大阪市立美術館が3月1日にリニューアルオープンしましたヽ(^o^)丿
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- by morinousagisan

大阪市立美術館は、昭和11(1936)に開館した日本で三番目に古い公立美術館です。(1926年に東京都美術館(当初の名称は「東京府美術館」)、1933年に京都市美術館(当初の名称は「大礼記念京都美術館」)が開館しました)開館後初めての大規模改修を終えて3月1日にリニューアルオープンしました。リニューアルオープン記念特別展として、「What’s New! 大阪市立美術館 名品珍品大公開!!」が開催されています。(2025 3/1-3/30)
大阪のコレクターから寄贈や譲渡された貴重な品々をコレクションの基礎として、所蔵件数は約8700件にも及びます。本展は、絵画、書蹟、彫刻、漆工、金工、陶磁など各分野から名品、珍品と学芸員たちに選ばれた品々約250件が展示されています。
※主なコレクションについては⇒◆
※作品リスト⇒◆
本展は、全てが館蔵品で全作品撮影は可能です。が、一部作品は、SNSなどでアップすることは禁じられていますのでご注意下さい。
本ブログのメインヴィジュアルとなっている《青銅鍍金銀 羽人(うじん)》が、この度大阪市立美術館の広報大使に就任し、2階第2展示会場最後に「広報大使就任記念」のコーナーが設けられて展示され、独立ケースの後ろの壁面にはその履歴も紹介されています。決して大きな作品ではなく、中国の仙人の一種でとがった耳に特徴があり、類品は世界に3点しかない稀に見る、まさに「珍品」「名品」です。今後様々なメディアにも変幻した姿で登場し、大阪市立美術館の広報に邁進していくそうです。
住友家の本邸跡に建つ美術館の建物は、登録有形文化財で、外観はそのままに、内装は出来る限りオリジナルに近い姿に改修されました。「ひらかれたミュージアム」として、無料ゾーンを設けて、吹き抜けの中央ホールの両サイドが展示室となっています。創建当時の自然光を取り入れた建築は光と影が織り成し、建築好きにも見どころがあちこちにあります。一方展示や収蔵環境は最新技術が取り入れられました。
本展は、1階に第1,2会場、2階に第3、4会場が左右にあり、それぞれの入口でチケットを提示します。(※作品リストの最後に展示会場図があります)掲載画像件数が限られていますので、特に私自身が惹かれた作品を中心にご紹介したいと思います。
荷物を預けて、右手に目をやると扉の奥の奥にある仏頭が輝いており、そこにスルスル導かれるように第2会場に足を踏み入れました。

「中国の仏像」旧関西信託(現在三菱UFJ信託銀行となっている東洋信託銀行の前身)の社長などを務めた関西の実業家、山口謙四郎(1886-1957)氏の収集品である山口コレクションの1つです。この部屋の先は「中国の仏像のお顔」として仏像頭部が展示されています。山口謙四郎は、中国の石像彫刻に造詣が深く、展示されている仏像を1つ1つ巡っているとお顔がとってもいい、心が和む、大阪船場生まれのコレクターのお好みだったのでしょう。
「展示品を美しく見せる」の言葉通り、1点1点作品の魅力を引出した展示空間にどっぷり浸りました。大阪市立美術館は、扉を次々と開けて先の展示室へ進んでいくような構造となっており、先の扉の間から見える次の展示作品がとても魅力的です。展示室と展示室の間にある小部屋の高い窓からは天王寺の風景も垣間見えて息抜きとなりました。

「漆工」祝杯を挙げよう~漆工分野コレクションの中核をなす「ガザールコレクション」は、神戸に住んでいた実業家U.A.カザール(Ugo Alfonso Casal 1888-1964)氏が、明治末から昭和中ごろにかけて蒐集した、およそ4000件の日本、中国および東南アジアの漆工芸です。本展ではリニューアル記念として「祝杯」をテーマに飲食器具が展示されています。目が喜ぶ“超眼福”空間です。「珍品」と紹介される「アワビ貝を加工して蓑亀を描いた」小さいながら存在感抜群の奇杯《蓑亀蒔絵杯》、アワビは不老不死、蓑亀は不老長寿と「吞むほどに長寿になる」。「行厨」とあるのはピクニックセット、これをもって桜の花の下に緋毛氈をしいて花見すれば・・・と妄想が暴走します。それでも画像に選んだ《宝尽蒔絵宝珠形杯台・杯》あまりにも愛らしい。もう1点、《吉祥文蒔絵杯》杯にはそれぞれ「亀」「福」「禄」「寿」がいっぱい描かれて「幸せは、一つひとつ積み重ねてゆく」願いが込められて多幸感のお裾分け。
「竣工記念の石刻」「石刻」が並ぶ展示室は私の場合大阪市立美術館以外ではそうない。リニューアルオープンを記念して、建築工事の竣工を記念した石刻が展示されています。大阪出身で師古斎(しこさい)の斎号(書斎の号)をもつ岡村蓉二郎(1910-1991)が蒐集した中国金石拓本400件の「師古斎コレクション」が書蹟(拓本)の収蔵品の中核をなしています。

