品です。

若冲筆 国宝《動植綵絵》江戸時代 18世紀 皇居三の丸尚蔵館蔵[4/26-5/18] 30幅中3幅を展示、奈良博では別の2幅が後期に展示されます。等身大に描かれた遊女たちの屏風、こんなに大きかったのかと見上げる 国宝《婦女遊楽図屏風(松浦屏風)》[6/3-6/18] 所蔵先の大和文華館で開催中の「特別展 没後50年 矢代幸雄と大和文華館―芸術を愛する喜び―」で5/8まで展示中です。彼女たちの着物の柄や持ち物にもご注目ください。


2. いにしえ文化きらきらし 縄文に始まる古代文化が紹介されています。

縄文のビーナス会いたかったなぁ。土偶は一堂に会する展覧会が観たい!

国宝展では、これまでに見てきた展覧会が思い出されます。春日大社の古神宝類は、2018年の『国宝 春日大社のすべて』@奈良国立博物館でも拝見しました。

出展作品の国宝のうち誰もが知っていて、人気NO.1は、国宝《金印「漢委如國王」》弥生時代 1世紀 福岡市博物館蔵[4/26-5/7] でしょうか。京博の国宝展の時も観ははずなのに、こーんなに小さかった?こんなにキンピカだった?と。こちらは最後の展示室に確かに”小さな巨人”として1点だけ独立ケースに展示されていました。ほかへ出張してなければ所蔵先の福岡市博物館で、また今年の夏休みの期間中に九州国立博物館で開催される『特別展「九州の国宝 きゅーはくのたから」』でも[7/23-8/3]に展示予定になっています。今回見逃した方はそちらもチェックしてみて下さい。


国宝《薬師寺東塔 水煙》奈良時代 8世紀 奈良・薬師寺[通期展示]

3.祈りのかたち 篤い信仰から生み出された美術、仏画や仏像、絵巻や地獄を描いた草紙など各時代を代表する名品が展示されています。

国宝《薬師寺東塔 水煙》唯一のフォトスポットです。高い塔の一番上にあった「水煙」間近に見ると大きい!水煙の各面には三体の飛天が上へ下へと舞っています。

国宝《孔雀明王像》平安時代 12世紀 東京国立博物館蔵[4/26-5/18] 近代数寄者のお一人、原三溪が旧蔵の井上馨から一万円という当時破格の値段で入手しました。美しい色彩に精緻に細部まで施された截金に目を奪われる「超 国宝」展で言うところの美麗な仏画、平安後期を代表するとびっきりの名品です。

まさかと足が止まりました。国宝《四騎獅子狩文錦》中国・唐時代 7世紀 奈良・法隆寺蔵[4/26-5/25] 西アジアから伝わった異国の文様を織った中国唐時代の織物が、シルクロードの終着点にもたらされ、「伝世品」として守り伝えられて21世紀の今自分の目の前に展示されています。保存状態がよく錦の文様もとてもくっきりしています。

国宝《平家納経 観普賢経》33巻のうち1巻 平安時代 長寛2年(1164)広島・厳島神社蔵[4/26-5/18] 清盛が平家一門の現在と未来の繁栄を祈願して奉納した平家納経、出陳されるなら機会を逃したくない豪華絢爛な装飾経の代表格。

以下、奈良博にも同作品の別巻きなどが展示されます。

静岡・鉄舟禅寺蔵《法華経(久能寺経)提婆達多品第十二》が5/20から展示されますが、奈良博では個人蔵《法華経(久能寺経)薬草喩品・随喜功徳品》が展示されています。国宝《病草紙》9巻のうち5巻 平安時代 12世紀 京都国立博物館蔵[展示替えして通期] 奈良博では《病草紙》9巻のうちのこり4巻を前期に展示しています。国宝《信貴山延期絵巻のうち〈飛倉巻〉》3巻のうち1巻 平安時代 12世紀 奈良・朝護孫子寺蔵[4/26-5/18] 奈良博では、《信貴山延期絵巻のうち〈尼公巻〉》3巻のうち1巻 を前期展示中です。国宝《一遍聖絵 巻十二》円伊筆 12巻のうち1巻 鎌倉時代 正安元年(1299) 神奈川県・清浄光寺(遊行寺)蔵[4/26-5/18巻き替えあり] 奈良博では《一遍聖絵 巻三》12巻のうち1巻 が後期展示されます。

