単純接触効果の顔

千總ギャラリー「絵と着物 加藤泉×千總」に行ってきた。
加藤泉を初めて見たのはGEZANのアルバムジャケット。
国立国際美術館「Undo,Redo わたしは解く、やり直す」で作品を見つけた時には、すぐにGEZANの人だとわかった。ぎょろっとした目、鼻と繋がった口。一度見たら忘れられない顔だ。
そうやって会う度に何となく気になってきて、ネットで調べてみたり、秋田県立美術館に作品が出品されると知ると、行こうかな、でも秋田か、と思ったりしていたその矢先のことだった。
京都dddギャラリーから烏丸御池駅へ歩いていたところ、大きな大垣書店があって、そこにポスターが飾ってあった。加藤泉と着物のコラボはネットニュースで見ていたが、まさか京都のことだとは思わなかった。しかも調べたらすぐ傍だったので速攻で向かった。

私が千總ギャラリーに突入したのは17時で、閉館時間は17時だった。が、スタッフさんのご厚意で少しだけ見せてもらえた。閉館時間に飛び込んできた変な人間に対して懐が深すぎる。さすがに入り浸るほど社会性に欠けていないので、ザッと見て回りお礼を言って速やかに退館しようとしたところ、チラシと京都国立近代美術館のきもののヒミツ展(もちろん行くつもりだった)の案内をいただいた。ホスピタリティの塊。

というわけで再訪。
着物を着た時に、どこにどの絵が出るのか、というのが折り紙みたいで面白かった。袂に顔をでかでかと提げているのはラスボスみたいである。あるいは、顔に緑のツタのようなものが繋がってぶら下がっているのが、子どもの頃に読んだ西遊記に出てくる人参果という植物を思い出させた。
この着物を人が実際に着ている写真も飾ってあった(これは撮影不可)。それを見ると、着ている人の顔、袂の顔、顔、が並んでいるようになって、マネキンとはまた違った印象が生まれていた。

3回目。
今回はちゃんと予習して行った。友禅というのは、着物の染色技法のことを指す。てっきりある地域で作られる着物を全部友禅というのかと思っていた。加藤泉の着物には、様々な染めの技法が使われていた。特に生地に直接色を挿していく描き友禅が、絵画・アートと相性がいいんだと思った。また、最初は大きく描かれた顔にばかり目が行っていたが、3回目はその他の染めの部分も見れた。絞り染めで月にクレーターの模様をつけているのが面白かったし、ゼンマイのグラデーションや人型が乗っている山の暈しが本当に美しかった。
入り口に映像で制作過程が流れていた。京友禅の特徴は完全分業制なことで、たくさんの職人さんが出てきて色々な作業をしていたのが面白かった。が、ビジュアルに対する記憶力と空間認識能力が低すぎて、その作業がどこの染めに当たるのか映像を5、6回観たのによくわからなかった。と思ったら、どの模様にどんな技法が使われているのか説明してあるリーフレットが置いてあった。いいものをもらった。

衣桁に掛けられた着物は、正面から背中の模様が透けて見えた。それによって、ミミズクがたくさん飛んでいるように見えたり、ゼンマイの方は絞りの模様が蛍みたいに見えたりして、ハッとする美しさだった。衣服・着物は人間が着て完成するはずであるが、これは人が着ていたら見られなかった光景だった。