「近世の風俗画」洛中洛外図屏風や扇屋の店先で扇を作る《扇屋軒先図屏風》や遊びに興ずる《邸内遊楽図屏風》、大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」にも登場した礒田湖龍斎の小粋な浮世絵や版元が「つたじゅう」かもの写楽の役者絵もあったのですが、勝部如春斎筆《小袖屏風虫干図巻》揺れる御簾に心地よい風を感じる。「誰が袖図屏風」や「留守模様」にも通ずるように思う絵巻、画中画も気になる絵巻です。勝部如春斎は西宮市大谷記念美術館で展覧会を観た記憶ありでした⇒◆
《小西家伝来 尾形光琳関係資料のうち「円型図案集」》線描で柔らかに描かれた琳派の図案、京和菓子もここから学んだのでしょう。
「金工品にみる表情」小さき金工品のユニークな表現の展示室を経て、今や「知る人ぞ知る」となりし「知られざる考古コレクション」大阪市立美術館はかつて考古隊を組織して大阪府下の遺跡の発掘調査等を行っていました。真贋論争は未だ決着はついていない《黒陶 舞人》小さな舞人たちは遠い遠い昔からここにやって来たのか。

「仏教絵画と経典」大阪で衆議院議員・弁護士であった田万清臣(1892-1972)氏が蒐集した「田万コレクション」には、仏教美術の貴重な作品が多い。《荼吉尼天曼荼羅図》蛇姿の宇賀神を載せた弁財天と象頭の歓喜天が融合した姿の「荼吉尼天(だきにてん)」3つの顔と12本の手を持ち狐に載っています。周囲にも種々様々な神さまが描かれ、一体どんな信仰だったのでしょう。本作は、壁面ケースの背面の壁が可動式となっており、ガラス近くまでせり出して展示され、妖しくも色彩美しい神々を近くでじっくりご覧ください。2階会場へ

女性が立っている左に展示されている大きな作品、文人画家 謝時臣(款)の《巫峡雲濤図》は、本紙だけでも約3.5mあるそうです。今回の改修で高さ5mの特大展示ケース(當麻曼荼羅が二幅並べて展示出来る展示ケースです)が設置されて、初めて展示が可能となりました。電動の昇降するバトンに吊り下げて展示されました。照明も手元のタブレットを操作して作品それぞれに適切な照明に調整する事が出来る優れモノです。※作品の大きさが分かる様に撮影許可を得て作品の前に立って頂きました。

「おもてなしのうつわ」鍋島、伊万里に乾山とどれも見せ方も美しい。今回の改修で高度な耐震性能を満たす耐震補強も行われました。永楽保全の《染付 蜂龍文高足杯》昨年の神戸アートマルシェで同じようなデザインの彩色の九谷焼を見ました。本家はここにあったのかもと思いました。
「近世の動物画」では、お得意の猿を描いた森狙仙、沈南蘋風に描いたと説明される精密な花鳥画の岸駒、夭折した原在正が描いた気持ちよさげに眠る猫などなど。
「住友コレクション」大阪の文化とは切っても切れない住友家の支援。昭和18年(1943) 住友家の支援を受けて開催された「関西邦画展覧会」、出品された関西を代表する日本画壇20人の新作はそのまま「住友コレクション」として収蔵されました。「『富本健吉と人間国宝』暮らしを彩る近現代のうつわ」を経て、「大阪の洋画」開館以来、主要な美術団体展の会場となり、大阪や関西ゆかりの作家やその遺族から作品を寄贈された多くの洋画は、大阪市立美術館ならではのコレクションとなっています。

カフェもオープンしました。1936年建築当初の高い天井が現れ窓から外光が射しこみます。

カフェ横から慶沢園を臨むテラスに出る事が出来ます。住友家第15代吉左衛門(春翠)により、茶臼山本邸の庭園として第7代小川治兵衛(植治)が施工した林泉回遊式庭園です。こちらも整備改修を終えて3月1日にリニューアルオープンしました。借景が超高層のあべのハルカスです。この本邸にお住まいになった期間は決して長くはなかったが、お披露目には茶会が連日披かれて、近代数寄者たちが集まりました。
慶沢園について詳しくは⇒◆

【開催概要】
- 会期:2025年3月1日(土)~2025年3月30日(日) ※会期中展示替え有り
- 会場:大阪市立美術館 https://www.osaka-art-museum.jp/
- 開館時間:9:30~17:00 (最終入場時間 16:30)
- 休館日 月曜日
- 観覧料 一般 1,800円(団体 1,600円)/高大生 1,200円(団体 1,000円)中学生以下、障がい者手帳などをお持ちの方(介護者1名を含む)は無料(要証明)※団体は20名以上
- 展覧会URL:https://www.osaka-art-museum.jp/sp_evt/whats_new
【参考】Youtube『【あの住友家が…】大阪市立美術館で大発見⁉開館90年を前にリニューアル』⇒◆