私自身は、2021年春凝然国師没後700年 特別展 鑑真和上と戒律のあゆみでじっくり拝顔したしなぁと思っていたのですが、教科書に載ってる国宝で社会の教科書でも絶対に習う鑑真さん、みんな知ってるはずと思い出し追記します。《鑑真和上坐像》奈良時代 8世紀 奈良・唐招提寺[5/20-6/1] 睫や口回りには髭も描かれており、鑑真さんがそこに坐っておいでのような、「崇高とリアルを併せもつ高僧彫刻の最高傑作、我が国に残る肖像彫刻の、最古にして最高の至宝」と解説。鑑真さんこそが異文化交流の代表的存在でもあった!本展を見逃した方は、唐招提寺で御影堂特別公開(6月5日~7日)があるそうです。


4.優雅なる日本の書 平安時代に隆盛した「和様」の書や流麗な仮名作品など日本独自の書の名品が展示されています。

奈良博では主に僧の墨蹟や写経の書が展示されていますが、本展では和様を完成させた小野道風、藤原佐理、藤原行成の「平安の三蹟」と流麗なかなの美の最高峰ともいわれる平安仮名の代表例である《高野切 三種》が展示されます。

 

5.和と漢 日本の中世には、伝統的な「やまと絵」、禅宗とともに中国から伝えられた水墨画、唐物として珍重された中国絵画、やまと絵肖像画などこの時代の和と漢の書画による多様性を紹介しています。唐物賞玩と東山御物として近代まで珍重され続けた品々。男装の麗人を描いた印象的な 伝 銭選筆 国宝《宮女図》[5/20-6/15] 川崎造船所創業者川崎正蔵や大原孫三郎の旧蔵品で、東山御物です。最初に出会った時からミステリアスな麗人です。国宝《紅白芙蓉図》[4/26-5/18] 東京国立博物館蔵 と共に中国 南宋の李迪筆の国宝《雪中帰牧図》[6/3-6/15] 益田鈍翁旧蔵品です。所蔵先の大和文華館で5月25日まで展示されます。

国宝《喪乱帖》(原蹟)王羲之筆 中国・唐時代摸 7世紀 皇居三の丸尚蔵館蔵[4/26-5/18] 東晋の書聖、王羲之の書簡を基に、唐代に双鉤塡墨(そうこうてんぼく)という方法で写し取られた模本で、最初の8行62字を「喪乱帖」と呼ばれています。日本の肖像画史上、不朽の最高傑作と解説される「神護寺三像」は、[6/3-6/15]に揃って展示されます。


6.サムライ・アート 刀剣と甲冑を展示。

武器であり権力の象徴である刀剣が、神への捧げものともなり、造形美として鑑賞され日本独自の世界観であり、甲冑はある意味において総合芸術です。ジャンルとして刀剣には国宝数が多い!

 

Ⅱおおさかゆかりの国宝-大阪の歴史と文化

本展で一番楽しみにしていた展示です。寺社や文化財となると大阪はスルーしがちでした。しかし、大阪は古代より大陸との交易の要衝の地で、経済・文化が栄え、大阪の社寺には多くの国宝が所蔵されてきました。藤田傳三郎をはじめ関西の多くの実業家たちも、海外への文化財の流出を憂い、私財を投じて文化財を蒐集して守ってきました。藤田美術館、和泉市久保惣記念美術館、正木美術館、逸翁美術館など個性豊かな美術館として継承されています。大坂にゆかりの深い国宝を紹介しています。

国宝《七星剣》飛鳥時代 7世紀 大阪・四天王寺蔵[通期展示] 表裏前面に北斗七星などの星や雲が象嵌されています。聖徳太子との繋がりも深い四天王寺さんに伝来した神秘的な刀剣です。

