今年も行ってきました 神戸アートマルシェ@神戸メリケンパークオリエンタルホテル
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- by morinousagisan
神戸アートマルシェ@神戸メリケンパークオリエンタルホテルが5月12日~14日に開催されました。気持ちのいい季節に、メリケンパークにあるホテルの13階で開催されるアートフェア、前に海が広がり、後ろに新緑燃え立つ六甲山が迫る神戸らしい絶好のロケーション、近くに住んでいてもこの景色に触れたくて毎年楽しみにしています。私にとってはちょっと敷居の高い画廊さんも、ここでなら混んでいなければギャラリストさんや作家さん本人からじっくりお話も伺える。それでも何故か雨が多かった神戸アートマルシェ、初日は晴れ渡り、お部屋の作品を観ながらもバルコニーの向こうが気になる。ギャラリストさんも作家さんも、昨夜の夜景もとっても綺麗でしたぁ~との感想に、『そうでしょう、そうでしょう』
参加は、32画廊✙プロの作家を目指す公募展企画「Artist meets Art Fair」新人作家さんたちいい出会いはあったでしょうか。✙ 神戸・灘の日本酒が海を見ながら呑める「Art Fair meets Sake」お天気に恵まれた初日は多くの方がバルコニーに出て素敵なグラスで楽しんでおいででした。
7月末にアート大坂(こちらのアートフェアはかなり大がかりです。夏は極端に弱くオコモリしたい私ですが、北加賀屋の大掛かりな展示を今年は見たい!とも)も控えていることもあってか、かつて参加だった京阪神の有名どころの画廊さんや、以前参加されていた金沢や愛知の画廊さんや韓国や台湾からの参加もなかったです。変なというか、キワモノのようなというか二度見してしまうような面白い作品を出展されていた東京の画廊の参加も今回はなかったのは残念でした。更に希望を言えば、「神戸紅茶」のお部屋や丹波焼のお部屋がバッサリなくなったのもとても残念です。ぐるりと回ってみて、女性とお華を描いた作品が多かった印象が残りました。画題としてか、売れる画題がそういう傾向にあるのでしょうかしらとも思ったりしました。
そんな中で素敵な作家さんお二人にお会いしました。もう一度作品も観たいし、作家さんにもお目にかかりたく思い最終日にも出かけた次第です。
テレビでたまたま見た藤の木の蔓の繊維から糸を作って織機で織って布にする番組が、私の中に残っていたのですね。「あっ!これがあの!」と足が止まり作家の齊藤麻弓さんにお話を伺いました。
斎藤さんから頂いた「藤織り工房’ののの’」の冊子とHPの説明によれば、
かつては日本各地で藤布は作られていたが、木綿が普及すると次第に作られなくなり、現在その制作技術が唯一途絶えることなく受け継がれているのが京都府宮津市上世屋だそうです。丹後の宮津の小さな集落に斎藤さんは居を移して、制作されています。伝承技術は受け継ぐ人がいないと廃れてしまいます。そういう点からもこの技術を受け継ぎ次の世代に残そうとされていることにもかなりグッときました。
織り糸を作る作業、糸を繋ぐ作業を見せてくださいました。働く、動く指、手が美しく、見とれてしまいました。作りたい太さの糸を作った上で、更に糸車で撚りを掛けて、やっと織機に掛ける糸が出来上がるのです。山に自生する藤の蔓を伐ってからここまで気の遠くなるような工程です。(工程はHPにも紹介されていますので是非ご覧ください)斎藤さんもここまでが大変で後は織機に掛けて織るだけですからと仰ってました。織であってもそんな簡単なものではないとは思うのですが、トントントンとリズミカルな音が聴こえてきそうです。豪雪で冬も厳しい土地で、女性たちの家での仕事として受け継がれてきました。
斎藤さんのHPの経歴を拝見すると
- 結城紬の織り子を4年間勤め、地機での製織を習得し
- 愛媛県野村シルク博物館で繭からの絹糸作り、天然染料による染色、高機による製織など、絹織物の一連の制作工程を2年かけて学び
- 龍村美術織物でジャガード織機による紋織の手織り職人として6年間勤務
この間に丹後藤織りと出会い、保存会主催の藤織り講習会を受講して保存会員となり
- 5年前に上世屋に移住し、「藤織り工房 ’ののの’」 としての活動を始める。
かの龍村さんで6年も手織り職人されていたんだ!どこへ行っても極めている人だと改めて驚き、再度会いたくなり最終日に「どうしてももう一度斎藤さんに会いたくて来ました!」
