ART BLOGS

アートブログ

具体の年のゆくえ

菅井汲(すがいくみ)という男性画家がいる。「すがいきゅう」という女性画家だと思っていた。吉原治良に師事していたということはほぼ具体である(具体ではない)。

川田画廊で菅井汲の展覧会があると知って行くことにした。

今日は3本立てで行く予定。

①川田画廊の菅井汲展。

②兵庫県立美術館のコレクション展再再訪

③喜多ギャラリーの堀尾貞治展。


いつもの仕事の始業時間くらいに家を出た。休日に何をやってるんだと思う。うとうとしそうになるのを、かみじょうちひろのドラムや佐々木亮介の声で叩き起こしながら移動した。

川田画廊には、開業時間の10時ちょうどに着いた。入っていいのかなとためらっていたら入口で作業していたオーナーさん(?)に促されたので中に入る。

中に入ると絵は飾ってあるが菅井汲っぽい絵はない。テーブルには「大沢昌助」のパンフレットが置かれている。会期は12月4日からとある。オーナーさんに、今日飾ったばかりだけどどうぞご覧になってくださいと言われる。オーナーさんが奥に引っ込まれた隙にスマホでスクショを確認すると菅井汲の展覧会は1週間前に終わっていた。ということは私は、次の展覧会「大沢昌助展」が始まる前におしかけてしまったわけである。


オーナーさんに菅井汲展の会期を勘違いしていたことを白状したが、とりあえず大沢昌助の絵を鑑賞させてもらう。知らない画家。ひととおり見せてもらって退散しようとしたら中もどうぞって言われて応接スペースみたいなところに飾ってある絵も見せてもらう。

そこに飾ってあった「みどりの影」という作品、緑色の瓶のようなものが中央に描かれていて、その外側に一回りの薄い緑色の影がある絵、その作品と額の調和がとてもよかったので、その感想を伝える。金色の額だが、虹のように別の色彩も浮かんでいる。絵の額って誰が決めてるんだろうとふと思って、額って飾られる人が決められるんですか?と伺ったら、そういう時もあります、この額はオークションで購入した時に既についていたものです、と教えてくださった。

調子に乗って、「無題」という作品(メイン画像の写真のやつ)、ピンクの地に黄色で線が引いてあるけれど、黄色の線の上にピンクの点々がついていて面白い、という話をした。私は線を引いた後にわざわざ点々を描いたのかと思ったけど、黄色の線はオイルパステルで引いてあるもので、地のアクリル絵の具が弾かれているようだ、とオーナーさんがおっしゃって、ピンクの絵の具が乾く前にオイルパステルで線を描いたんじゃないか、という結論になった。


これは兵庫県立美術館のコレクション展で撮った小磯良平「踊り子群像」

更に調子に乗って、この際だからずっと気になってたことを聞こうと思い、絵の中には表面に絵の具が盛り上がっているものもあるけれど、絵をガラスで覆ったらその絵の具が潰れてしまわないか?と質問した。すると、額の絵を囲う枠の部分は絵より高さがあってガラス面と絵の表面の間に距離を取ることができると、親切に教えてくださった。


大沢昌助についても色々教えてもらえた。若い頃は写実的な絵を描いていたけど、抽象を描くようになったこと。お父さんが建築家で、絵に建物的な組み立てが見られるのはその影響だったということ。長生きしたこと。賞を受賞したとしてもそれを断っていたこと。

会期を間違えたにもかかわらず、とても歓待してもらった。目は完全に覚めた。


菊畑茂久馬「天動説 二」

オーナーさんにお礼を言って、摂津本山駅まで歩き、神戸線で灘駅へ。

兵庫県立美術館のコレクション展3回目。

今回は、徳島県立近代美術館で菊畑茂久馬展が開かれると知って、「天動説 二」がまた見たくなってコレクション展に再再訪した。菊畑茂久馬、「きくはたもくま」と読む。「きくはたしぐま」だと思ってた。この人は具体とは関係がない。