国宝《扇面法華経冊子 法華経巻一・法華経巻六》平安時代 12世紀 大阪・四天王寺蔵[通期展示 展示替えあり] 写経と装飾の限りを尽くして功徳を積む装飾経です。

国宝《日月四季山水図屏風》室町時代 15~16世紀 大阪・金剛寺蔵[5/20-6/15] 不思議な世界に迷い込んだような屏風、アニミズムを感じてしまうのは私だけでしょうか。狙って出かけたい作品NO.1です。


美術館2階の正面から撮影して、人を消しゴムマジックで消してみました。

展覧会タイトル「日本国宝展」に導かれて関西の国宝祭まずは本展から観に行かれた方も多いようです。初めて目にした「金印」は子どもたちや学生たちにどううつったでしょう。ここで出会った「国宝」をきっかけとして、それぞれのジャンルの作品に興味を持ち、今後美術館や博物館や所蔵先の寺社へ出かけてみようとなると良いなぁと思っています。美術品はその時代背景を反映しています。歴史は決して暗記科目でなく、自分たちの国を知り、未来を考えることだとも受けとめてほしいです。

特設コーナーで「文化財を守り伝える-文化庁の取り組み」も紹介しています。

文化財は、その時代の人々が次の世代に残したいという意思がないと残っていきません。自然災害も多く、政権の交代や、戦争の災禍などを生きのびて「文化財」として今わたくしたちの目の前にあることに思いを馳せる三館の展覧会です。

経年劣化していく文化財には定期的な修理が必要です。そのための修理の用具や原材料の調達や技術者の高齢化、後継者の育成、更に資金など問題は山積しています。紡ぐプロジェクトが関わっている展覧会はお高いなぁと思っていたのですが、展覧会の収益の一部が「紡ぐプロジェクト」の修理事業に充てられるそうで、今回初めて知りました。それに貢献できるなら。

昭和16年の「金属類回収令」以降、軍需物資の確保のための金属供出では、文化財である寺院の鐘や金属製の仏像も対象になりました。京都府では、慶長以前製作の、皇室関係、銘文や事績の著名なもの、鋳造家の代表作や最古のものなど全体の約2割以外はほとんど供出されました。多くの寺院の鐘は、出征兵士と同様に襷が掛けられて供出されていったと知り、もう涙が出ました。戦下で疎開して残った文化財もありますが、多くは焼失してしまいました。

春の関西は、「国宝祭」状態ですが、その一方で3つの展覧会は文化財を守り伝えていくことをも私たちに伝えています。かなりの混み様のようで行けるなら二巡目は、三館の作品リストを吟味して、観たい作品をピンポイントで押さえて出かけていきたいと思っています。

 

特設ミュージアムショップで、何処も癒し系のもふもふが人気でしょうか。




  • 会期:2025年4月26日(土)~2025年6月15日(日)

①4月26日~5月11日

②5月13日~5月18日

③5月20日~5月25日

④5月27日~6月1日

⑤6月 3日~6月8日

⑥6月10日~6月15 ※会期中、一部作品の展示替えを行います 作品リスト⇒

  • 会場:大阪市立美術館 
  • 休館日:月曜日 ※ただし、4月28日、5月5日は開館
  • 開館時間:午前9時30分~午後5時 ※土曜日・5月4日・5日・6日は午後7時まで ※入館は閉館の30分前まで
  • 観覧料:一般 2,400円(2,200円)/高大生 1,700円(1,500円)/小中生 500円(300円) ※( )団体料金 ※未就学児は予約不要 ※障がい者手帳をお持ちの方(介護者1名を含む)は無料(要証明) 土日祝は日時指定予約優先制です。※平日の予約は不要です。 詳しくは⇒
  • TEL:06-4301-7285 (大阪市総合コールセンター)
  • URL:https://tsumugu.yomiuri.co.jp/kokuhou2025/

参考:大阪初の「国宝展」!大阪市立美術館の内藤館長が語る日本国宝展の魅力


プロフィール

morinousagisan
阪神間在住。京都奈良辺りまで平日に出かけています。美術はまるで素人ですが、美術館へ出かけるのが大好きです。出かけた展覧会を出来るだけレポートしたいと思っております。
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