部屋から動物が覗いているし、部屋に入ると革張り(布張りもあるが)の動物園状態。しかも可愛い!GALLERY龍屋の北奥美帆さんの動物スツールたちです。こんな作品見たことなかったかも!触ってみると手触りも良い!「座ってみてください」と声がかかる。かなりしっかりした作りです。大柄の成人男性が座ってもビクともしない、100kgぐらいは余裕で大丈夫そう。ヒツジや牛、馬、豚がいて、それぞれがその動物に合った皮や布を使い、脚や顔、耳などの木工部分の木も違っています。その上使われているビスの色も違っている。ひょっとしてこれを1から全部一人で制作しているのか。岐阜県高山在住、名刺には「椅子張り・木製品制作」とある北奥美帆さんです。
北奥さんのHPでその経歴を見てみると、
- 東藝デザイン学科を卒業。
- 岐阜の飛騨高山は、家具作りが盛んな所だそうで、その地の家具メーカーに就職、働きながら制作を続け
- 2級家具製作技能士(手加工、いす張り)を取得し
- フリーランスとして椅子張り・ソファクッション制作の仕事と並行して作品を制作、クラフト展等で多数受賞
- 1級家具製作技能士(いす張り)取得・・・
北奥さんに「家具製作技能士」も取得なさってるんですねとお尋ねしたところ、その試験はとても大変だったと話してくださった。家具を作るってかなりの力仕事と思うのですが、それを1から完成まで一人で制作されている訳ですから。改めて牛さんや豚さんや羊さんを眺めてみる。素材となる木もノミで削り、時には物凄く硬い木もある。道具の扱いや扱いやすい道具を捜したり、自分で道具を研いだり、傷も絶えないらしい。「展示会の時だけは手の絆創膏が取れて綺麗になります」とニコニコしながら話されていました。この動物スツールで動物園も作りたいかもと思ったり、赤ちゃんの誕生祝に買うと”一生もん”だ!と思ったり。壊れたり破けたりしても北奥さんが直してくださる。東京の方ではかなり展示会などに出展されているので、彼女の作品、製品をご覧になった、既にお使いの方もおいでになるかもしれないですね。動物スツールだけでなく、確かな技術をお持ちなので作品、製品は多種多様です。HPの”WORKS”もご参照ください。
★北奥美帆さんのHP⇒とらまめ
藤織り作家の斎藤さんも木製品制作の北奥さんも見た目は楚々として柔らかな感じの方ですが、強い意志を持ちやりたいことにはチャレンジングで、確かな技術を身につけて、それが作品にも表れていました。この二人の素敵な作家さんを知り、その作品に出合えたことは今回のアートフェアの一番の収穫でした。お二人の作品は、手仕事から出来上がる「用の美」
京都三条にある同時代ギャラリーさんの木の温もりが伝わる熊田悠夢さんの作品は、何年も前の神戸アートフェアで知って以来のファンで、同時代ギャラリーの個展にも伺いました。熊田さんも上記のお二人と似た雰囲気をお持ちの作家さんです。
悠遊舎ぎゃらりぃ SAPPOROの福西 毅さんのガラス作品。工程が一筋縄ではいかない、二度もやっかいな工程について説明を伺いました。
数ある華を画題にした作品の中で、近くによって寄って視た作品。
タンポポの綿毛の1本1本を独自のスクラッチアート技法で表現されています。
あべのハルカス近鉄本店11階アートギャラリーで個展を開催(5/24-5/30)時間の都合が付けば伺いたい。
笠井遥HP⇒https://haruka-kanata.jimdo.com/
版画作品の中でも、天渼画廊の坪内好子さんの金箔を貼った銅版画、不思議などこかの昔話かと思っていましたら、作家の坪内さんはチェコで学ばれ、そこでも認められておいでのようでした。
こちらもお話は伺えなかったですが、気になったのが、Gallery 螺さんで展示のあった会津木綿の「はらっぱ」さん。ベッドカバーとかもモダンで素敵と思いつつ、HPを拝見してお話も伺いたかったです。
Gallery 螺さん、昨年の拙ブログでは貴島さんのガラス作品を紹介させて頂き、今年になって船場ビルディングへも行ってみたいと伺いました。アートマルシェでは広い角部屋に日本画、染色、織、ガラス作品、陶芸、漆芸、写真等々種々多様な作家作品を展示しながらも纏まっており、個性豊かな各々の作品、作家に相通るものも感じる。そこにオーナーの眼がありそうです。
アートフェアをきっかけに、画廊さんや作家さんと繋がりが出来、ちょっと敷居が高いと感じていた画廊や個展にも足を運んではいかがでしょう。