菊畑茂久馬「天動説 二」。人間は、どんなものでも大きくて見上げるものなら自然と敬虔な気持ちを抱くのかなと思う。

斜め下から見上げるように撮ったほうが迫力が出そうだが、やっぱり三角形がキレイに写るように正面から撮りたい。そして三角形は、古来人間が信仰してきた山の形でもあるのだ。


菅井汲「空の怒り」

菅井汲「空の怒り」。これを見て川田画廊の菅井汲展に行こうと思った。


最初は右と左がもともとくっついていたのを切断して真ん中を割り込ませたのかなと思ったが、よく見ると右と左はつながっていない。


菅井汲「空の怒り」真ん中

真ん中の部分は白い絵の具が波のしぶきのように見える。ということはやっぱりノアの方舟を連想する。


菅井汲「空の怒り」左

左側は線が真っ直ぐに引かれ、黒と白の純度も高い。


菅井汲「空の怒り」右

右側は線が歪んでいて、白に黒が混じっている。人間の秩序が神の洪水によって破壊されてしまったことを表しているのかなと思う。


Rokumei saryu 猪鹿ボロネーゼ。うまい。

Rokumei saryuでごはん。白のフーディーを着ていたにも関わらずボロネーゼを頼んでしまい、案の定目立つところ2箇所にソースの飛沫が飛んだ上、タルトタタンも裾にこぼした。


岩屋駅から3駅乗り継いで近鉄橿原線で平端駅へ移動する。かしはらせん、一生読めなさそう。民家と民家に挟まれた90センチくらいの、余所者が歩いていいのか、という道を通って喜多ギャラリーへ。

出かける前日に、喜多ギャラリーで具体の堀尾貞治展をやっていると知り、急遽お出かけプランに加えた。


これは兵庫県立美術館コレクション展で撮った、菊畑茂久馬「奴隷系図――円鏡による」

広告を継ぎ合わせた上に黒の絵の具で全面に「、」を描いた作品、布を集めた作品。ガラスにカラフルな絵の具で描いた作品はきれいだった。上の菊畑茂久馬の作品みたいに絵の具にシワが寄っていて、それが血管や葉脈のように見えた。

ギャラリーではお茶とお菓子を勧めてもらった上、具体の本をいろいろ読ませてもらった。けっこう具体は本が出ていた。具体の中では白髪一雄が一番海外で知られていて、オークションで作品に10億の価値がついたと教えてもらった。

どうしてこの展覧会に来たのか聞かれて、具体に興味があって⋯⋯と、兵庫県立美術館、芦屋の具体展、白髪一雄記念室⋯⋯といままで行った展覧会を挙げながら、だいぶいろいろ回ったな、としみじみした。


兵庫県立美術館のコレクション展で下村良之介見れたのが不意打ちでかなりうれしかった。「厘」、粘土が貼り付けてある。

平端駅に帰って大和西大寺駅まで戻って帰った。それまで地上を走っていたのに、竹田駅で向かいの電車に乗り換えたら地下鉄になって面白かった。

川田画廊で扱っているアーティスト、矢原繁長氏のエッセイ集をいただいたので電車の中で読んだけどかなり面白かった。一番最初にめくったページに、AIには失敗ができない、失敗することが人間らしさだ、とあって沁みた。

フーディーは染み抜きを忘れて洗ってしまい洗い直した。いくらなんでも失敗しすぎである。


プロフィール

くつしたあつめ
通報する

この記事やコメントに問題点がありましたら、お知らせください。

こちらの機能は、会員登録(無料)後にご利用いただけます。

会員登録はこちらから
SIGN UP
ログインはこちらから
SIGN IN

※あなたの美術館鑑賞をアートアジェンダがサポートいたします。
詳しくはこちら

CLOSE

こちらの機能は、会員登録(無料)後にご利用いただけます。

会員登録はこちらから
SIGN UP
ログインはこちらから
SIGN IN

ログインせずに「いいね(THANKS!)」する場合は こちら

CLOSE
CLOSE
いいね!をクリックしたユーザー 一覧
CLOSE